永遠のラビリンス 5

いま、頭の中が別館でお知らせした新しいお話に浸食され始めてます。

こうなるとうずうずしてしまうんですよね。

他のお話が考えられなくなる異常事態に陥りそうです。

手直しができたら公開できると思います。

「なにしてんの」

腰に腕を巻きつかれたままの俺は一ミリも動かないままに俺を見下ろす。

牧野の力ってこんなもんなんだよな。

普段の俺はわざと牧野にやられたふりをする。

必死になる牧野が可愛くて、面白くて、クルクル変わる表情を見てると気が抜けるっていうか、力が自然と抜けてくる。

だからさっきもマネキンの取り合いで倒れ込んだんだ。

そして今こうなった。

牧野が俺で、俺が牧野。

簡単に外された俺の腕からすり抜けた牧野はまたすぐに俺の前に戻って来た。

手にしてるのはネクタイ。

左右でネクタイの両端を持ちピンと張る。

ビシッ!

響いた音は鞭のようなしなやかさを示す。

「なにする!」

手を縛って自由を奪ってとか・・・

あっ・・・それは一度はやってみたい俺の願望。

牧野が見せる形だけの抵抗を抑制して俺の自由に・・・

今はそんなことしなくてもいいんだよな。

そんな考えが頭に浮かんで首を折った視線の先に見えた膨らみ。

意外にあるんだよな。

俺の手の平にすっぽりと収まる柔らかな膨らみ。

女は好きな男に肌を触れられて、どんな風に感じるのだろう。

好奇心が指先を胸元へ押し上げた瞬間に目の前が真っ暗になった。

えっ?

「なにしてんだ」

「ネクタイはそう使うもんじゃねえだろうがぁ」

頭の後ろでネクタイがキュッと音をたてて後頭部を締め上げた。

「やらしいことされたら困るもん」

「やらしいことされて喜んでるだろうが」

ボクッ。

足蹴にされた。

目隠しをされた上に足でけられれば簡単に体のバランスを崩す。

「お前の身体だろうが、大事に扱えッ!」

「それくらいじゃ怪我しないわよ」

ムッとした声に「わよ」をつけんなッ。

気色わるっ。

俺の声だぞ!

「ネクタイ外したら承知しないからね」

承知しないってどうする気だ。

なんもできねェと思うけど。

目隠しされてるほうがなんとなくひ弱な俺を見ずにすむ。

脱衣所に連れて行かれた俺の身体から服が脱がされる気配。

現状は俺が牧野を脱がしてる構図。

脱がせてるのは俺の手で見てるのも俺の瞳。

勿体ねェッ。

なんも抵抗もなくされるがままの牧野だぞ。

なんで俺は今その牧野の中に入るんだよ。

視覚の感覚が閉ざされた中で生地のすれ合う音と肌にわずかに触れる感触。

下着を脱がされた瞬間に肌にヒンヤリとした空気が触れた。

「足ッ」

えっ?

「動かさなきゃ脱げないでしょ」

命令口調で聞こえる声。

あっ・・・

「なあ、おまえはなんも感じないのか?」

「なにが?」

「服を脱がせてんの」

「変な感覚だけど、見慣れたものだから」

「つーか、お前を脱がせてんの俺の手だし、見てるのも俺の目だよな?」

ピタッと動きが止まった。

「俺もお前にさわられるのヤダから俺が脱がす」

無言のまま俺を見つめてる視線だけを感じてる。

「えっ、待って」

「俺が脱がさなきゃ不公平だろう」

「お前に脱がされるってこと今までなかったしな」

わっ!

ぎゃー!

いつの間にかネクタイの結び目も緩んで視界が広がる。

シャツのはだけた胸元。

しりもちをつく形で転がってる俺の牧野。

シャツを脱いで俺のめがけて投げつけて後ろに後ずさりする俺の牧野。

「他人から見れば、俺が牧野に襲われてるみたいだよな」

「変なことしないでよね」

「ばーか、自分を見ても興奮するわけねえだろう」

「先に入るから来いよ。風邪ひくぞ」

そのままスタスタと俺の牧野の前を通り越して湯船に飛び込んだ。

ものの数秒で服を脱いだ牧野の俺が浴室に入ってきた。

鏡に映る自分を見てる感覚。

落ちつきもなく動揺してる自分を見るのはあまり面白いものじゃない。

なにげに視線を外して浴室の中に視線を落とす。

「そんなにじろじろ見るな」

湯船に飛び込んだ牧野の俺がガバッと胸に俺を抱きこんだ。

苦しッ。

手加減しろ。

窒息するぞ。

俺っていつもこんな思いを牧野にさせてるのだろうか?

今度から気を付ける。

だが・・・

何時になったら戻れるんだ。

このままだったら全然楽しくねぇじゃねェか!

バシャバシャとお湯を叩く俺に気が付いて牧野が力を緩める。

「ごめん・・・」

「ゲホッ」

「死ぬかと思った」

「だから謝ってるでしょ」

拗ねた表情の俺が俺を見おろしてる。

夢の様な異世界に紛れ込んだ様な奇妙な感覚。

この感覚に慣れるのはなかなか難しい気がした。

「俺達、大変なことになってるんだな」

あきれた表情がカッとなって「今ごろ気が付く!」と言い放つ怒号。

ザバッと俺の牧野が湯船に身体を沈めた瞬間に大きく水しぶきが俺の牧野の顔を濡らした。

そんなに怒んな!

周りに勘付かれない様に俺らしくするのを忘れるなッ。

それが最大の目標で難関。

出来るかな俺達。

押し寄せる不安なままに互いに目を合わせてため息がどちらからともなく漏れた。

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あずきまめ 様

入れ替わってしまった不思議な感覚。

もし司と入れ替わったら、モテる感覚とセレブな生活をめちゃ楽しんじゃいそうなんですけど~。

つくしちゃんの優しさでカッコいい司が女性と接したら、別な問題が勃発しそうで面白いと考えております。

つくしちゃんの司からは友達がいなくなりそうですけどね。

ぴりぴりろう様

私も最初は「なんだこりゃーーッ」と思いました。

FC2って障害多いのが難点なんですよね。

お騒がせしました。