永遠のラビリンス 8
さ~あ、いよいよ入れ替わってお仕事!お仕事!
どうなるのかな?
西田氏の心境はいかに!
なぜかここが一番気になるんですけど~~~~~~~。
「なに突っ立ってるんだ」
広々としたチーク調のデスクの上の書類から目を離した道明寺。
いつもなら堂々とした長身が椅子にすわってペンをはしらせる当たり前の光景。
それを今私がやっている。
高級なデスクが似合わない。
道明寺ならスチール製の安い机もきっと高そうに見えるはずだ。
その横で何をすればいいかわからないまま道明寺の私は立ちすくむ。
目の高さの位置が違うとこんなにも視野が変わるものなのだろうか。
いつもより高い位置で見渡す視野はいつもより広く広がる。
首を少し動かすだけで周りの状況を視野に収められる。
いつもより半数は少ない歩数でデスクまでたどり着ける歩幅。
足が長いのを強調されてる気がする。
腰から下を眺めて、ここまで長くなくていいけどあと5センチ伸びないかなと、自分の姿を眺める。
私の頭のてっぺんが撫でやすそうな位置に見えた。
書類には私が道明寺司のサインをして朱肉の印字を押し続ける。
確かにすぐに私が道明寺のサインに似せて書くことは無理だ。
その性格の様に曲がりくねって勢いに乗る読めそうもない文字。
どう読めば道明寺と読めるのだろう。
あのサインを真似するだけで1日以上は練習が必要な気がしてきた。
「代表」
執務室に再び姿を現した西田さん。
「会議の時間です」
「分った」
なにげに椅子から立ち上がった道明寺。
私が会議に出てどうするの!
自分の置かれた立場を忘れてないか?
「つくし様が会議に出てどうするのです」
そうのたまう西田さんの声はいつもにもまして冷静過ぎる。
「会議に、俺になってる牧野が出ても進めようがないだろうがぁ」
「つくし様になってる司様が出席されても進めようがないと思いますが」
「それじゃどっちが出ても変わりねェということだろうが、会議を伸ばすことを考えた方がいいんじゃねぇのか」
ふてぶてしく愚痴る態度を私でとるな。
我儘で嫌な傲慢さの目立つ自分を見る羽目になるとは思わなかった。
私に対する人の印象はきっと書き換えられる。
道明寺の財力ならそれも許される。
今までも道明寺だから許されてきた結果が暴君化した道明寺だ。
「司様とお付き合いが出来たからって、何か勘違いしてるんじゃないのかしら」
「なに様になったつもり」
高校時代から蔑まれてきた私にこんな意味合いの嫉妬が上書きされるに違いない。
こんなの私の道明寺が聞いたら「俺様だ!」ふてぶてしさ丸出しで凄むと思う。
大学でますます孤立しそう。
大学に入れ替わったまま行くのは危険すぎる。
会社には西田が入るけど大学で私がフォロするには私の道明寺では貧弱だ。
となるとF3?
いやいや、ダメに決まってるでしょう。
もっと恥ずかしいことになりそうな気がする。
ぞぞっと寒気が足もとから胸元まで導火線をはしる火のごとく上がってきた。
「今回は報告だけですから、代表からは分ったと一言だけで結構です」
えっ?
私が出るの?
私の道明寺から道明寺の私に移った西田さんは事もなげに呟く。
分ったって一言だけって、言っても本当にそれだけ?
道明寺の会議のイメージ。
ふてぶてしく説明の途中でこれ以上聞くのは時間の無駄!だとでも言う様に横柄な態度で威圧感を見せつける。
全ては自分で納得するまで独裁的に内容を進めていく。
みたいな、イメージなんですけど・・・。
訝しむ社員が出てこないって保証は有るのか?
「1時間ほどは、代表はこちらで書類と格闘していただきたい」
「会議の結果は後程文章で報告します」
西田さん、道明寺を操ってないか?
「はぁ?俺はここで一人でいるのか?」
「つくし様は代表の婚約者です。執務室に一人でいても訝しむものはいないはずです」
道明寺の仕事が終るのを待つ。
今でもそれは確かにある。
これはどう説明しても道明寺の仕事が終わるのを待っているにしては早すぎだ。
朝っぱらから一緒に道明寺といるのだから。
それに私が道明寺の会社に来るのは強引に帰宅する方向を変えさせられた結果が多い。
忘れてるとは西田さんにも言わせない。
「司様が二人いらっしゃるのと一緒ですから仕事が進みます」
へ?
なに?
それって・・・
表向きの仕事は私がして、人に会う必要がないところでは私の道明寺が仕事をするということ?
秘書の仕事を私の道明寺はするんじゃなかったのか?
西田さんが私をここに押しとどめたのも二倍になる能率に食指が動いただけ?
「このまま、代表が他人の目に触れたら恥ずかしい思いをするのはつくし様ですから」
西田さんの視線の先にデスクの上に左の脚に右の足を乗せて、椅子に背中をもたせて、腕を組む私の道明寺。
太ももの先にあるものが見えてる・・・。
なんて恰好!
ツカツカとデスクの前に進んでデスクの上に乗っかった足を剥がして下に下ろした。
「なにすんだ!」
「なにすんだは私のセリフ」
「下着見られるじゃないの」
キョトンとした顔がスカートの先をたどって頬が高揚したのが分かった。
そう、恥ずかしんだから気をつけてよ。
「西田、見たのか?」
ギロリとした視線が西田さんに向かう。
「今度見たらゆるさねェからな。こいつの下着を見ていいのは俺だけだッ」
握りしめた拳がブルブルと震えてきた。
このバカ!
自分で見られるような体勢をとって西田さんに文句を言ってどうなる。
正すのは自分でしょ。
「道明寺にも見せるわけない!」
怒りをぶつけられたデスクが拳で大きく音をたてる。
「見せないっていくらお前が言っても今は俺の身体だ」
勝ち誇った表情で私の道明寺がつぶやく。
気が付いた時には道明寺の身体で私の身体を背中から羽交い絞めにして力を入れていた。
「私の身体から出ろ!」
出てくるわけはなかった・・・。
「ゲッ・・・」
代わりに喉から押しつぶされた声が出てきた。
来たよ~の応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
あずきまめ様
自分からチラ見えの状態を作ってるのに西田さんに威嚇してる司君。
そこまでは西田さん自覚してる気がします。
男の人がスカートはいたらどんな気分なんでしょうね。
かわいいなんて思ったらそっち系?
私も入学式以来スカートを着てませんよ~。
パンツの方が冬は温かいですからね。
愛流ママ 様
応援メッセージありがとうございます。
PWは返信しました♪
いの 様
仕事の能率はしっかり西田さんの手中の中にあるって感じです。
仕事場面はこのくらいでもっと楽しいお話につなげたい♪
ここはやっぱり西田さん日記が欲しくなりますよね?