ドッカン !! 32

お話が終りそうで終わらない。

何処か区切りを見つけて新しいストーリーを!

公平君もいなくなってるしなぁ・・・。

*

「どこまでついて行く気だったんですか?」

「一緒に食事をしてくるって俺は確かに言ったはずだ」

「仕事の合間の食事なら会社の近くが常識ですよ」

「これは私の失言でした。代表に常識は通じませんでしたね」

嫌みをこれほどさらりと俺に言うやつは西田以外にはいない。

眉を眉間によせたまま俺が睨んでもなんともないような涼しい顔。

「しかし・・・立ち食いソバとは・・・」

西田の口もとが微妙に振るえてる。

笑った?

西田が?

ほかの奴なら息を漏らしただけの軽い唇の動きも西田が動かすと笑ったって思える不思議な感覚。

大体こいつの口は言葉を発する発声器の役割しかないって思ってるの身近な部下の常識。

必要以外のことは喋んねェしなっ。

「なんでお前が知ってんだよ。相葉か?」

「経過報告をするのもSPの仕事のうちです」

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11:00 代表を会社内から見失う。

12:00 裁判所周辺に到着。

     捜査開始。

 :20 周辺の聞き込みでサラリーマン男性から代表らしき人物の情報を得る。

      「俺、夢見てんじゃないだろうか・・・」

      「頬をつねってくれ」

      向き合って頬をつねりあうサラリーマンに遭遇。

      「イテッ!夢じゃないよな」

      「店に入ってきた時に俺は二度見した」

      「ドッキリとかじゃねェよな?」

      「俺たちを驚かせてなんになるんだ」

      「セレブでも立ち食いソバ食べるんだな」

      「親近感わかねェ?」

      「道明寺代表だろ」

       *以上の会話内容から代表に間違いないと推察。

 :30 立ち食いソバ『丸屋』にて食事中の代表を発見。

      つくし様と並んでカウンターに立ってエビ天蕎麦を立食中。

      代表の申し出を受け我々もソバ屋で昼食をとる。

      5分で間食して任務を継続。

 :50 店を出て会社に向かう代表を護衛。

      

13:20 本社ビル到着。

今回の業務に関する申し送り事項。

   代表個人を探す場合はつくし様がそばにいることを念頭に置いて捜査する必要性があり。

   一般的食事場所も念頭に置いて対処する。

   お二人がご一緒の場合は距離を置き、離れたところから邪魔しない様に配慮。

   状況によっては怪我する恐れがある。

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すーっ

音も立てずに西田からデスクの上に差し出された1枚の白い用紙。

文字の並ぶ白い用紙を俺の目の前に押しやる指の動きが読めと言う様に押し付けがましい。

読みながらピキッとこめかみが動いた。

ここまで細かく書く必要が有るか?

SPの前での出来事は事細かく西田に報告が義務化されてる・・・。

俺はあいつらに蹴り入れたが、鍛えてるお前たちが怪我するってほどじゃねえだろう。

俺に怪我させられる程度のSPだと、そっちの方が問題あるんじゃねェか?

つかえねェぞ!!!

つーか、問題はそれじゃない。

俺の行動は西田に筒抜け。

なんもできねェーーーーッ。

「昼はつくし様の勧める場所を想定してましたが・・・」

言葉を濁した後にまた西田の唇がわずかな動く。

どうせ笑うならもう少しわかりやすく頬まで動かせ!

「昼食の会合が中止になった代わりに午後の会合に入れましたので」

SPの報告書の上にドンと置かれた分厚いファイル。

ピラッと捲った指先が止まった。

「神戸・・・って」

「ヘリを飛ばせばすぐですから」

直ぐって言っても帰りは何時になるかわかんねェだろうがぁぁぁぁぁ。

つくしが実務修習の間は一緒に出社、退社じゃなかったのか?

「時間がロスした分のリスクはしっかり払っていただきます」

俺らまだ新婚・・・。

いきなり別居の溝を埋めるために時間を作るとか・・・

楽しんでもらおうとかの気遣いはないのか?

「そのような、表情をされても無駄です」

俺は不機嫌に睨んでるだけだ。

別に媚を売ってるわけじゃない。

「このまますれ違いになるような時間調整はしておりませんから・・・」

オッ♪

ため息交じりに呟く西田に俺はかまわず嬉々となった表情が顔に出る。

「よろこぶ坊ちゃんを見るのは私も好きです」

子供を諭す様な穏やかな声。

俺の呼び名を代表から坊ちゃんに変える能面的な表情。

だったら!

お前もニカッと笑え。

・・・

・・・・・・

想像できねェ。