DNA で苦悩する 35

今ごろの高校生のデートって、どうなんだろう?

ここで悩んでる私。

ドラマでの初デートは動物園でしたよね。

キモかわのカメレオンのぬいぐるみに変わるインパクトのあるものってなんだろう。

言い間違いも駿君はないだろうし・・・。

面白いこと面白い事・・・。

考えることはそれじゃない、初デートだぞ! 

司だったらけりを入れられるな。絶対。

*

やっと来た

そんな表情を蒼が浮かべてニンマリと笑う。

わざと遅れたわけじゃないからな。

目で訴える僕。

分ってるって。

蒼の視線がそう返す。

うわべだけ納得してる半分だけからかうような表情。

全然信じられてない。

目が笑ってんだよ。

「時間厳守だろ」

「知らない女の子に追われて逃げるの大変だったんだそ」

「それで、眼鏡なんかかけてんのか」

蒼の腕が動いて僕の顔から眼鏡をとっておどけた調子でその眼鏡を自分の顔にかけた。

「返せッ」

僕の顔に戻る前に鮎川もかけていた眼鏡。

鮎川の僕とのわずかな接点。

その接点にほかの奴が触れたことに落ち込んでしまってる。

「そんなに怒る事じゃないだろう」

僕の強気な態度に驚く様に蒼が眼鏡を投げ返す。

「また、知らない女の子に声かけられるのヤなんだよ」

鮎川から受け取った眼鏡。

鮎川の鼻の上に乗っかっていた眼鏡。

眼鏡の位置をわずかに動かして感じたすぐったい感情。

蒼に横取りされた。

むくれた気分で言い訳してる。

「可愛い女の子にナンパされてたもんね」

鮎川の笑顔もチクリと胸に傷をつける。

「お前、鮎川に見られてたのか?」

気の毒そうな表情で蒼がつぶやく。

「やっぱり、道明寺君なら目立つのもしょうがない」

「今日は一緒に遊べるの自慢できる」

クスッと口元を緩めて橘がつぶやく。

「菜花もそう思うよね」

「・・・うん」

橘に催促されてしかたなく鮎川が返事をした。

「道明寺君行こう」

くるりと当たり前の様に僕の腕をとったのは鮎川じゃなくて橘。

慌てて鮎川から腕を抜きとるように動かす。

逃げようともがくたびに橘が身体ごと僕に寄せてくる。

無表情の鮎川にムラッとしてる蒼が見えた。

メガトン級で蒼が僕に体当たり。

橘と僕の間に割って入って、僕の首をガシッと腕で固めて離された。

そしてズカズカと水族館の中に入っていく。

その後ろを別に気にしてない様に鮎川と橘が会話しながらついて来る。

「駿、水族館って意外に薄暗いとこあるから、いつバラバラになっても可笑しくない」

「もし、離れても探さなくてもいいぞ」

それって二組に分かれて行動しようってことか?

水族館の入り口から広がるフロアー。

家族ずれのにぎやかな笑い声を天窓から差し込む日の光が包み込む。

この状況で連れを見失うってあんのか?

それより、蒼!くっ付き過ぎだろ。

橘が僕に近づけない様に予防線を張ってるのは理解できる。

これだと僕も鮎川に近づけない!

蒼の頭を抑え込んで抜け出そうと抵抗。

両腕を巻きつけて僕にしがみつく蒼。

「こんなとこでプロレスやらないでよね」

静かに僕らの前を歩く鮎川がつぶやく。

僕から髪の毛をクシャクシャにされた蒼。

鼻からずり落ちそうな眼鏡をかけた僕。

その眼鏡のフレームと顔の隙間から鮎川と橘が『連れじゃない』と恥ずかしげに笑ってる背中が見えた。

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拍手コメント返礼

ひつじ 様

「ジュース買ってくる」

駿君一人で買いに行きそうな気がします。

「鮎川と二人になりたい」

強引に引っ張っていけば司の血なんですけどね。