SP物語  ターゲットはどこだ!(ドッカン スピンオフ)

SP物語久々です。

このお話は『ドッカン 29』の番外編となります。

ち**様のリクエストにお答えしてUP♪

*

「14時までに連れ戻してきてください」

腕時計を見る銀縁眼鏡のその奥がきらりと光った気がした。

有無を言わせぬ威圧感は道明寺ホールディングス代表 道明寺司その人に匹敵するものがあると思う。

有体に言えばこの人が道明寺代表を支えてる影のボス的存在だ。

何かあったらこの人を頼れ。

西田室長を頼るにはまだ俺は小物だ。

頼るなら人のいいつくし様が一番手っ取り早い。

「たぶん、代表はつくし様と一緒です」

落ちついた低めの声。

暗闇に差し込む一筋の光り。

それはとてつもなく明るい希望を俺たちに持たせる。

「一平、何とかなるぞ」

つくし様を見つければ!

相葉先輩の瞳が俺にそう訴える。

「今日はつくし様は裁判所まで外出されてるはずでしょうから・・・」

「この時間だと食事でも一緒にって経過かもしれませんね」

代表がランチをするようなレストラン・・・。

それじゃ都内まで範囲が広がる可能性がある。

開けた明るい未来が暗闇に変わりそうだ。

「業務時間の最中ですからつくし様は呑気に代表と時間をかけて食事をしてるとは思いません。近場を探せばいいと思います」

近場って・・・

半径何キロですかぁぁぁぁぁぁ。

叫びたくなった。

「ファーストフードなど安くて早く食事がとれるところがねらい目でしょう」

バーガー、ラーメン、牛丼屋、それに御昼のランチを扱ってる店。

代表が座って安めの店で食事してる姿・・・。

想像できない。

西田室長大丈夫ですか?

ほぼ半信半疑で道明寺フォールディングス本社を後にした。

このビルのTOPだぞ。

「まさかな・・・」

高層ビルを眺めながら本音が漏れた。

後10分も歩けば裁判所が見える。

それまで手当たり次第の店を先輩と手分けして覗く。

「いたか?」

「いません」

何度となく繰り返された会話。

珍しく西田室長の読みも外れたって思い出した。

このままじゃ14時までに連れ戻すどころか見つけ出すことも無理だとあきらめかけている。

「俺、夢見てんじゃないだろうか・・・」

「頬をつねってくれ」

先輩と顔を合わせて息を整えてる俺たちの前で一人の男がもう一人の頬をつねるのが見えた。

「イテッ!夢じゃないよな」

「店に入ってきた時に俺は二度見した」

「ドッキリとかじゃねェよな?」

「俺たちを驚かせてなんになるんだ」

「セレブでも立ち食いソバ食べるんだな」

「親近感わかねェ?」

「道明寺代表だろ」

「すいません、その話詳しく聞かせてください」

二人の会話に相葉先輩が割っていり込んだ。

先輩焦り過ぎですって。

鼻先まで近付きすぎの先輩の顔に相手が完全にビビってる。

「その先の立ち食いそばで道明寺司が・・・よく似た他人・・・かも・・・」

「ありがとう」

そのまま先輩はマッハの勢いで教えてもらった立ち食いソバ屋を目指す。

ソバ屋の看板の下でハーと息を整えるように大きく息を吐いた。

緊張した面持でソバ屋の前に立つのはきっと俺たちぐらいだろう。

うっ!

急に立ち止まった相葉先輩の背中が目の前に迫った。

「先輩、こんなところで急に立ち止まらないでください」

そう言った俺も目の前で目撃した状況を脳が把握できずにいる。

立ったままドンぶりを啜る後ろ姿もどこか品がある。

カメラが回ってないか?

テレビドラマの撮影でもしてるような華がある。

そんな俺と目があった隣の女性はカタッと箸をおいて俺たちを凝視。

頬をつねってもらっていた、さっきのサラリーマンの気持ちが俺もよくわかる。

「探しました」

声をかけながら二人に近付く相葉先輩の後に俺も続く。

なんでわかった!的な驚きの表情がまんまにつくし様の顔に出た。

感情がすぐさま表情に出るのは人妻になった今も変わらない。

可愛いんだよな・・・。

あぶねッ。

この気持ちを声にだしたら代表を連れ帰るどころの話じゃなくなる。

「つくし様がこちらの裁判所に来てることは分かってましたから」

彼女の疑問に答えるように相葉先輩がつぶやいた。

「お前ら、昼まだだよな?」

「何でも食え」

機嫌のいい声で代表が財布から千円札を取り出して俺の胸におさえつけるように差し出す。

千円札を差し出す代表・・・

意外な取り合わせ。

その長い指先で触るなら千円札より一万円札。

一万円札よりブラックカード

カードよりダイヤモンドの宝石の方がよく似合う。

その指先がまた箸を握ってそばをすくった。

おごってもらえるなら出来れば俺たちが滅多に食べられないものをお願いしたい。

何でも食えって言われてもテンションが上がるより戸惑いの方が強い。

「その間に、いなくなるとか考えてないですよね?」

先輩は俺より現実的な思考を働かせていた。

別なことに気を取らせて逃げられたパターンは1度や2度じゃない。

「お前らがいるとデートもできねェ」

お二人のときは注意は増大。

「そんな、せこい事しねェよ」

ガタッとカウンターが代表が置いたどんぶりで音をたてる。

その冷やかな視線は心臓に悪い。

いまだに慣れない。

これなら西田室長の方が怖くない。

「頂きます!!」

こうなれば代表の機嫌が悪くならないうちに代表の指示に従うのが基本。

食べたソバは口の中になんの味も残さないまま喉元を通り過ぎる。

「あっーーー」

つくし様の声にビクリと耳だけを動かす。

見て大丈夫か?

相葉先輩の視線は未だに麺の残りも少ないどんぶりの中を見つめてる。

「いきなり、なんだよ」

「道明寺を探してッてことは西田さんだよね?」

「やっぱり黙って出てきたの?」

「お前んとこに行くって、言って来たぞ」

行くって言っても限度があるでしょうッ!

代表に面と向かってそれを言う度胸はない。

「すぐ帰りますから、二人はゆっくりと、おそば食べててください」

そう言うわけにはいきません。

追いかけようとした俺のスーツの裾を相葉先輩がガシッと掴んだ。

「もう大丈夫だよ」

「大丈夫って、いいんですか?」

「あんまし近づかない距離で護衛すればいい」

「でも・・・」

「あの二人にいかにも護衛してますって顔で俺たちがついて行ったら目立つぞ」

「彼女がいればまず代表は会社に帰るはずだ」

一息ついて相葉先輩は出口に歩いて行った。

「待ってくださいよ」

数メートル先の2人は何か言いあいを続けてる。

立ち止まって向かい合って相手が言い終わったらそれに反論する感じだ。

「しっかり相手の言い分を聞いてるのにあの二人の言いあいは平行線ですよね」

「ホント交わらねェよな」

それでも代表の瞳は柔らいでて優しくて、いつもの冷淡さは息をひそめる。

「キスされた・・・」

いつものことだろと言いたげな苦笑を見せる先輩。

ぷくっと膨れた彼女に代表が弾ける満面の笑みを見せる。

俺らの方がテレる・・・。

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拍手コメント返礼

rui様

この二人に近ければ近いほど分かってますよね♪

西田さん日記・・・

考えてたんですけど(^_^;)

おかゆ

SPにも頼りにされてる西田さん♪

以外と司より怖い存在かも~~~。

つくしを見つけてきっと、ホッとするんでしょうね。(笑)