いくつもの嘘を重ねても 3
『早く続きが見たい』
『展開が気になる』
この言葉に弱いんです。
あっ、でも今回は別館でお話の筋書きは公開してますから、内容は分ってるんですけどね。(^_^;)
それでも、どうなるんだろうの期待感を持ってもらってるコメントをいただくとうれしくなっちゃいます。
週一のペースでこのお話は更新できればいいかなと思ていたんですけどね。
減らしたはずの連載が増えてしまってます。(/_;)
「やっぱり司だな」
「俺達とは次元が違う」
「牧野のことになると人間変わるからな」
全治3か月の診断は1か月に書き換えて病院から屋敷に戻った。
軽口を叩いているようでこいつらも今までとは違う淋しさを滲ませてる。
化け物の回復力。
あいつなら呆れた顔で俺を見てそう感想を漏らされそうだ。
無理やりに事故の現場に行ってから20日以上たっている。
途切れたガードレールの下は事故の痕跡を何もかも無くして海の色に日差しの光が反射して輝いていた。
感じたよりもそう高くはない水面までの距離。
確かに俺はあの時、牧野と一緒に車から離れて岸までたどり着いたはずなんだ。
この手はシートベルトを外して牧野の手を掴んで身体を引き寄せた。
開いて見つめた左手の指先。
牧野の感触はしっかりと憶えてる。
指先が震えるのは牧野を離した後悔。
途切れた記憶は断片的につながって、海上の船から海に潜って未だに捜索を続けているのが無駄なんじゃないかと思えてきてしょうがなかった。
落ちた崖の上に置かれた花束。
牧野はあのまま海の中に入るわけがない。
蹴り上げた花束は花びらを散らしながら海の上にポチャリと落ちた。
「あいつさ、夢に出てくるたびに俺を怒ってるんだぞ」
俯きながらこぼれた声は自分でも気が付くほどに淋しげに響く。
「なに落ち込んでるのよ」
牧野が口を尖らせて、怪我をしてる腕を叩かれて「ギャッ」と短く悲鳴を上げた夢の中の俺。
「牧野、大丈夫か?」
駆け寄った俺をあいつは不思議そうな表情を浮かべて見つめる。
「らしくない」
「落ち込んでる道明寺なんて、見たくないよ」
「俺だって落ち込む事くらいあんだよ」
その張本人が全く気が付いてない態度。
誰のせいだと思ってる。
俺を落ち込ませるのも、慌てさせるのも、楽しくさせるのも、そして、俺を幸せに出来るのはお前だけだろ。
「てめぇを探して夜も眠れねぇんだろうが」
「寝てるじゃん」
クスクスと無邪気な表情で笑ってるあいつは、抱き寄せた瞬間にかき消えた。
幻が夢だと気が付いた瞬間に目覚める。
ベッドに起き上がったまま暗闇の中で牧野の名を呼ぶ。
どれだけお前を求めて彷徨えばいいんだ。
もっと長く夢見せろよ。
「司、なに考え込んでる?」
入院中も屋敷に帰ってきても悪友たちは見たくもない顔を俺の前にさらす。
姉貴に、西田にたま。
きっとみんな牧野の帰りを待ってるはずで、誰一人としてはあきらめていないって思う。
あのおふくろでさえも・・・。
一度だけ病室でお袋のことを西田に尋ねた。
「お見舞いに来られないのは坊ちゃんの代わりに会長がつくし様捜索の指揮をとってらっしゃるからです」
ガキの頃みたいにすっぽかされた約束に拗ねてるわけじゃない。
牧野のことを想って・・・
考えて・・・
不安になって・・・
イラついて・・・
高ぶったままの感情を持て余す。
来てる奴らよりまだ一度も来てないお袋に込み上げる怒り。
会えば怒号しか飛び出さない気がしていた。
「司の側にはあの子がいるのが自然なのよね。と、会長はそう言ってらっしゃいました」
西田の冷静な声の中に潤んだ音色をはじめて聞いた。
お袋は、俺の代わりに牧野を探してくれてるのか?
仕事以外には興味を示さないって思っていた。
姉貴と俺も仕事をうまく回すための駒としか思ってないと思っていたおふくろ。
今、確かにお袋との絆を感じる。
怒っていた時よりお袋に気持ちを知った今の俺は素直におふくろに会えそうもない。
牧野、おまえがいなきゃ、こんな大事なことに気が付くこともできなかったんだ。
そんなお前が、俺の前からいなくるってことがあっていい訳がない。
「事故の時、記憶が途切れる前に誰かいた気がする」
男・・・
男の低い声で「大丈夫か」
聞いた・・・。
聞いたはずだ!
「救急車で運ばれた時は司以外に誰もいなかったって聞いてるぞ」
考え込む素振りであきらがつぶやく。
「記憶違いとかじゃないよな?」
「まだボケてねェよ」
否定されるの俺が嫌いだって総二郎、おまえなら知ってるだろう。
「いるはずの牧野が消えていたってこと?」
そうなんだ、類!
牧野はいたはずなんだ。
海じゃなく砂浜まで一緒に。
俺は意識がなかったから、身元確認は車のナンバーで割り出して事故の連絡がいった。
牧野と一緒だったことを周りが知るのも事故の数時間後。
この時間が何かを見失わせる結果をもたらしてるんじゃないのか?
この海岸のあの事故を起こした時間の潮の流れ。
道明寺の力で労力とお金と時間をかけた捜索で何も見つからないのが不思議だと出た結論。
現に牧野のもっていたカバンは車の中から見つかってる。
牧野は確かに俺と一緒にいたんだ。
「普通、事故を目撃してけが人を見つけたら、救急車が来るまではその場を離れないよね」
「事故現場に通報者がいなかったってことも考えれば不自然だ」
「通報者が道明寺のことを知ってるやつだとしたら?」
「司は敵が多いからな」
白々しい3つの視線が点線を作って俺に注がれる。
俺と同様に牧野を捜索する場所を間違えてるとこいつらも感じてるはずだ。
「恨みを持った人間なら通報しないぞ」
「牧野をさらった可能性は?」
「それなら何か連絡があってもいいはずだろう。1か月以上連絡がないのは長すぎるだろ」
此奴らの言い分を聞いてると安心できない不安材料しか出てこねェ。
それでも牧野が何処かに入ると信じられる開かれた展望。
注ぎ込ん出来た一筋の光。
ただそれだけで心が熱くなる。
「事故を最初に通報して救急車を呼んだのは誰だッ!」
「すぐに調べる」
俺の怒鳴り声にあきらが答えた。
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
いの 様
リターンズの時はつくしちゃんが苦しみましたからね。
>他の誰かに心を開き、頼る姿をみて司君はどんなに辛いか。
司に耐えるという選択肢はあるかしら?
諦めることも絶対ないだろうしなぁ。
楓様日記・・・
ドキドキ
あずきまめ様
えへっ♪
意表を突かれまくってるとコメントをいただきヘラヘラしてます。
ここからずんずん話が進んで~。
あきらに任せながらも司の必死で探すんだろうなぁ。
司が松葉づえを突きながら街の中を彷徨ってる。
「牧野・・・」
どこにいるんだ。
立ち止まって視線を彷徨わせたまま唇をかみしめる。
ここだけの妄想でグッときてダメだ~。
Gods&Death 様
ありがとうございます。
マイペースで進めようと思ってるんですが、ハイペースにすぐになっちゃうんですよね。
マラソンなら30キロすぎたあたりから失速だな・・・。
おーーー、赤ちゃん産まれました?
私は破水した後、生まれなくて帝王切開になってしまったんですよね。
ことり 様
(完)がついて読もうと思ったら3~4か月は先になるかと・・・(^_^;)
この後も司君は苦悩気味ですからね。
俺様でつくしを取り戻す為に突っ走る設定と、つくしが記憶を取り戻す為に翻弄する司君とで迷っています。
まい2 様
切ない系を書き始めるとテンションが~。
俺様な司君も好きなんですど、つくしを必死に思う司君も好きなんです。
本来は明るめな物語が主流なんですけどね。
ミントン 様
司が動けない間、つくしちゃんはなにを思うのか・・・。
記憶喪失になってる設定ですので、傍にいる人を頼っちゃてる。
それを司君が目撃したら・・・
リターンズで司の世話をやく海をつくしは見ていて心を痛めたんですよね。
今回は逆の立場になるのかな。
司に耐えるってことは出来るかな・・・
おかゆ様
perfect~とも逆バージョンですね。
このパターンは今からも時々使えそうな気がします。
今回はなにげに楓さんも絡めて行きたいと思ってます。
一番絡むのは西田さんでしょうけどね。
やなぎ様
「あいつが誰を好きでも構わない、奪ってやる」
ありましたね。司のセリフ。
つくしちゃんを見つけたらやっぱり司はこれですよね!!
この台詞に変わるセリフを考えなきゃいけないなぁ・・・(^_^;)
音ちゃん 様
つくしがどうなってるのかわかるまではもやもやですよね。
ババッと書きたいのは書きたいのですが、次はまだ半分しか頭の中で出来上がってなくて(^_^;)
誰がつくしちゃんを見つけるのか!
頭の中に置いて比べています。
ヤッパリ司君に見つけてもらいたいかな。
コスモス 様
苦悩する姿ってジーンとしますよね。
それが普段俺様で自信にあふれてるイケメンだとなおさらキュンとなってしまう♪
シッカリ私の頭の中はリターンズのJ司が増殖してます。