僕らはそれを我慢する 7

この二人もすっかりほったらかしで(^_^;)

久し振りに更新です。

*

「責任を取ってもらおうなんて思ってないから・・・」

呟いた声は心なしか震えてる。

キッと目じりを吊り上がって強気に見せるのは涙を見せたくないからだろうか。

「俺が逃げると思ってるのか!」

地上から一番空に近い最上階の社長室の一室。

「結婚しよう。それが一番自然だと思わないか」

抱きしめた腕の中で彼女は一粒の涙をそっと流した。

「ドラマの見過ぎだな」

自然と漏れた声。

それを責めるように睨まれた。

「軽く言わないでくれる。私とあなたが結婚したことがドラマだとか、女子社員の夢だとか言われてるの」

「夢を見られても困るけど、俺はもう売約積みだしな」

「茶化さないで」

掴んだ腕を引き寄せて胸の中に葵を抱く。

「テッ」

誤魔化すな的な反抗でペシッと手の平をたたかれた。

蹴りを入れられないだけ司よりはまし。

「この小説みたいに脅して結婚したなんて噂はすぐになくなるよ」

「簡単に言わないでよね」

少しばかり手の平をたたかれても俺が動揺なんて見せるはずない。

いまだに葵は俺の腕の中で身体を預けてる恰好で見上げてる。

甘えられてる感じに身体の奥から沸きおこるくすぐったさ。

今朝別れたばかりなのに抱きしめたくてしょうがない。

「心臓の音が聞こえる?」

「えっ?」

見上げていた視線が俯いて葵の頬が胸元に触れる。

ワイシャツの下でドクンと上がる心拍。

「分からないわよ」

少し動揺気味に震える唇。

「おまえに触れただけでこうなる」

シッカリ受け止めろと葵の耳に左胸を押しつけた。

「無理だって、上着が邪魔だし・・・」

耳まで真っ赤にして尖る口。

「脱ぐか?」

「脱がなくていい!!」

スーツのボタンに掛けた指を葵に掴まれた。

ククッと楽しげな声が喉元をくすぐる。

「からかわないでよね」

「半分本気」

葵の膨れた顔にも笑みがおぼれてくる。

「おまえが来たって報告を受けて、なかなか来ないからこれでも心配してたんだけど」

「これに時間を割かれたとは思わなかった」

さっらりと読んだ小説はそのままポンとデスクの上で音をたてた。

「昔の同僚にね、お土産渡したかったし、そしたらこれよ」

怒りより恥ずかしいって感情が葵には浮かんでる。

「結婚の事実が何より大事だって思うけどな」

「それはそうだけど・・・」

「ほっとけばいい。いまさら削除しても読まれた後だろう?」

「この話、現実にしても良くない?」

「現実?」

「子供・・・」

「真昼間からかする話じゃない」

二人の息が感じる距離で呟く。

ゆっくりと重なり合う唇の距離で葵が目を閉じる。

それが合図となって重なる唇。

まじりあった息が熱い。

「葵が秘書のままならデスクの上に押し倒したくなる誘惑と戦うのが大変そうだな」

力の抜けかかった葵の身体がピクンと筋肉に線を張る。

「焦るな、今は我慢出来る」

「食事でも行こう」

葵の腕を取って引っ張って歩く。

歩くたびに笑みがこぼれてしょうがない。

歩みを阻害するようにフッと足元を影が覆う。

葵から移した視線の先でにっこりと笑みを浮かべる第一秘書。

「一之瀬か・・・」

「食事に行ってくる」

気まずい気持ちを隠す様にコクンと喉が鳴った。

「ごゆっくり、どうぞ」

「エレベーターを使わずにお二人で会社中を歩けば一発ですね」

「何がだ?」

「妊娠を盾に結婚を迫られたって噂ですよ」

「新婚ボケだと思われない様に注意してくださいね」

一ノ瀬からウインクされた。

俺・・・そこまでくずれたか?

俺の横でゆで上がった葵が出来上がってた。

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拍手コメント返礼

ゆっちゃん 様

一ノ瀬さんもいなきゃ困る名わき役で♪

西田さんとは違って感情が豊かだからあきら君にはぴったりな秘書だと思ってます。

西田さんとあきらだったら・・・

合わないだろうな・・・。