僕らはそれを我慢する 11(完)
佑君が登場してから、生まれるまでの話をというリクエストをいただいてます。
あきら&葵のカップルもシッカリと皆様に受け入れられて終わりそうもないんですよね。
つかつくとはまた違った味合いがあるカップルのお話は捨てがたいものがあります。
次に登場する時は佑君誕生秘話になるのかしら・・・
*道明寺経営のホテルメープル。
英国風庭園の奥に見える白いチャペル。
わずかにそよぐ風が木々の合間を抜けて木の葉をそよがせる。
その庭園が180度に見渡せる3階控室。
指紋一つついてない窓からそれを眺めるウエディングドレスの葵。
寄り添う様に後ろから近付いて葵の背中越しに両手の指先を俺の指先が包み込んだ。
「こんな、短期間で二度もウエディングドレスを着る羽目になるとは思わなかったなぁ」
俺の手のひらの中でキュッと力を入れたまるまる指先。
「俺は嬉しいけど」
首を逸らして俺を見上げた顔はいつもより綺麗で輝きを増す。
艶やかな色合いのルージュも今日はやけに目についてキスしたくなる。
「式前に、花嫁姿見たらいけないんじゃなかったけ?」
「式は初めてじゃないからいいんじゃないか」
「祭壇の前で、私を見て嬉しそうに見つめるあきらが見たかったんだけど」
「見慣れたからそれはない」
「ウソでも、綺麗だって言ってくれなきゃダメでしょう」
俺と向き合う様に葵の身体が半回転して不満げな表情を作る。
「ウソだ、綺麗」
唇が触れた耳朶から見る間に紅く浸食されていく肌。
動揺気味に照れるくせに俺にせがむ葵が俺の胸の奥をくすぐる。
軽く触れた唇。
「ダメッ」
拒むようにわずかに胸元から身体を葵が引いた。
「化粧がくずれる」
「くずさなきゃいい」
首筋に這わすキス。
胸元のふくらみの形に添わせる指先。
「キャッ、ダメだって」
葵の焦った声も赤く色づいて、それが面白くて遊びたくなる。
「ちょッ、本気にならない・・っでよ・・・ッ・・・」
葵も感じてるって分るんだけどな。
俺に煽られて零れる吐息。
これ以上は俺も遊べなくなる。
気を逸らす様に窓の外で向けた視線。
白く旋回するように動くモノが目に付いた。
白い馬の四頭立ての馬車。
シンデレラのために魔女が準備したかぼちゃとネズミを変身させた絵本の中から抜け出した馬車のよう。
「あれに乗らなきゃいけなかったのよね・・・」
固まった俺に気が付いたように葵が顔だけを外に向ける。
「もともとおふくろと妹達が乗りたかったんだからあの3人を乗せとけばいいんだ」
馬車の窓から上機嫌に手を振る母親が見えた。
母親たちがあの馬車から降りて式場に入ったらどれだか注目を浴びるのだろう。
降りてきたのが俺と葵なら司たちに一生からかわれる気がする。
お袋と妹たちなら苦笑しながらも納得してくれるって思う。
「葵の親父さんと兄貴は驚くよな・・・」
「金持ちのすることは理解できないって納得すると思うけど・・・」
馬車を眺めながらタラリと冷や汗を二人で流してる気がした。
祭壇の前でオヤジさんの腕をとって葵が進む。
右手の上腕に目を伏せたままの親父さんを葵が支えるように歩く。
娘を嫁にやる親父の心境は総二郎が葵の腕をとって俺の前にやってきた南の島の時よりも結婚するんだって気持ちを高めてくれる。
神父の前で二度目の結婚の誓い。
葵となら何度でも誓えるってそう思う。
重ねた唇は一度目の誓いのキスより甘い気がした。
シャボン玉と花びらの舞う中を招待客の間をぬって歩く。
どんなに人がいても目を引くのは司に総二郎に類。
あっ・・・
最前列にぶんどっていたおふくろもあいつ等とは違った目立つ存在だった。
普通親族は目立たない様に後ろにいるもんだろうがぁ。
後ろにいても一緒か・・・。
だから、ブーケトスでお袋が前に出てきてどうするんだ。
頭を抱え込んだ俺の目線の上を円を描いて投げ落ちるブーケ。
受け取ったのは双子同時で・・・
「次は私たちだ♪」
仲よくハモる二つの声。
ケンカにならずに良かったよ。
人垣が途切れた前の前に4頭立ての白い馬車。
今度のは天井のないオープンなもの。
二つあったのか?
「これなら文句ないわよね」
これ乗ってどこにいく?
披露宴会場まで歩いても数分のホテルの会場。
「ホテルの周辺は司が交通規制かけたらしいぞ」
総二郎がニンマリと笑って俺の身体を馬車に押し込んだ。
「俺の時より豪華だぞ、感謝しろ」
ふてぶてしさ満載の嫌みな顔。
感謝できるか!
「あきら、似合ってるから」
俺より馬車の担当は類じゃないのか!
「ホテル内で終るってことでどうだ?」
「「「ダメだ」」」
悲惨な声にダメ出しの三つの声が返ってきた。
お前ら!覚えっとけよ!
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
あずきまめ 様
つかつくと違ってこの二人は問題があっても落ち着いてるんですよね。
性格の差かしら?(笑)
最期のセリフ「お前ら!覚えっとけよ!」いいつつ、しょうがねェなって感じで受け入れる懐の深さがあきらくんにはあるような気がします。
あるあるで終わらせたお話でした。
ことり 様
この穏やかなカップルを手放すのは惜しいんですよね。
つい想像してしまいます。
佑君誕生まで何かもうひとつドラマが欲しんですよね。
そう簡単に誕生させないぞ!!!(司の声?)
いの 様
引きそうな結婚式でもあきら君なら結局受け入れちゃいそうですよね。
アミューズメント満載の結婚式なら招待された方は楽しめそうな気がします。
もしこの結婚式に招待されたら・・・
破産しそうですよね。
ココア様
次々に終ると淋しい気もするんですがホッとするんですよね。
そして頭の中はべつなお話に浸食されていく♪
頭の分割は軽くなっていますので脳が軽くなったかな(笑)
脳が軽くなったら困るんですけどね。
それじゃなくてもボケてきてるのに・・・<(_ _)>
拓君のお話もただいま構想中です♪