DNA で苦悩する 16
土曜日が過ぎて日曜日の朝♪
「屋敷から出るな」
なんて無情な命令が出なきゃいいんですけどね。
ここで時間を取ると話が前に進まないので駿君の両親には大人しくしてもらっておきましょう。(笑)
「お食事です」
自分の部屋に運ばれてきた朝食。
こんな朝は父さんも母さんも出かけていなってことだ。
家族がいれば一緒に食べるってことが僕たちの決まりになってる。
「父さんは?」
「会社に行かれました」
それなのに念のために聞かずにいられない僕。
そしてホッと胸を撫でおろす。
舞と出かけるなんて言ったら「俺も行く」
絶対出てくんだもんな、あのおやじッ!
目立つ!
うるさい!
過保護!
楽しくない!
黒塗りベンツ。
ドアを開けるのはガタイのいいスーツ軍団。
そっから何事かと人目を引く。
渋谷109の前だけではやめてほしいって思う。
父さんがついて来るとデパートじゃ一番のお偉いさんが先頭に立って案内して大名行列の中に押し込まれる。
籠の中に押し込まれてるような窮屈感。
お金を持たなくても何でも買える世界がある。
それが普通じゃないって教えてくれたのは母さん。
今は僕の母親が一般的常識を持ってることに感謝してる。
そうじゃなければ僕は、今頃母さんの実家で生活なんて無理だって思うもの。
「おはよう」
元気よく僕の部屋にと飛び込んできたのはすっかり身支度を整えた舞。
派手目じゃなく落ち着いた淡い色合いのチュニックブラウスにシュートパンツ。
見た目は中学生にしては幼い感じ。
外からはわかんないけど着てるものはすべて、誰でも知ってる高級ブランドの一点もの。
どこのブランドものかわかる必要はない上品さ。
喋らなければの注意書きは必須。
「舞に付きあってもらう約束だよね?覚えてる?」
テーブルの上に肘をついてその上に乗せた顎。
顔を突き出す様にして下から僕の顔を覗き込む角度45度。
子犬の様な瞳に弱い。
信じ切って・・・
哀願されて・・・
頼られて・・・
こいつに断れる兄貴はいるのか?
翼はべつか・・・
双子のこいつらはいつもケンカしてるしな。
「ちょっと早く生まれただけで大人ぶるな」
どっちもどっち。
対して変わんないよ。
仲裁するのが僕って構図は小さい時から変わんない。
僕も姉貴か兄貴が欲しかったって時々思う。
「お兄ちゃんが欲しい」
母さんを困らせたことっていくつの時だったのだろう。
「妹か弟なら何人でも作ってやるよ」
ボコッと母さんに殴られた父さん。
今ならその意味も分かる。
父さんは今でも正直すぎだ。
オブラートに包む気配りってないもんね。
朝食の後、こそっと出かけるのはやっぱり無理で・・・
送り向えって事だけを約束させて屋敷を後にした。
僕に張り付いていた千葉さんは今日は父さん担当で居ないってことは確認済み。
知らない人が担当って気もしないではない。
たぶん母さんの威力でそれは大丈夫だと思いたい。
「なに渋い顔してるの?」
「折角舞と二人なんだから嬉しそうにしてよ」
左腕に腕をまわした舞はそのまま僕の腕に頬を摺り寄せる。
「ちょっ、やり過ぎだろ」
「いいでしょう、今日はお兄ちゃんとデートなんだしね」
舞がひっついて喜ぶのは父さんだけだ。
それでも手をつないで歩くよりこっちの方がましって思えるのはなぜだ?
「ねぇ、君たち名前教えてよ」
突然目の前に現れた大人の男性。
両手で持ってるのは一番レフのデジカメ。
にっこりほほ笑んで「怪しいものじゃないから」って、僕らにしったら十分怪しい。
この段階でダークスーツが出現しないのは父さんが僕との約束を守ってSPを配置してない証拠だ。
良かった。
ぬ?
よろこんで大丈夫か?
「この雑誌は知ってる」
差し出された名刺を見て舞が目を輝かせる。
口のうまいやつには気をつけろ。
教わってないのか?
この無防備さは、きっと、いつもSPが張り付いてる副作用だって思う。
「初々しいカップルで、いい写真が撮れたって思ってね」
デジカメの画像を僕らの前に表示させて見せる。
僕の腕に巻きついて笑顔を浮かべる舞。
だからくっつくなって言いたかったのに。
いまさら、遅いかぁ。
画像を覗きこんでため息が出た。
「僕ら兄妹ですから」
「えっ?」
一瞬閉じた唇は「いいよ、関係ない」って呟いた。
「休日の街の中のイケてる男の子、女の子って特集だから」
「それに全国紙だから、君たちならモデルでプロダクションが目をつけるかも」
気を持たせるのがうまい口調。
持ち上げられるのは小さいころから慣れ過ぎてる。
学校で騒がれるだけで辟易してるのに、これ以上の気苦労を誰が望む。
「そうなんですか?」
舞・・・
その嬉しそうな顔。
いいはずないだろう!
「お兄ちゃん、モデルだって、テレビに出れるのかな?」
今は雑誌の話だ。
簡単に飛躍してる。
「悪いけど興味ないですから」
舞の腕を取って足早に歩く。
「きみ、これ」
追いかけてきた男性が僕の手の中に無理やり名刺を押し込んだ。
「じゃ、気が変わったら連絡して」
変わらないよ。
僕の投げ捨てた名刺を舞が拾う。
「お兄ちゃん、固いな。記念になるのに」
「なんの記念だ。雑誌なんて載ったら母さんは目をまわすぞ」
「喜ぶと思うけどね」
「今日はなんだか幸先がいいね」
機嫌のいい笑顔は母親譲りの明るさ。
見てるものをホッコリさせる。
本当に、大丈夫か?
僕の方は先行き不安だ。
楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
アーティーチョーク 様
どっちが上?
ときどき私もわからなくなります。
生れた時の話で書いて様な気もしますが・・・
どっちだったかなって確信できてないんですよね。
たぶん舞がおねぇちゃんだったような気もします。
確認する時間がなくて~~~~。
どなたか私の代わりに知ってる方いらっしゃいますか?
なんちゅう無責任な筆者だッ
おかゆ様
嫌な予感・・・
私もしてます。(笑)