Perfect dungeon 33

今回もたくさんの拍手をありがとうございます。

気をよくして続けてのUP。

司君サイドのお話になります。

西田さん日記も必要な気がだんだんとしてきています。

「早く、いい思いさせろ!」

司君が睨んでいそうだわ。(^_^;)

*

水を打った静けさ。

湖に波紋を広げるために投げいれた声の響きは静かに浸透してざわめきを生む。

これ以上待てなくて両手で扉を大きく開けた俺に、向けられた驚愕にも似た表情が引きつる様に歪む。

「ひっーーー」

空気を吸い込んで発する恐怖を貼り付けた声。

幽霊じゃねェぞ。

足は有る。

息子と共謀しといて腰を抜かすんじゃねェよ。

コツコツと靴音だけが異様に部屋の中に響く。

それは俺の存在を必要以上に現実に見せつける。

生きてたのか・・・

顔色を無くしたその口もとは声を発せないままに唇だけが動いてた。

冷ややかな視線はそのまま外れずに俺を睨み付ける。

負け惜しみの表情がグッと唇を噛んだ。

そして、沢村達樹は動揺を隠す様に震える指先を拳を作って閉じ込めるのが見えた。

こいつくらいの陰湿さが親父の方にあったら、今度の計画を事前に察知できたかどうかは微妙だ。

沢村常務が小心者で助かった。

正面の席の前に立つ牧野。

その後ろには類、総二郎、あきらが3人並んでたつ。

まるで従者。

俺達が守るなんてオーラーを出してんじゃねェよ。

ガシッと俺を見つめる視線は、意志の強さを秘めていつもより輝きを増していた。

牧野はこうと決めたらなにものにも負けない強さをもつやつ。

俺達の助けなんていらないって、一人で子供を産むことだってこいつだったらやり遂げてしまいそうだ。

たとえそれが望まない子供だとしても・・・。

俺は、おまえのために何ができる?

牧野の悩みと辛さが一気に俺の心を貫いて哀れさが増す。

こんなことなら王子の変装なんてするんじゃなかった。

そうしたら牧野を辛い目に合わせる必要もなかったはずだ。

後悔するのは俺らしくねぇよな。

今あいつに必要なのは俺の懺悔じゃない。

足を進めるたびに目の前の男の頬が引きつってくるのが見える。

全部こいつのせいだッ。

憎むって言葉だけじゃ足りない憎悪。

「ツメが甘いんだよ」

パチンと鳴らした指を合図にSPが一人の男を床に転がす。

プライベートジェットに爆弾を仕掛けた男。

洗い出した男の通帳に振り込まれていた300万の報酬。

俺を殺すにしては安すぎるだろ。

「警察ざたにはしないが生きては行けないかもな」

会社内での抗争はマイナスイメージにしかならない。

死ぬより辛いことは生かすことでも味わえるはずだ。

片手持っていたレコーダーから流れる声。

言い逃れのできない一部始終の告白。

床に転がったままの男の名前まで沢村達樹の親父は吐いてしまってる。

「最初から狙いをあんたじゃなく彼女だけにしてればよかったよ」

「その方が事は簡単に済んだ」

片側の口角を上げて棘の有る声を俺に吐き捨てる沢村。

俺だけじゃなく牧野にも手を出してんだろうがぁぁぁぁぁ。

怒りのままに沢村の襟を掴んでねじ上げる。

「ダメー」

あと少し力を入れれば絞め殺せるはずの腕に牧野が飛びつくようにしてぶら下がった。

切羽詰まった表情は必死に沢村達樹を庇ってる。

こいつがお腹の子の父親だからか?

「なんで止めるんだ!」

「こいつはお前のッ!」

俺の腕を掴む牧野の指先は白く色を変えて震える唇が「道明寺」と俺の名を呼ぶ。

牧野が心配してるのは俺で・・・

沢村を助けたいわけじゃないって真直ぐに俺だけを見つめる瞳。

牧野のは俺だけしか見てないことに気が付いた。

牧野はお腹の子の父親が本当に誰なのか知らないのか?

じゃなきゃ動揺せずに沢村と対面するなんて牧野に出来るはずがない。

牧野は自分に起きた苦しみをいったい誰に向けるのだろ。

牧野・・・

一人で悩むんじゃねぇぞ。

守ってやらなかったのは俺の責任だから。

俺は俺の一生でお前に償う。

「さっさと消えろ」

握りしめていた襟首を荒々しく離して床に転がる沢村達樹。

もう二度と見る気もおきねェやつ。

転がったのは無視すしたまま牧野の肩に腕を伸ばした。

「会議は中断します」

掴もうとした矢先に響くおふくろの声。

広々とした会議室に残された俺達。

その周りにはいつもの仲間とおふくろと西田が顔をそろえる。

「待たせたな」

「待たせたって、何よッ」

振るえてる声の奥に不機嫌さが見える。

「心配すンな」

「心配って・・・?」

眉を眉間に寄せたしかめっ面が俺を食い入るように見つめる。

「俺が父親になるって言ったろう?」

牧野の両肩に置いた指先に力を込めて牧野の表情を覗き込む。

「父親になるって言ったのって・・・王子じゃ・・・なかっ・・・」

「えっ?」

数秒の沈黙がすげーなげッ。

キョロキョロと落ち着きなく動く眼球。

目が白黒するって本当にあるんだなと感心気味に牧野を見下ろしてる。

そして、瞬きが増えて数度大きくパチパチと睫毛が上下してキョトンとなった表情が出来上がった。

「まままままさかッ!」

牧野の心音が腕を伝って俺に響く。

「俺だって、解からな過ぎだろうが」

軽い調子で口笛を鳴らす感覚で声を出す。

ここは明るくした方が牧野も楽なはずだ。

「冗談じゃないわよッ!!!」

えっ?

今度は俺の方がきょとんとなる。

わなわなとふるえる指先がギュッとなって牧野が腰のあたりで拳を作る。

振るえ腕はそのまま顎の下あたりまで上がって、ますます固さを増す拳。

気がつくと目の前にその拳が近づいて俺の頬にぶちあたった。

なんで俺は殴られたのだろう・・・。

わかんねェ―――ッ!

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拍手コメント返礼

まめすけ様

今日もお早いコメントありがとうございます。

一気にこのお話を最後まで仕上げようと思ったんですけど、布石も気になりますよね?(笑)

お待たせしますが

ぼちぼちと~Upしていきます。

妊娠はmだ誤解したまま~。

少しずつバラしていかないと楽しみがなくなるぅ~。← どこまで遊ぶつもりなんでしょう(笑)

王子はどうばらそうかと悩んだんですけどね。

流れ的にはこれが自然かなとひねりも何もない結果となりました。

これ以上やらかすと本当に司君に化けて枕元に立たれそうで~。

感動の再会させたかったなぁ・・・(笑)

いの 様

普通、すれ違いって心がドキドキして歯痒い感じになるんですが、この二人の場合はニンマリなるのはなぜでしょう?(私が仕向けてるんですけどね)

どこまでも交わらなくても最後はガッツリ結びつくのでしょうけどね。

だからなにをやらせても楽しめる♪

楽しみはこれから司君に降りかかるであろうお仕置き~。

あずきまめ様

花男のドタバタ感が好きで~これも潤君が演じてくれた司のイメージがいまだに頭のなかで演じ続けてるからなんですけどね。

最初の冷酷に見せる表情がつくしと出会ったから変わっていく感じとか好きだったなぁ~

あのイメージが強くて大人になりきってない拙宅の司君です。

つくしちゃんの拳の思いは次回にばっちり書かせてもらいます♪

妊娠の誤解も解けるのでしょうか? ← 聞いてどうする!(笑)

たま様

司を殴る暴挙?刃向うことが出来るのはつくしだけですよね。

道明寺家での存在感抜群でしょうね。

楓さんも司のことは任せたわ。という心境になるんじゃないかしら。

手が付けられない凶暴な息子でしたもんね。

おかゆ

やっと、やっとですよ~

王子=司。

結構長かったなぁ・・・。

ことり 様

西田さん日記だけじゃなく、タマさん、楓さん日記の要望多いんですよね。

じつは、一番書くのが難しいのが楓さん日記なんです。

何度挑戦して挫折したことか・・・(^_^;)

いつかは書きたいとは思ってるんですけどね。