クリスマスの夜に雪が降る
今日はイブ。
今年のクリスマスはどんな日になるでしょう?
このお話はMステを見ながら(聞きながら)21日の夜に書いてます。
予約投稿でUP♪
我が家は特に何もなし。
あと数年もすると娘は友達?彼氏と過ごすようになるのかな。
淋しい・・・
さてこちらのお話は少し切なくてホッコリとするお話。
そんなお話をお届けできればいいなぁ。
ブログを開設してから今年で3度目のクリスマス。
去年はどんなお話を書いたのか・・・。
確認してみたら『クリスマスの夜に』
似てるな題名(^_^;)
今回はどんなお話になることやら~
続きからお楽しみください。
メリークリスマス♪
*「キライ」
「あッ!上等じゃねェか、俺も嫌いだよ」
睨みあった鼻先に白くかかる息。
あと数センチで猫が顔にひっかき傷をつけそうな勢いの声。
クリスマスの大きなモミの木のツリーに点滅してる色とりどりの電球の下で、嬉しそうに俺を見つめていたはずの表情が崩れた。
たく・・・
わざわざ外で待ち合わせもしなくていいだろうがぁ。
会社にあいつがくれば1時間のロスは避けられた。
「ツリーの下の鐘を鳴らすと一生一緒にいられるんだって」
いまさらベルを鳴らさなくても俺たちは一生一緒だぞ。
話題のクリスマスのスポット。
珍しく牧野が俺に強請るからしょうがなく牧野の希望のクリスマスのデートに付きあうために予定を付けた。
クリスマスの夜景を最上階で楽しむディナー。
どうすんだ。
そして、仕事に追われた俺。
時間通りには仕事が終わらなくて、約束の時間はとうに過ぎる。
ツリーの下でつま先をたてて視線を左右に走らせる牧野を見つけた。
フッと冷たくなった指先を温めるように牧野が息を吹きかける。
「待たせたな」
そう呟く前に俺の前に駆け出した牧野。
「あと、1分遅かったら帰ってたんだから」
少し拗ねた表情にごめんの代わりに「俺様がどれだけ急いで来たかわかんねェの」
天邪鬼に呟く。
「人を二時間も外に待たせて言うのがそれ!」
「折角のクリスマスなのに」
再会した恋人達はにこやかに微笑みを交わして肩を抱きあってクリスマスの曲の流れる街に消えていく。
俺たちは手をつなぐこともできずに睨みあってる。
もっと他にやりたいことは有るはずなのに。
クリスマスの夜に嫌って言いあってる恋人達。
俺たちだけじゃねぇのか。
「大キライ」
キライが大きくなった。
面と向かって良く言えるよな。
強気な瞳が俺の素直な感情の行き場を無くす。
「いつから?」
「いつからって・・・いつからってなによ!」
相変らず気の強ぇ態度。
「いつから俺のことキライになったのかって聞いてんだよ」
「道明寺はいつからよ」
「はぁ?俺が聞いてんだろう」
「ちっとも優しくない道明寺が嫌い」
「一言、ごめんって言ってくれればいいだけでしょ」
お前があと一分遅かったら帰ったなんて言うから・・・
それがなければ今ごろはきっと・・・
「悪かった、寒かったろう」
そう言ってコートの中にお前を閉じ込めるように抱きしめてたはず。
そうさせないのはお前じゃないのか。
「俺が謝ればお前の気が済むわけ?」
頬に触れる空気の冷たさ。
「そう、じゃなくて、言い方が有るって言ってるの。いたわりって心遣いが欲しいだけでしょう」
牧野の口から零れる白い息。
寒さに耐えるように牧野が自分の肩を抱いてブルッ振るえる。
悪いとは思ってる。
寒そうに震えたお前をみて、すぐに温めてやりたって思う。
待たせたことの罪悪感が心をチクッとする気持ちはあるんだ。
牧野を凍えさせるまで待たせたのは俺で・・・
牧野を怒らせたのも自分で・・・
悪いのは俺だって気が付いてる。
俺も素直じゃない。
いまさらごめんて謝れるほど器用じゃない。
気がつけよ。
きっとお前より俺の方が天邪鬼。
「キライって言うなよな」
ごめんの代わりに牧野の腕を取って引き寄せた。
抱き締めた牧野は冷たくて、冷え切った頬がシャツの上からも俺の体温を奪う。
ただ黙って俺に抱きしめられたままの牧野。
「温かい・・・」
俺の腕を拒むことなく唇から漏れた小さな声。
愛情という愛情をすべてかき集めて足らない愛しさ。
その愛しさのまま抱きしめていたいって思う。
「これからの時間、お前にやるよ」
出来ることなら365日一緒にいたい。
「それじゃ今から二人のクリスマスだね」
首をもたげて俺を見上げた顔がやっと機嫌を直した。
俺が見たかった笑顔が目の前に浮かぶ。
「あっ・・・」
俺から視線を外した牧野が空を見あげる。
ツリーの光の中で白くひらひらと舞う光。
「寒いと思ったら、雪だ」
牧野の手の平で受け止めた白い雪はすぐに解けて水滴にと変わる。
「早く温まろう」
コートの中に牧野を包み込んで白くなりかけた歩道を二人で步く。
「キャッ、転びそう」
雪で白くなりかけた路上で足を取られて、滑りそうな牧野が俺の腕をギュッと掴んだ。
「ドジだな」
転ばない様に牧野の腰にしっかりと手を添える。
「ドジって言うな」
膨れた頬とは裏腹に瞳の奥は笑ってる。
牧野が俺に身体を預けたまま掴まれた腕に指先が動いて腕をからませる。
牧野の手のひらから腕を伝って身体に流れ込む温もり。
キライだなんてスキの裏返しだ。
俺たちはその事を二人とも知っている。
素直じゃねぇよな。
肩が触れあってるだけでこんなに温かくて、くすぐったくて、外気の冷たさも気持ちよくなっている。
「まだ、鐘を鳴らしてねェぞ。いいのか?」
「道明寺が来てくれたからもういいや」
牧野の息が唇に触れる距離。
重なる寸前で温もりの中に感じるわずかな冷たさが唇に触れる。
舞い落ちる雪に先を越されてしまった。
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