僕らはそれを我慢する 8
さて、今回のあきら君。
司じゃないけどこのまま甘々のはずなんてあるわけがない!!
というわけでそろそろ小悪魔投入です。
*「偶然でも会えてよかったわよね」
「学校はどうした?」
「えーーーーッお兄様の言葉とは思えませんわ」
実際、俺も高校の頃は司らとつるんで授業を真面の受けたためしはない。
会社を出る一歩手前で、こいつらにつかまった。
待ち伏せか!と思えるタイミング。
可愛い妹たちには違いないだけど、葵に対して何をしでかすか分からない危うさがある。
大丈夫だという様に俺のスーツの裾をグッッと握った葵が妙に愛しい。
連れ行かれたレストランの個室の一室。
「あきら君」
相変らずのテンションの高さで母さんまでいた。
俺たち二人の正面に対面状態で姑に小姑が並ぶ。
妹達の後ろから黒いほっそりとした尻尾が生えてるような気がする。
「ねぇねぇ、お兄様やさしい?」
「あきら君が優しくないわけないでしょう。ねぇ葵さん」
どう反応していいかわからない葵はちらちらと気まずそうに俺に視線をなげる。
「俺たちと呑気に食事をしたい、なんてことじゃないですよね?」
「だって、あきら君無視するんだもん。家には全く帰ってきてくれないし、ママは淋しくて」
ナプキンを胸元できゅって絞って甘える目つきの母。
孫がいてもおかしくない年令。
それは・・・父さんの前でやってくれ。
心の底でため息を漏らす。
「結婚式!」
「だからもう挙げたって」
「ママ達、出席してないもの」
「自分の息子の結婚式よ。それも美作家の長男。世間体もあるわよ」
この母から世間体の話を聞くには十分に違和感がある。
「結婚式ってたくさんの人に祝ってもらった方が嬉しいわよね。葵さん」
「まぁ・・・道明寺さんに西門さん、花沢さんもさん祝ってくださいましたから、それだけでも嬉しかったです」
葵・・・
それを言ったらヤバイと思う。
「F4がそろうって確かに贅沢よね」
「そうよ、だから見たいんじゃない!!」
絵夢と芽夢。
向かい合ってガシッと互いの手を握り合ってる。
「お兄様の結婚式でしかありえない贅沢じゃないな」
二人の声がハモった。
「ねぇ、毎年さ結婚式を挙げたら、結婚記念日に毎年愛を誓ってもらうって必要かも」
「おにいさまの女性遍歴を考えたらね~」
いたずらなそっくりな表情が並ぶ。
葵と知り合ってからほかの女に目もくれてないぞ!
ガチャリと思わず皿の上にナイフを落とした。
葵と二人で楽しいいはずの昼食が今はゴムを噛んで食べてる気分。
「なんてこと言うの、あきら君はこんなにハンサムなんだから女性にモテてもしかたないでしょう」
フォローになってない。
双子の上を行く天然さ全開。
「かっこよく生んであげたママが凄いんだから」
感謝してよねって・・・
それを葵の前で言うのか!
給仕にあらわれた店員に止まる会話。
すくわれた気がした。
「結婚式の話じゃなかったんですか?」
「そうよ、それ」
話を逸らすところを間違えた。
結婚式から逸らす必要があるのに自ら戻してどうするんだ。
かなり動揺してる。
ここでまた双子たちが俺の女性遍歴をしゃべりだしてみろ。
葵が拗ねない保証はない。
「近いうちに日本で結婚式しましょう」
「忙しいんです」
「仕事ならしっかりパパに調整してもらいます」
そのパパは父さんか爺様か?
どっちだ!
どっちも手ごわいのに二人がかりで来られたら断れる確率は0に近い。
「おにいちゃまの結婚式を見ないと結婚したって、信じられない~」
「そうよ、女性に言い寄らるのが嫌になって偽装結婚とかあるかもしれないし」
ブッーーーッ
口にふくんだグラスから水を吐きだしそうになった。
「偽装とかじゃないからな」
会社の噂の妊娠を盾に結婚を迫られたって事よりかは幾分かはまし。
葵との最初の出会いは偽装みたいなもので、それから本気に変わった愛。
「そんなに、焦らなくても私は大丈夫だから」
俺の横で心配そうに見つめていた瞳が小さく笑う。
「いつもと、違うあきらが見れて面白いかな」
テーブルの下で手のひらの上に葵の指先が触れる。
その指に絡めあう指先。
結婚式を挙げてそのあと、ゆっくりできるのなら一日の辛抱。
折角の2人の時間をかき回されるよりその方が賢いかもしれない。
「お邪魔なようだから帰ります」
カタッと床が椅子の動きで音をならす。
立ち上がった3人がそろいもそろってにっこりと笑みを浮かべる。
手を握り合っていたの見られたか?
それくらいでいまさら照れることもないけど。
葵はビクッと俺の手の中から指を抜き取って膝にもどす。
真っ赤になるなッ。
「約束ですよ。結婚式」
同時に踵を返して部屋を出ていく。
うしろから見たらどれが母親で絵夢と芽夢かわからないメルヘンさ。
背中に花を背負って退場。
今日一日のエネルギーを使い果たした気がした。
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
b-moka 様
たま~に登場して双子ちゃんたちいい仕事してくれますよね(笑)
ほぼあきら君諦めてると思いますけどね。