Perfect dungeon 13
最初は、司の変装が最後までばれずにことが進んで、時代劇の最後のパターン的に司が登場!
なんてこと考えちゃってたんですけどね。
書いていくうちに、このほうが司らしいかなと勝手に思ってしまったわけです。
どうなったかは続きからどうぞ♪
番外編「西田さんの日記」もUPしました。
*奥まった大使館の一室。
急遽俺に与えられた部屋。
部屋に通じるドアをSPが開く。
オレンジ色の薄明りの灯る廊下から数倍は明るくなったLEDのライトが室内を照らす。
部屋に足を踏み入れた俺の姿は毛穴まではっきり見られてしまいそうだ。
「私が代わりましょう」とか気を利かせるもんじゃねェのか、あのバカ兄貴。
おふくろを俺にあてがって、マルクは牧野をエスコートしていった。
自分の手の中に牧野を奪い返せないもどかしさ。
我慢することに慣れてねぇんだよ。
思うがままに行動するには俺の責任の重さが邪魔をする。
会社のTOPになんてなるもんじゃねェな。
二人の背中を見送りながら漏れた溜息が重い。
音楽が途切れがちに聞こえる長い廊下をおふくろを背にして歩く。
射るような視線がいまだに背中に突き刺さる。
どう考えても王国の王子に注がれる視線じゃね。
王室に対する尊敬の念とか送れねぇのか。
俺が一番送ってねェか。
マルクに尊敬の言葉遣いなんてした記憶あっかな?俺?
俺の後について部屋の中におふくろが入ったのを確かめてパタンとSPがドアを閉めるのが見えた。
二人になった途端に、広いはずの空間が狭められて、窮屈に感じてしまってる。
遠慮なくおふくろの身体から発せられる威圧感。
それに臆するような俺じゃないのが救い。
覚悟を決めてくるりとおふくろに身体を振り向けた。
強張る頬にわずかに目もとが赤くなってるおふくろ。
コツコツと目の前に足を進めて、俺の頬に触れるようにおふくろの足元が爪先立ちに動く。
「ベリッ」
「なにすんだよ!」
変装のための付け髭を思い切り剥がされた。
「私を、騙そうだなんて100年早い」
見つめる視線は怒りに満ちて、それでも瞳の奥が温かい光を宿して俺を見てる。
「親に心配かけて・・・、相変わらずしょうがないわね」
サングラスまで取られて、もう片方の手の指が確かめるように前髪を数度掻き上げた。
指先から伝わる熱は今までに感じたことのないような温かさで細胞の一つ一つを包み込んでいく。
牧野とは違った温もり。
ごめん・・・
言いかけた言葉はどうしようもなく照れくさくて心の奥にとどめてしまってる。
「よく俺だって気が付いたよな」
「親ですから、と言いたいところですけどね」
「あなたがマルク王子と親しい関係だということは知っていたのよ」
「司が今回のことを考え付いたのも王子の手助けがあればでしょう」
「王子の国との提携の話が持ち上がってきたのも不穏な動きの報告の後、ひと月でまとまるようなプロジェクトじゃないわ」
「急がせたのには何か裏があるって考えるものよ」
「それに王子の弟はまだ小さい事は確認してるの。取り引き相手のことを調べるのは基本ですよ」
「どうせなら妹の王女の夫として来日すればばれなかったかもしれないわね」
落ちついた声がわずかに俺をからかう色あいに変わった。
「俺が牧野以外と嘘でもそんな設定を考えるなんてことはしない」
俺の言葉におふくろが口もとを小さくゆるめる。
「彼女、本当にあなたのことを心配してるわ」
無理に笑顔を作る牧野。
気がつくと落ち込んで、気落ちして、淋しげな背中。
おふくろに言われなくても牧野の悲しげな姿が目に焼き付いてはなれない。
なんど、抱きしめて俺だと告げたかったか。
「あいつは、俺のことに気がついてるのか?」
気が付いてほしいような気持と、まだ駄目だって思う感情が格闘して苛まれてる俺。
ばれてないことの方がいいに決まってる。
自分に言い聞かせて心を押さえつける。
「確信はまだ持ててないでしょうけどね」
おふくろの言葉にホッとしてる自分と寂しさを感じてる心。
「王子のひげを剥がして確認しようなんて乱暴さはつくしさんには無理でしょうから」
あいつは俺に対しては遠慮なく乱暴だぞ。
確信が持てれば飛びついて殴る位やりかねない。
ソシタラ・・・オレハ・・・ダマッテ・・アイツを・・・受け止める。
乱暴さも・・・
粗暴さも・・・
暴言も・・・すべてはあいつの俺への愛着の反動だって分るから。
きっと、クシャクシャにした泣き顔のおまけつきだろうから。
「私もこの会場であなたを見るまで確信が持てなかったわ」
「つくしさんを連れて来たのは正解だったみたいね」
俺はあいつに何もしてねぇぞ。
あいつに触れたのも握手した程度。
パーティー会場ではそれ以外は触っても、言葉も交わしていない。
俺としては最善の対処をしたつもりだ。
「表情は見えなくても、司がイラついてるのが分かたわ」
「つくしさんが王子に微笑むとこめかみが震えてたの自分じゃ気が付いてないでしょう?」
「王子の腕がつくしさんの背中に回された時なんて食いつくそうな殺気だったわよ」
詰めが甘いと楽しげにおふくろがつぶやく。
もしかして・・・
ドレスの肌を隠す面積が狭いやつを牧野に着せたのも俺にわざとか見せつけるためか?
最初あのドレス姿の牧野を見た時点から俺は嫉妬に駆られてしまってた。
目が離せなくなった一つの要因。
男が近づくたびにムッとした感情が蓄積された爆発しそうな感情を抑え込むのに苦労していた。
「司にしてはよく我慢してるわね」
「少しは成長したのかしら?」
そう言って笑ったおふくろの顔が真顔になる。
「もう少しの間、つくしさんには、ばれないようにしてもらいます。いいですね」
おふくろの鋭い眼光。
母親の顔が一気に道明寺フォールディングス会長の顔になる。
「俺に命令するな」
強気な言葉で威勢を放つ俺。
負けてるよな・・・。
胸の奥でぽつりと本音が漏れた。
でも、負けネッ!!
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
aimiw様
つくしにも早くばらしてあげて~のご意見が多いですよ。
その前に司君に思いっきり嫉妬してもらって~♪
なんて展開が好きなんですよね。
b-moka 様
まだまだ寒いんですね。
我が家のわんこはコタツの中から出てきません。
ネコ化してる困った奴です。
しばらく正体がばらせずにイラつく司を楓さんと西田さんが楽しげに見てるんでしょうね。
かえまま様
今回はいつもと違うでしょ?
こんな話もかけるんだよ~と挑戦してるのですが、なんだかいつものパターンが見えてきちゃった気もします。
まだまだ切なくいくぞ!!