DNA で苦悩する 24
初告白もうまくいった駿君。
今回は取り残された舞ちゃんと人身御供にされた蒼君に視点を当てたお話です。
「すげー、全然走ってる感じがしない」
腰を下ろしてる後部席のレザーを撫でて嬉しそうにしてる人は初めて見た。
「そんなにすげーの?」
「・・・すげー」
「舞ちゃんがすげーとか言うとは思わなかった。それも意外ですげー」
一瞬キョトンとした顔がケラケラと笑う。
蒼クンの妹の凛ちゃんとは仲良しで、牧野の家に行くと私の知らない遊びをいろいろ教えてくれた。
中学になって会ってないのは牧野家に遊びに行く機会が減ってる影響。
「バカ兄きーーー」
凛ちゃんと一緒になって蒼君をそう呼んだ記憶だけがなぜか鮮明。
駿お兄ちゃんをバカなんて思ったり呼んだりしたことはないけど今回だけは「バカ兄貴」って呼びたい。
リムジンで全身で楽しんでる蒼君を乗せたまま屋敷の門をくぐる。
「舞ちゃん、もしかしてここが家?」
「そうだけど・・・」
「ここに家族5人で住んでるの?」
「違うよ」
「使用人さんたちもいるからね」
ちょっと安心したと言いかけた蒼君の表情が強張った。
「門をくぐってからが遠すぎだろ。同じ都内かよ」
運転手に開けられた後部席のドア。
顔をあげたままの視線は屋敷に釘付けで言葉を失ってる。
「ホテルよりは狭いから」
「狭いって、どこのホテルと比べてるの、俺迷子になりそう」
「いこ」
このままだといつまでも屋敷を眺めて歩きそうもない蒼君を促して玄関に進む。
タイミングよく開く扉。
「おかえりなさいませ」
左右に並ぶ使用人が頭を下げる。
うしろにいる蒼君がビクンとなって身体を丸めるようにカバンを抱きしめた。
「旦那様がお嬢様が帰ってきたら部屋に来るようにとおっしゃってました」
「お父様帰ってきてるの!」
「凄く不機嫌でしたけど何かしたんですか?」
小さく言ってちらりと視線を蒼君に注ぐ我が家の忠実な執事丸山さん。
イケメンの若いなんでもパーフェクトに熟す執事が流行なのに丸山さんは白いひげを蓄えた好々爺ってタイプだ。
タマさんに続く道明寺家の生き字引。
私の側に同じ年頃の男の子がいるとなおさらパパは不機嫌になるのは了解済みだ。
「僕が無関係ですから!」
何かを察知した様に蒼君が叫んだ。
「こちらはお兄様の同級生」
「さようでしたか」
ここでホッと息をつく丸山さんが何を不安がってたのか丸わかりだ。
「お母様は帰ってきてるよね?」
「ハイ、一緒にお帰りです」
「駿お兄様も帰ってくるはずだからそれからじゃダメかな?」
「舞ちゃん・・・俺を2階から睨み付けてる人いたんだよね」
「見覚えあるんだよなぁ・・・あの顔」
蒼君がこの家で知ってるって言ったら・・・
ママかパパしかいない。
ってことは・・・
「舞!」
静かに地上を地響きを立てて進むような低い凄みのある声。
「司!待って」
その後ろから聞こえたママの声。
「おかえり」
パパからかばう様にママが私を抱きしめた。
「なんてことしてくれたのよ」
ぼそっと耳打ちされた声はやさしくてママが怒ってないってことはすぐにわかる。
「やばかったかな」
「やばいに決まってるでしょ。それよりこっちの方が今はやばいかも」
ママも蒼君にちらりと視線を向ける。
ママの視線に気が付いた蒼君が「俺?」って自分の指で自分を指さしてる。
パパに睨まれたらライオンでも猫になる。
「蒼君よね?」
「あっ・・・ハイ・・・」
「大きくなったね」
私から離れたママが蒼君の腕を取ってブルンブルンと振り回してる。
蒼君。
ママに抱き着かれなかっただけ良かったね。
抱き着かれたらパパは今度はママに嫉妬する。
「俺以外に抱き着くな!触るな!触れるな!」
駿お兄ちゃんや翼までパパの前ではママに遠慮するんだから。
「誰だ」
不機嫌そうに眉を寄せるパパのこめかみが切れそうにピクリと動いた。
お兄ちゃん!早く帰ってきてよーーーーーッ。
楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
Gods&Death様
風もなく意外に温かくて助かりました。
でもね持久走の競争でもしてれば応援も出来ますが、何をやってるのか説明もないまま運動場を1週を数回。
後から娘に秒数を決めてその秒数を目指して1週していたと聞きました。
参観の意味が分かんないよ~
お母さんたちはおしゃべりで時間をつぶしてたし(^_^;)
もっと見るべき授業風景があったと思います。
司は発言してもしなくても怖いでしょうね。
蒼君なんて口が利けなくなりそうな気がします。
アーティーチョーク 様
蒼君の名字・・・
以前の登場では駿君目線だったしここで出てくると思ってなかったから名字まで出てなかったんですよね。
今回は考えてます。
そしてどこでなのらせようかなぁ~とそのタイミングを考えてます。
でもねここで下手に付けると忘れた時が困る(笑)
忘れない苗字を物色中です。