我儘な僕に我儘な君 4
このお話はゆっくりとペースで進めていくつもりです。
内容が二つの恋をもとに作ってるのでつながりを持たせながら書いていく手法でお話を進めていきます。
そのうち、つくしにつかさに駿君も絡んでくると楽しくなりそうで話も広がるかな?
大学生になってるはずの駿君の恋も気になるし♪
つかつくよりは進展してるはずだと思いますけどね。
「好きなんです。付きあってください」
真剣なまなざしと少し震えた声。
その声に教室に向っていた足が止まった。
女の子の背中を見つめながら頭一つ飛び出した相手の表情を見つめて戸惑う様に唇を噛む。
これで何人目だろう。
今までは全く気にならなかったのに。
胸の奥がキュンと締め付けられて感じる痛み。
見たくないのに視線が外せずに佑の表情が、返事が気になってしょうがない。
人の告白を見てるものじゃないでしょう。
自分に言い聞かせて、教室の中に入れって身体に指令を出す。
見たくて見てるわけじゃない。
教室の外に呼び出して目立つところで告白してるんだから目が付くだけのことだ。
チラリと向けた視線が佑とぶつかって、その視線から逃れるように足早になった。
背中を向けたままでも感覚のすべては佑に向けたままだ。
「気にするな」
座席について机の上に落とす視線。
なめらかな光沢の光る机を眺めながら小さくつぶやいた。
「おはよう」
私の前の席の椅子に跨ぐように腰かけて笑顔を向ける佑。
「モテるね」
「半分は翼のせいだからな」
「えっ?」
「翼が槇と本気で付きあってるのをみんなが認めてるだろう」
「いつまでモツかなんて嫉妬丸出しの悪口も言えなくなってるからね」
翼がすずなに告白した後は私たちのいない場所で冷たい態度を同級生だけじゃなく上級生にも向けられていたなずな。
それを私たちの前じゃおくびにも見せなかった。
「あんなに、怒った翼を見たの初めてだったもの」
夕暮れの教室で帰り支度をしていたすずなを取り囲んだ数名の女生徒。
「私たちの寄付金で英徳に通わせもらってるんじゃない」
「どうやって取り入ったのか知らないけど、いい気にならないことね」
口々に罵る言葉を真っ向から受けても、黙々とカバンの中に教科書をしまうなずな。
聞いてる私の方がムカッときてなずなの前に飛び出しそうになった。
その横で翼の表情が血の気を引いたように白く変わるのが見えた。
「寄付金って言っても君たちが寄付してるわけじゃないよな?」
教室の入り口のドアを乱暴に音をたてて翼が開く。
「親の金で気楽に英徳に通うやつより、自分の優秀さで推薦をもらえる槇の方が凄いと思うけど」
なずなに浴びせていた罵声は一気に地上の穴に中に吸い込まれるようにかき消えた。
何時もの翼の明るさからは想像できない冷たさ。
「私たちはただ・・・道明寺さんが付きあう相手じゃないと・・・」
振るえる女生徒の声を黙らせるように翼の手のひらが壁を壊す勢いでバンと叩いた。
「理不尽に槇を責める様なことがあれば俺は容赦しない」
側で聞いてる私も震える様な迫力を翼が見せる。
親の力を振りかざすことは一番やっちゃいけないことだって私たちは知っている。
自分の信念を曲げてでもすずなを守りたいって言い切る翼が自分の弟ながらカッコ良く思えた。
「すげ、さすがに道明寺司の息子だよな」
私の横で佑が感心するようにつぶやいた佑がウインク気味に片目をつぶって見せる。
佑の見せる柔らかい表情に動揺してしまう自分を押しとどめてすずなの元に駆け寄った。
「すずな、帰ろう」
コクリとうなずくすずなが翼に視線を移す。
「たいしたことじゃなのに」
柔らかそうな表情を浮かべるすずなを見て翼が嬉しそうに頬を緩める。
見てるこっちが照れくさくなる相思相愛の雰囲気。
これを見せつけられたら何も言えなくなる。
彼女達の悔しさが嫉妬心に変わってもしょうがないぞッ。
この件があって以来、すずなをいじめる生徒はいなくなって、翼に告白する女子もいなくなった。
二人の学校生活が穏やかになった分、佑の周りが賑やかになってる。
コッチがだめならあっちってあまりにも簡単過ぎないか?
英徳でも群を抜く二人の御曹司に人気が向くのもしかたないと言えば仕方ない。
半分は将来のつながりを求めて英徳に通う学生も少なくないのだから。
それでいて女の子にスマートな対応が出来る佑の隣りの空白の彼女の席は虹をまとって輝いているように見えてるんだって思う。
佑が人目を引く容貌を持ち合わせていなければいいのに。
鼻が少し低いとか・・・
目が一重とか・・・
背が低いとか・・・
「厄介なの苦手なんだよな」
鼻筋の通った黒曜石の瞳。
整えられたクッキリとした眉にわずかにかかる柔らかそうな前髪。
思い出したようにうっすらと唇が開いてクスッと笑う。
笑うと普段より幼く見えて可愛いって思う。
佑の温かみのある笑顔はやっぱりこの顔だから似合うんだよね。
「苦手って?」
不細工な佑がいいだなんて思ったことを誤魔化しながら慌てて佑に言葉を返す。
「女の子と付き合うとめんどくさいからなぁ」
佑がため息交じりにつぶやく。
「さっきの告白、断ったの?」
佑の返事を待つ時間が長い。
佑の声が聞こえるまで心臓がドクンと高鳴ってくる。
「ああ、今は誰とも付き合う気が無いしね」
「舞程度の付き合いが楽でちょうどいいよ」
「私程度って何よ」
本気じゃないちょっと拗ねた声。
怒ったように声を出さないと、ホッとした感情を佑にさらしてしまいそうで恥ずかしい。
「気を使わなくていいし、どこか行こうって言わないし、いつもの俺で自由でいられるしな」
「それって、私を女として見てないって事じゃん」
「舞は特別って思ってんだけど」
少し首をかしげて鼻先10㎝で屈託のない笑顔を佑が見える。
息が触れあう距離に照れる様に思わず身体を後ろに引いた。
「佑もしっかりあきパパの血を引いてるよね」
なんで?って、佑の瞳が丸くなった。
何気ない仕草に、何気なく女の子が喜びそうな言葉を優しげな雰囲気でつぶやく、そんなとこ。
大抵の女の子はきっとそれだけで自分は特別だと幸せな気分にさせられるよ。
気が付いてない涼しげな顔はむちゃくちゃ腹が立つ。
それでいて、クスぐったい思いが頬をくすぐる。
佑の「舞は特別」って、言葉が心の奥にすっと染み込んで胸が躍る。
今日はその言葉だけで幸せに眠れそうな気がした。
楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
アーティーチョーク様
つくしの教育の賜物!
そう言ったら司が拗ねそうですけどね。
なんとなく子供達は両親の性格をそれぞれ受け継いでますよね。
どうなるのかの恋模様♪
祐 様
拍手コメントありがとうございます。
いろんな話を連載してるのは気が多すぎるんですけど。
集中して1話を書く方が丁寧にかける気もするんですけどね。
次はどれ?と言う楽しみ方でご訪問いただけるのは嬉しいです。
御付き合いありがとうございます。
みぽお様
舞ちゃんもモテるはずなんですけどね。
手を出してくる男の子が現れたら佑君はどうするのでしょう。
ちょっと先のお話のネタバレになりそうなので今回はこの辺で。(^_^;)
まめすけ様
ヤッパリ二人の子供♪
確かにつかつくとはえらい違いの高校時代ですね。
リクありがとうございます。
短編では書けそうもない内容なので次回の新連載で~♪
結婚前のどの辺でいきましょうか?
司が大学を卒業する前?後?
つくしが10代?20代?この辺の設定でお話が変わってくるかな。