いくつもの嘘を重ねても 2
永遠のラビリンスではつくしと司が入れ替わっています。
頂くコメントで、別な登場人物と入れ替わっていたらという感想をいただきました。
そこで、誰と誰が入れ変わったお話に皆さんは興味があるか投票を作成しました。
1位の結果は別館でお話をUPしたいと思っています。
投票は司君と類君の入れ替わりが1位を獲得しました。
一瞬宙に浮く感覚はそのまま地の底に吸い込まれる感覚へと変わった。
ガードレールを突き破り車ごと崖の下に投げ出され、目の前に海が広がる。
それが最後に見た景色。
「・・・かさ・・」
「司!」
気が付くと俺を呼び覚ます重なるいくつもの声。
うるせーんだよ。
もっと優しく起こせ。
牧野が俺を呼ぶ時みたいに。
今朝ベットの中で感じてた陽だまりの中でうたた寝する様な心地いい温もり。
そこに戻してくれないだろうか。
牧野・・・。
ゆるゆると瞼を開く。
白く差し込む光に慣れると、ぼやけた顔がいくつか俺を見降ろしてるのが分った。
その中に牧野がいない。
なにげに動かした腕は鉛の様に重くて思うように動かない。
白い包帯が二の腕から手の甲までを包み込んでいる。
寝返りを打とうとするだけで身体の節々に痛みが走った。
左腕につながる透明な管に薄黄色に色付いた液体が数秒に一滴の割合で落ちる。
病院・・・
「良かった」
ベットの上にくずれこむようにしてつぶやいたのは日本にはいるはずのない姉貴で、その横に立つ見慣れたやつらの顔。
それが辛気臭い顔を3つ並べてる。
牧野!
そうだ、俺はあいつと車に乗っていて、海に落ちたはずだ。
「・・き・・のは・・・」
大きく叫んだつもりの声はカラカラに乾いた口内に張り付いて発声を拒む。
「まだ、起きるのは無理よ」
痛みに耐えながら半身を引き起こした俺はすぐに姉貴にベッドの上に押し付けられた。
姉貴の力に負けるなんてすげーダセッ。
「3日も意識が戻らなかったんだから」
3日・・・
車の中のあいつは?
事故の様子を思いだそうとした瞬間にズキンと頭に痛みが走る。
牧野はどうなった?
「ま・・きの・・は?」
唇を大きく動かして、うまく出せない声の代わりに一音ごとに唇で形を作る。
聞かなくてもすぐにお前らなら俺の気持ちが汲みとれるはずだよな?
「司・・・」
どいつもこいつも神妙な顔で言葉を濁す。
聞かなくても牧野に異変があったって思わせる態度。
俺だってこの怪我だ牧野が無傷なんて思えるほど俺はバカじゃない。
「どけ!」
勢いで起き上がらせた身体。
さっきまでの痛みがウソのように身体から消えた。
それは一瞬だけで、起き上がった身体を自分で保つのは無理があると身体が揺れる。
「無理するな」
左右から総二郎とあきらの腕が俺を支えられた。
お前らのすることはそうじゃないだろう。
「牧野は、別な病室に入るのか?」
目だけはどうやら感情のままに凄むことができる。
「どこだ?」
「興奮するな」
「俺を落ち着かせたいなら牧野のところに連れて行けばすむだろうが」
「落ち着けって」
立ち上がろうと力を入れたはずの足はぶるぶると筋肉が痙攣するだけで俺の意思を阻む。
「動けるわけないでしょう、司も重傷なんだから」
姉貴は腰を落として下から覗き込んだ愁いの帯びた瞳を俺に向けた。
姉貴のそんな瞳は見たのはもうずいぶん前だ。
俺がまだおふくろを恋しがっていた遠い昔。
「司、お母様は仕事でお帰りにならないの」
何度となく裏切られて母親を恋しく思う気持ちは憎しみにか変わった。
お袋の俺に向ける態度は今も変わらないらしい。
今さらお袋がどんな態度をみせようともなんても思わないけどな。
姉貴が憐れむような表情を俺に見せるには牧野のこと以外に有る筈はなく、バカげた考えが頭によぎる。
「牧野になにかあったのか?」
振るえる声に同期するように心臓がドクドクと音をたてる。
俺の考えを否定する言葉を姉貴から聞きたい。
牧野はこの病院のどこかにいるんだろう?
あいつもベットから起き上がれないだけ。
それなら早く目覚めた方が側についていたいって思うはずだ。
だから俺を早くあいつの元に連れて行け。
「司、よく聞いて・・・」
姉貴の言葉に反応して類がグッッと唇をかみしめるのが見えた。
類の心痛な表情が最悪だと告げてるように俺の心臓を身体の中からつかみだす。
牧野・・・
堪えようのない不安。
「見つかってないの」
見つかってない?
あいつは俺の隣りの助手席にいたんだぞ!
「必死に捜索してるから」
車が落ちた崖の下には広がる海。
牧野は海の中に投げ出されたままってことか?
俺が意識を取り戻すまで3日。
捜索の意味は無情に重い。
周りから聞こえてきた声はそのまま耳を素通りしてざわめきの様に聞こえる。
頭の中に入ってこない言葉がそのまま通り過ぎる。
「ヲォ――――ッ」
引き抜いた点滴の痕から流れる血液。
立ち上がった俺を身体ごと押し付けてくる類、総二郎、あきら。
「放せ!」
「落着け」
「行かせろ!」
「無理だって」
「俺が探し出す」
「今のお前じゃ足手まといになるだけだろうがぁ」
バタバタと飛び込んできた白衣の姿の奴ら。
腕にチクッと痛みを感じた瞬間に意識が遠くなった。
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
まい2様
ずどんと場面が落ちて司君の苦悩。
早く終わらせて上げたいのですが、まだまだ先は長いですよ。
重点を置いてこのお話をUPしていきます。
サワコロ 様
いきなりシリアスな状態で雰囲気は重いですが徐々にとけていくとは思います。
そこまで辛抱したらいつものパターンが待ってるはず。(^_^;)
入れ替わりのお話はラビリンスとは切り離したお話を短編で別館にUp予定です。
Gods&Death 様
Pcで見てる限りブログサーバーの調子は良くなってるんですけどね。(^_^;)
スマホのテンプレートかしら?
時間があるときに変更してみます。
ココちゃん 様
まだ泣くには早いかもしれませんよ。
ことり様
切なくて次が読めないかもなんてぇ~。
大丈夫ですここを乗り越えれば輝かしい明日待ってるはず!
つかつくですから~
いの 様
さあここからもう少し司君には苦悩が続く展開なんですが(^_^;)
見つけたつくしは記憶を失う設定になってますからね。
司が記憶を無くしたときつくしが頑張った分のお返しはしなくっちゃ♪
かーちゃん 様
花男再放送は司が記憶を失った回だったんですね。
確かに海ちゃん邪魔って何度見ても思いますよね。
やなぎ 様
涙がホロリ。
もう少し切ない状態が続きますのでハンカチのご用意をお願いします。
なんてコメント書いて悲しくなかったらどうしよう(^_^;)
たくかずめぐ 様
期待に応えて泣かせます!
誰もそれは期待してない?
最近司君応援隊がちらちら出没してるんですよね。
佳扇 様
早く続きが見たい。の、コメントうれしいですね。
そう言われるとUPしたくなるんですよね。
困っちゃう(^_^;)
はなこ様
ほぼ毎日の訪問うれしいです。
ありがとうございます。
このお話書いてるときは頭の中ではJに演技してもらってます。
切ない苦悩する表情にそそられてしまってます。
Jの目で見せる演技っていつもうまいっておもちゃうんですよね。
未だに道明寺のあの抜群の存在感とつくしちゃんに会って変わっていく心情は原作とぴったりだったと自讃。
また想像して頭の中でJに動いてもらって続き書いてきます♪
あずきまめ 様
そうそう早く身体を直さなきゃお話が先に進みませんよ。
入院ネタはそう必要じゃないですからね。
早く先に私も進みたいです。
キャサリン 様
今回のお話は司君が切ないんです。
つくしちゃんが本当に帰ってこなかったらどうなるんだろうとの思いが底辺にあるんですよね。
読み終わった後の感想もお待ちしております♪