DNA で苦悩する 39

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「わざとじゃねえだろうな」

頬を引き攣らせて吐き捨てる声。

「俺も命は惜しい」

口ではそう言いながら穏やかな笑みを美作さんは浮かべてる。

二人の日本有数のTOPが睨みあうのが、経営のことじゃなくて子供のことって、どれだけの損失なのだろう。

「まずいことになった」

突然美作さんがアポイントもなしに現れた私の仕事場の弁護士事務所に姿を現したのはつい30分前。

「司は上にいるけど?」

今日は朝から夜まで本社を離れる予定のない相手を示す様に天井に視線を向ける。

まずい事に私を巻き込まないでほしい。

その思いが微妙な表情を作る。

「直に司に会う前に牧野を味方に付ける必要がある」

あいつと争いたくないって渋めの表情。

部屋に入ったドアのすぐ横に位置する事務の女の子が、見惚れてポッと赤く頬を染める。

その表情に騙せるなッ。

妻も子供もいるんだからね。

それでもいいって思う女性は後を絶たないって現実を目の前で表現されそうな艶。

年を重ねて魅力が増すってF4の特権だと思えてくる。

芸能事務所を傘下に置くより自分を売り出した方が儲かると思える経営者って反則じゃないか?

もしかして・・・

ヤバイって・・・

駿と舞のことだったりして・・・。

雑誌に載った写真で大騒ぎになったのはついこの前の出来事。

身元がばれるのは美作さんが圧力を最大限に利用・・活用して押さえてくれた。

俺の事務所のタレントってことで他には手を出させないようにする。

あの時はそれが最善の策だと私も司も納得したはず。

何か問題でもあったか?

「駿と舞の雑誌に載った写真を気に入った人がいて、どうしても使いたいって言ってきたんだ」

「それって美作さんが全部断ってくれるんじゃないの?」

「実際方々から二人に会わせろって圧力をかけられて困ってる」

ソファーに席を移して会話をするたびに声が小さくなって息がかかる位置まで近付く距離。

コーヒーが運ばれてテーブルがカタンと音をたてた拍子で慌てて身体を戻してソファーに座りなおした。

美作さんに圧力をかけられるってどれだけの大物?

司でもハエを追い払うようにはいかない相手ってことだよね?

櫻井翔五郎って名前聞いたことない?」

「超有名な監督じゃない!」

「その監督が今度CMを撮ることになってたんだけど、そのイメージに合うからと駿と舞を気に入ったみたいなんだ」

言葉を失ってただ、ただ、無言で美作さんを見つめた。

困った憂いのある表情に同情なんてできない状況。

「ダメ!絶対ダメに決まってるでしょ!」

思わずソファーに正座する勢いで身体を横に向けてソファーの背もたれにしがみつく。

駿はともかくとして、舞を世間に公表するなんて司が許すわけない。

最近はパーティ―に連れてくるのも嫌がってんだから。

「可愛い御嬢さんで」

あいさつで気軽に声をかけた相手を「嫁にはやらん」的な威圧感を背中に背負ったオーラー全開の司。

それを楽しげに何時もあなたたち3人は見てるじゃないかぁぁぁぁぁ。

「あいつらが監督に会ってイメージが違うと思わせればいいかと思ってるんだけど」

なんとなくそれはそれで司が「舞を気に入らないってどういうことだ!」って憤慨するのが目に浮かぶ。

「まずは司に話さなきゃね」

ため息を付きながら最上階へのエレベーターに美作さんと乗り込んだ。

話を始めた冒頭1分で眉が眉間に寄る。

そして威圧的な睨みを見せる司。

ここまでは想像通り。

「駿を呼べ!」

へっ?

いきなり駿?

直ぐにでも呼ばなきゃ司が飛び出していきそうだ。

「駿に連絡取ろうとしたけどあいつ携帯をきってるぞ」

こそっと美作さんに耳打ちされた。

取り出そうとした携帯をポケットの中でギュッと握りしめる。

早く探さなきゃ、警視総監に捜索願いだされちゃう危険性があるイライラ感を体中から発散させてる人物が約一名。

部屋の中をぐるぐる步き回るのが見えた。

「待ってッ」

水族館を出たところで聞こえた鮎川の声。

「何かあった?」

「親に呼び出しされただけだから」

「無視すると大げさにされそうだから困るんだ」

「大げさって、捜索願が出されるとか?」

冗談ぽく笑う鮎川が僕の困惑の表情が理解できたように「うそ?」と、小さくつぶやいた。

強ち冗談じゃないから困るんだ。

うちの父さん、警視総監を動かす力があるから何をしでかすかわかったもんじゃない。

人一人探すのに「警視総監に頼むか」と、軽く言える人なんだ。

ヘリよりもパトカー誘導でここまで迎えに来られたらそれこそ目立つ。

「私とのこととかじゃないよね?」

「大丈夫だと思うよ」

父さんと母さんの出会いと結婚までのいきさつを知れば鮎川は全く論外なことを悩んでるって分る筈だ。

「心配なら一緒に来る?」

「えっ・・・でも・・・」

戸惑いを浮かべた瞳が心のザワツキを移す様に動揺を見せる。

「そんなに身がまえる必要ないから」

「一緒にいたから連れてきただけ、そんな軽いノリくればいいよ」

僕の言葉にムッとなった表情を鮎川が見せる。

「私たち付きあってるんだよね?」

拗ねてるというよりは怒ってる表情の強気な視線。

僕は鮎川を怒らせるつもりは毛頭なくて・・・

いきなり彼女って連れて来たら鮎川の方が重圧を感じるんじゃないかって思ったワケで・・・。

「軽いノリで会えるわけないでしょう」

不満を主張する鮎川が真直ぐに僕を見つめる眼差し。

少し赤くなって唇を尖らせる。

嬉しそうに見せる笑顔より、時折見せる拗ねられて甘えてくる表情に実感する。

僕は・・・

本当に鮎川のことが好きなんだと。

「親に会わせたいって思うのは鮎川だけだから」

一緒に行こうと伝える様に鮎川の腕をとった。

「この先のビルの屋上にヘリが来てるはずだから」

「エッ!!」

驚く声を上げた鮎川が空に視線を移す。

前方のビルの屋上にヘリが舞い降りるのが見えた。

しかし櫻井翔五郎って・・・(^_^;)

なんで時代がかった名前になったんだろう。

時代劇の町火消に出てきそうな名前・・・この場合は正五郎?

翔君ごめん!!。

もっと品のある名前に変更したいような気が・・・

監督名募集します~

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拍手コメント返礼

haru-haur 様

駿君って小さいころからばっちり帝王学を叩きこまれて、自分は道明寺財閥を継ぐと責任感を背負って成長したと思うんですね。

ピシッと1本筋は通っている感じの長男坊。

それに比べて破天荒な翼君と舞ちゃんの次男と長女ペア~でお届けしたいと思っています。

彼女の条件も人間性をしっかり見極めて選ぶタイプに仕上げております。(笑)

癖がありそうな感触。

この名前だと相当な頑固者って感じですよね。

実はこの監督・・・話が進むと意外な展開になるんですけど、今はまだ伏せてます~♪

あはは、こんがらがるというよりはお話を想像してるときにいくつかの展開を考えて選んでいるので、こっちにの話に回そうとか思いながら別なお話が出来上がることもあるんですね。

だからいくつもの話を同時進行できるのかな。

ちょっとつらい時もありますけどね。

頂くコメントがエネルギーの元です。

やなぎ 様

櫻井君♪

SPの相葉君。

あとは、大野君に二宮君に松本君かぁ・・・

蒼君の名字に使えばよかったかな(^_^;)

蒼君って苗字つけてたんだっけ?

いの様

怒りの司をなだめるつくしに彼女連れでやってくる駿君♪

楽しみはたくさんあるんですけどそこに重点を置くと話が終らないんでもう少し書いたらいったんこのお話は終わるつもりなんです。

あっ、続きは用意してますけどね。

花粉症の季節ですね。

私も花粉症ではないのですがこの時期は少し目がかゆくなったりのどの調子が悪くなったりします。。

アレルギー反応は出てないんですけどね。なぜだろう・・・。

ことり 様

まだ少しミステリアスな鮎川さん。

シッカリ司が身元確認してくるでしょうね。

それをつくしちゃんと駿君が止めるとかで一悶着~。

いえいえ、意外な展開をご用意しております。

アーティーチョーク 様

本社は賑やかにありそうですが・・・

どう収めるかはつくしじゃなく駿君の肩にかかってるのかな。

ここでは舞、翼、佑の3人の登場予定は有りませんよ~。

蒼君たちはどうしてるんでしょうね。(笑) ← ほったらかし♪

あずきまめ 様

書いてるうちに駿君が成長してるような気がします。

ついでにF4を足して4で割ったようなタイプが出来上がってくるような気持が~。

いないですよねこんなタイプ。

恋人にしても夫にしてもいい感じに仕上がってるなって思うんですよね。

贅沢過ぎる~。

まめすけ様

写真一枚で目をつける大物監督。

それだけ魅力があるってことはすごいことですよね。

世間も騒ぐわけだと~他人事♪(笑)

今回のお話にも実は布石があるんです。

気づいたかな~気が付かないかな~。

本音は続きで『わぁぁそうなんだ』と思って欲しいんですけどね。

おかゆ

危機感なく駿君が司の前にやってきたら・・・

それはそれで大変そうですよね。

その横で「お前ら、ヤッパリ親子だな」と苦笑するあきらくんを見たいんですけど~。