FIGHT!! 50

駿君が引き起こした「おかえり」がらみのお話第3弾。

短編の家族編の分類に近いような気がします。

このお話は当分終わらなかったりして・・・(^_^;)

今日は昼から子供の参観日に行ってきます。

授業は体育。

この時期の体育と言えば持久走。

外での参観は南国と言えどもつらい。

「雨が降らないかな~」

家を出るときぽつりとつぶやいた娘。

それは母さんも思うぞ~。

*

「パパ起きて」

ウッ・・・

突然腹の上に感じる重み。

重量13キロだったか?

俺の記憶はあやふや。

「駿、起こさないの。パパは時差ボケでまだ眠たいだろうから」

それじゃなくても寝るの朝方だったしな。

「時差ボケって?」

あどけない声は俺の上から離れて移動。

つくしに抱き上げられてベッドから降ろされてる。

「日本は朝でもパパが昨日までいたところは夜だったからね」

「朝と夜が違うの?」

「そう」

「そうなるとどうなるの?」

「パパみたいに朝が来ても起きれなくなる」

それ・・・

俺がダメみたいに聞こえねェか?

「ふ~ん、そうなんだ」

駿そこで納得するな!

「相変わらず、うるせぇな」

「あっ!パパ!」

一度離れた駿がベッドの上に舞い戻る。

「僕のおかえり見た?」

「ありがとな。ただいま駿」

嬉しそうに弾ける駿の笑顔。

それに並ぶ小さな顔が「おはよう」と笑う。

愛らしさと愛しさが極上のカンフル剤。

「双子を見てくるから駿をお願いね」

さっきまで俺を起こすなって言ってたわりには子守を押し付けられる。

それが嫌じゃないから自分が笑える。

昨日聞けなかった『おかあさんが 一ばん さびしがってました』 の意味。

今が聞き出すチャンスだよな。

「駿、俺がいない間どうだった?」

「さびしかった」

膝の上に乗せた駿は手に持ってたミニカーを俺の腕で走らせながら気のない返事。

お前じゃなくてママがだよ。

「ママ、さびしいとか言ってたのか?」

「言ってない」

はぁ?

じゃこの一番てなんだ?

「淋しいとかお前に言ってたから、駿は、お母さんがさびしいって思ったんじゃないのか?」

「これ、すごいでしょ?」

振り返って見上げた駿が俺の鼻先に付きつける赤いスポーツカーのミニカー。

「本物があるぞ」

「本物じゃ遊べないもん」

って・・・そうじゃねぇだろう。

「駿、パパが聞きたいのは、なんでお前がママがさびしいって思ってるって思ったかだ!!」

駿を抱きあげて向きを変えて真正面に駿を座らせた。

あどけない顔が口元を引き締めてへの字に曲がる。

拳を右の顎の下に置いて考えるそぶり。

どこで覚えた?

これをつくしが見たらかわいぃ~と、言い出すんだろうな。

「う~ん」

駿がうなるたびに面と向かった俺の顔との距離が縮じまる。

早く言え!

思い出せ!

つくしが双子を抱いて戻ってくる前に!!

「わかんない」

わかんないわけねェだろうがぁぁぁぁぁ。

俺も駿を相手にするうちにずいぶんと気が長くなった。

「パパが居ない間ママがさびしそうにしていたことあったのか?」

駿と視線を合わせてゆっくりと声を出す。

俺・・・

なんでこんなことに必死になってる?

3歳児相手に何を頑張ってるのか・・・

誰にも見せられない道明寺総帥の姿。

つくしにも見られたくねえぞ。

「駿にママ何か言ってたのか?」

「あのね・・」

「おう!」

思わず大きく声が出る。

駿が言うより先に喜びが表面に出るってどれだけの期待感だ。

「パパ、早く帰ってくるといいねって、いつもママが僕に言ってくるの」

「だから僕じゃなくてママがパパに早く帰って来てほしいんじゃないかって思った」

駿は自分が言ったことの重要性なんて思ってもいなくそのままベッドの上にミニカーを走らせる。

そうか・・・

俺に早く帰ってきて欲しかったッたってことか?

子供をダシにしなくても直に「会いたい」って言わねェのがあいつらしい。

「ん?何ニヤついてるの?」

双子を左右両手に抱いたつくしが戻って来た。

「駿に聞いた」

「何を?」

「『おかあさんが 一ばん さびしがってました』 の意味」

「ちょっと!」

頬を赤らめなら唸る声。

威嚇になってねェよ。

「苦労したけどな」

即答できないやつを可愛いって思うのは目の前のこいつ等だけ。

会社の部下なら重篤な失態。

どこまでも優しくなれる俺がそこにいる。

「離れていた分の埋め合わせしてもらわないとな」

「埋め合わせしてもらわないとイケナイのは私たちの方だと思うけど」

ベッドの上に置いたチビ2人。

一斉に近付いて膝の上を這いあがる。

「おい、こら髪の毛引っ張るな」

顔の上まで乗り上がんな。

ベットの中に座ったままの角度45度の上半身は完璧に遊び道具にされてしまった。

「くせっ」

鼻先に押し付けられるプニッとしたオムツに感触。

「さっき変えたばかりなんだけど・・・」

「あっホントだ」

舞を背中から抱き上げてオムツの匂いを嗅ぎながらつくしがつぶやく。

なんでもない、普段の日常が戻って来た瞬間、幸せだって思える。

俺もお前らにすげ~会いたかった。

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おかゆ

わたしもファミリーのお話はすらりと書けるので好きなんですよね。