Perfect dungeon 23
*コツコツとエントランスに響く靴音。
周りを取り囲む屈強な男たちの訓練された規則的な足音が俺の歩みに続く。
どう見ても異国の風貌の浅黒い肌。
物差しを背中に刺したままの垂直さの背中が俺を取り囲む。
俺があごひげとサングラスで変装しなくてもこいつらの方が人目を引くことは間違いないと思う。
「おい、聞いたか?代表が行方不明だって噂」
「さっき、秘書が連絡取れないとか話していたの聞いた」
「俺は出張先に現れてないって聞いたぞ」
どうやら西田が行動を開始したらしい。
俺の不在を情報を流してるってことは、不穏な動きをする相手に目星がついたってことだ。
つーか、こんなとこまでひそひそと噂をする社員ってやばくないか?
誰が聞いてるともわかんない会社の玄関で交わされる会話。
次の日の株価に反映したらどうする。
それも西田の許容範囲かもしれない。
シレ―ッとした顔で「代表なら挽回できます」とかなんとか能面がつぶやく場面を想像してしまう俺。
完璧にあいつを蚊帳の外に置いたペナルティーを与えられてる。
少しずつわざと漏らしてる情報から次に敵がとる行動は、会長のお袋を追及して会社の権限を握ろうと前面に打ち出してくるはずだ。
そこがねらい目。
跡継ぎの俺を狙ってうまくいったと思ったところで実権を握ろうとするはず。
息子の俺がいなくなったことで意気消沈気味のお袋を、素早く取り込んでしまいたいはずだ。
後継者がいなくなったことでお袋も扱いやすいと考えての今回の敵の行動。
ここまでは想像がついた。
俺がいなくなったくらいで鉄の女と言われたおふくろがいきなり老け込むのは想像できないけどな。
あのお袋なら100歳すぎまでも生きて道明寺財閥に君臨する気がする。
「代表の就任で勢いを取り戻して事業もUPしてきてるのに、ここで、代表に何かあったらこの会社どうなるんだ?」
「後継者問題が持ちあがるってことか?うまくやらないと事業にも影響するぞ」
「後継者といえば、まだはっきりとした情報じゃないけど、どうやら代表の婚約者・・・」
聞き耳を立ててた俺に気が付いたように急に耳打ちのひそひそ声に変わった。
婚約者って、牧野のことだよな?
西田とおふくろは牧野を巻き込むつもりか?
俺はあいつを巻き込みたくないから秘密裏で動いた。
まあ・・・マルクの国の大使館主催のパーティーにお袋が牧野を伴ってきた時からきな臭い感じはしていた。
だからその婚約者がどうした!
何時もの俺なら速攻で噂話をしてる社員を睨んでしゃべらせるところだが、今はなるべく接点を作らない様に息をひそめてる。
西田に説明させれば済むことだ。
チラリと投げかけられるすれ違う社員の視線を素通りして最上階まで続くエレベーターに乗り込んだ。
「ようこそ」
たくっ。
これ見よがしに澄ました顔でわずかに頭が下がる。
執務室前にSPを待たせたまま西田に促されるままに奥の部屋に続くドアが開いた。
使い慣れたはずの自分の漆黒のデスク。
左端に設置されたPC。
埃一つ落ちてないデスクの面が、照り輝いて俺と西田の姿を映し出す。
主不在の時間の経過を俺に見せつけてる。
西田だけじゃなく無機質のデスクまで俺を責めてやがる。
「俺を、呼びつけたってことは状況に進展があったってことだよな?」
革張りの椅子に腰かけて、デスクの上に足を投げ出して西田を睨む。
腹の上に掌を組んだ俺はいつもより横柄さを西田に見せつけてる。
態度くらいでかくしないと西田に言い様に使われてる気がしてしょうがない。
「重役の一人、沢村常務はご存知ですよね?」
「あのおっさんに俺の命を狙うような度胸があるとは思えないけどな」
すーっと西田が俺の足もとに滑らせるように差し出した写真。
20代の若い男の写真。
沢村を若くして目つきを鋭くした顔貌。
「沢村常務の一人息子、沢村達樹。なかなかの曲者ですよ」
「つくし様にも接近を見せましたから」
西田の声にデスクの上の足が床に落ちた。
「黙って、牧野に接近させた訳じゃねェよな?」
「大学では坊ちゃんのご学友が親身になってくれてますから」
いちいち癇に障る言い様。
西田も抜け目なく牧野に護衛はつけてるはずで、対応できてるはずなのに、俺がいちいちムカつく言葉を俺に投げつけてくる。
俺が騙していたことを何時まで根に持ってるつもりだ。
ここはさっぱりと忘れて、俺に協力するのが出来た秘書の条件じゃないのか?
恨めしく思う気持ちを見せると俺の負けだ!
眉間に寄りそうな眉を正位置に戻すために瞼を閉じて大きく息を一つ吐いた。
「この書類に目を通しておいてください」
デスクの前に置かれたA4サイズの紙数枚。
沢村達樹の行動の様子が緻密に記載されてる。
「あっ、さっき社員たちが俺の婚約者がどうとか噂してたんだが、なんのことだ?」
「そのうち解かりますよ」
「でわ」
くるりと踵を返して背中を向けた西田が部屋を出ていく。
「おい、こら!」
「話は終わっちゃいねェぞ」
ドアを閉める途中で西田が振り返ってじっと俺に視線を合わせてきた。
「私の予測では今日中につくし様がここに来るはずですから、静かにお待ちいただきたい」
会えるのか?
つーかもう一度会ったらばれるぞ?
ばらしていいのか?
心の中に湧き上がるいくつもの思いを瞳に込めて西田を見つめてしまった。
ここまで真剣に自分の気持ちを西田に送ったことがない。
あっーーーーー。
西田の奴。
わざと視線を外しやがった。
俺の方が気持ちわりぃぞッ。
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
匿名様
今日は久しぶりに昼過ぎのUPになってしまいお待たせしました。
更新できるかわかんなくてドキドキでした。
いよいよ次回は二人の対面!!
どうなるのかなぁ~
お楽しみに。
日々意外性を求めてお話を作ってますよ。
まめすけ 様
ここでいよいよ正体が~~~
まだまだ沢村君いは働いてもらわないといけないんですけどね。
ここでちょっともたもと更新を遅らせたら恨まれちゃうかな(笑)
気になるのはここからの2人の対面ですもんね。
おかゆ様
いよいよ次回はご対面♪
どうなるのか!!
コスモス 様
コメントうれしいです。
ドラマを見るよりこの話を読んでる方が面白いと言ってもらえると張り切りますね。
この話の逆バージョン。
面白そうですね。
司はつくしを追うのに必死になるでしょうけどね。
問題はつくしが姿を隠さなきゃならなくなる理由ですね。
どう作ればいいかな・・・
頑張ってみますね。