永遠のラビリンス 10

執務室に一人で残るつくし。

じゃなかった・・・つくしの恰好をした司君♪

司のつくしが社員に愛嬌を振りまいてるときになにをしてるのでしょう?

今日はそんなお話です。

いつものように書類に目を通してペンをはしらせる。

普段より短めの指とデスクの上の書類と近すぎる目線の高さ。

身長差で違って見える景色にも何とか慣れてきた。

牧野になった俺が見る俺は、鏡に映る自分の姿を見るより一回り大きく見える気がする。

俺の中に牧野がいて牧野の中に入る俺。

べつな奴と入れ替わっていたらどうなるのだろう。

西田と入れ替わっていたとしたら最悪。

表情の読めない西田の俺が、不機嫌な表情の俺の西田に指示を出す。

「代表」

俺の声で呼ばれたくねっ。

吐き気がしてきた。

こんなに呑気に仕事なんて出来るはずはない。

つーか、入れ替わってまで仕事させんな!!

西田!!

破りそうになった書類を睨んだままデスクの上に戻す。

プルル~。

デスクに伝わる振動とライトの点滅。

着信を告げる携帯に手を伸ばす。

あっ・・・

これ、牧野の携帯だった。

俺になった牧野が出るわけにもいかないからいいんだよな?

携帯画面に表示された着信名は松岡。

なんだ、牧野のダチだ。

小さいころからの親友。

俺もなん度も会っている。

俺が形態に出ても無難に対応できそうな相手。

全く知らない相手より気が楽だ。

つーか。

牧野の携帯に知らないやつから連絡が来たらそれはそれでムカつく。

オトコッだったら携帯を壊すくらいじゃすまねェぞ。

「もしもし」

携帯を耳元に当てて呟く。

「あっ、つくし?なにしてんの?」

聞こえてきたのは男性の若い声。

松岡優紀じゃねぇッ!

「誰だ!」

「誰だって冗談いうなよ」

「俺、つくしを怒らせるようなことしたっけ?」

この携帯に連絡を入れてきたこと事態最悪だろうが。

「今日、俺んちに集合だったろう?大学にも来てないから気になったんだよ」

お前が気にする必要はねェ。

ホントに誰だッ!

「また連絡いれる。とにかく、待ってるからな」

携帯の向こうで公平と携帯の相手を呼ぶ声が聞こえて切れた。

松岡公平・・・

知らねぇぞ。

大学ってことは法学部のやつか?

俺んち集合って、なんのお約束だ!

あのバカ!

浮気してんじゃねぇぞ。

「何とか、うまくいってますね」

開いたドアから入ってきて、聞こえるはしゃいだ俺の声。

「この分なら、問題なく過ごせそうで、安心しました」

西田の声までいつもより調子よく聞こえる。

「道明寺はどう?大丈夫?」

西田から俺に移った視線。

異変を察知したように俺の牧野の緩んだ頬がキュと引き締まる様に動いた。

「何かあった?」

「へんに思われたとか?ばれたとか!何かしたの!!」

言葉を発するたびに聞こえる俺の声は悲鳴に近くなる。

どこがどうばれる。

身体が入れ替わってるなんて誰が想像するかッ。

俺の牧野がデスクに駆け寄って勢いよく腕を突いた勢いでパラリと書類が浮いて床に落ちる。

動作一つが派手に見えてしょうがない。

俺っていつもこうなのか?

「松岡って誰だッ」

牧野の声を低めに出しても迫力は今一つ。

「松岡って、優紀なら知ってるでしょ?」

「俺の知らねェ松岡だよ」

「えっ?」

数秒の沈黙の後に動揺気味に眼球がピクつく俺の牧野。

「しらばっくれるな、さっき携帯に着信があったんだよ」

「出たの!」

「出るしかねェだろう。今は俺が牧野なんだし」

ここで不満げな表情を見せるのは筋違い。

牧野の俺も俺の携帯を持ってんだからなッ。

「家に行くってどういう了見だ」

「講義で使う資料をあつめるだけだから、それに二人だけってわけじゃないし・・・」

「お前が、言ってることが本当かどうか、俺が確かめてやるよ」

「行かせられるわけないでしょう」

「後ろめたいことがなければ止める必要ねェだろうがぁ」

「単位を取るために必要なだけなの!!」

コホン・・・

俺達の間を割る西田の咳払い。

「法学の知識のない坊ちゃんが行ってもどうにもならないでしょう」

「つくし様の評判を貶めるだけです」

それなら、持って来いじゃねェか。

牧野の近づく男はいなくなるぞ。

「つくし様を信用されないんですか?」

「それともほかの男に目移りされる不安がるとか?」

「んな、もんあるわけねえだろう。牧野が俺以外の男に惚れるはずねぇよ」

それに今は入れ替わってる状態。

心変わりも何もあったものじゃない。

「それじゃ、今日は都合が悪くていけないってことで連絡を入れられますよね?」

ずんと、西田が牧野の携帯を目の前に差し出した。

こんな時の有無を言わせない態度は牧野の俺を目の前にしても西田の奴は変わらないらしい。

やっぱり、こいつが一番扱いにくい。

誰が、言いなりになるかぁぁぁぁぁ。

*松岡公平は『100万回のキスをしよう』から登場するオリキャラです。

100万回では結婚するまでつくしの同窓生である松岡公平の存在を、司は知らない設定になってます。

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拍手コメント返礼

あずきまめ 様

大人しくお仕事してくれたら問題はないんでしょうけどね。(^_^;)

それだけじゃ面白くないって思ってしまうのはなぜ?

暴れてもらわなきゃということで、次回はこそっとつくしの司君に会社から抜け出してもらいましょう。