いくつもの嘘を重ねても 13
窓に顔を貼り付けてる司君。
部屋の中から見てみたいですけど~。
なにを想像してもかわいく思えてくるものです。
つくしも記憶がないなりに喜んでるような気がします。
「どうしたの?」
躊躇する様子もなく開かれた窓。
柔らかく俺に向けられる微笑。
本当に俺のことを覚えてないのか!
牧野に腕を伸ばして抱き寄せて無性に確かめて確認したいって思う。
「良くこの部屋が分かったね」
部屋の中に俺を招き入れて、牧野は窓から半身乗り出して外を確かめるように首を動かす。
「私の居る部屋が分かったのも不思議だけど、どうやって敷地に入ってきたの?」
そんな心配より、あっさりと俺を部屋の中に入れていいのか?
まあ、俺だから問題ないけどな。
この警戒心の無さに俺は苦労してたんだ。
大きく見開いた牧野の瞳の中に映し出す俺の姿。
離れていた時間を一瞬で引き戻された気がした。
「牧野・・・」
自分でも呆れるくらいに愛しげに俺の唇が動いて牧野と名を呼ぶ。
「空からだとセキュリティーは当てになんないからな」
熱くなる身体を誤魔化す様に視線を外した。
ヘリを飛ばして屋根の上に降りて後はロープで牧野のいる部屋のベランダに降りた。
屋敷の見取り図も手に入れて居場所は建物の中でも人間の熱を感じて知らせるレーダー使用。
あきらは、こんなものをどこで調達させるのか。
こういう道具があるって知識があるのも感心する。
俺を降ろした後、ヘリは遠くに飛び立ってプロペラの音も聞こえてない空に星が瞬く。
「空からって・・・」
呆れた表情はどうしてそこまでするのと言いたげだ。
決まってるだろ。
これ以上お前をここに置いとけるか。
牧野の側にあの男がいないのを知ってほっとしてる。
一緒の屋敷にいるってだけでも気が気じゃねぇんだからな。
一か月以上も牧野を夫婦だと偽ってる下種野郎。
「こんなのはめとくなよ」
その気持ちのままに動いた腕は牧野の指から結婚指輪を外す。
外に投げ捨てたい感情を抑えてテーブルの上に乗せるように投げた指輪がカランと小さく音をたてる。
それは少しの戸惑いを浮かべる牧野の心の音の様に聞こえた。
スルリと簡単に抜け落ちた指輪。
全然サイズが合ってねェじゃねェか。
お前のじゃないだろう。
はめるんなら俺の贈る指輪にしろよ。
ここでポケットから指輪を取り出せば恰好がついたんだろうけどな。
そんな時間がなかったからしょうがねェ。
黙ったままにその指輪を見つめて牧野がキュッと唇をかむのが見えた。
「私と、あなたの関係って?なに?」
それだけ呟いた唇はそのまま大きく息を吐く。
お前が結婚するのはこの俺様だと言ったら信じるか?
「今はまだ牧野を混乱させるから本当の事は言うな」
即答であきらが俺にくぎを刺す。
動揺を与えることがどういう結果を生むか考えながら行動しろ!
考えるより先に行動する性格だとお前ら知ってるだろうがぁぁぁ。
いろいろ忠告するわりには俺がこの屋敷に侵入することは止めなかったあいつら。
「司と牧野が会うことは刺激になると思うけどね」
類の一言が俺を大きく後押しをしてくれた。
「俺と一緒に来れば教えてやるよ」
「拒否したらどうするの?」
横柄な俺の口調にムッとした感情が牧野の瞳に宿る。
「拒否できるはずねェだろ、これは命令だ」
向かい合ったまま睨みあう距離が身体一つ分に縮まっていた。
「横暴だね」
「お前にそう言われるのは慣れてる」
牧野のクスッと呆れるように笑った表情に誘われるように俺の頬がフッと緩んだ。
その方が、おまえらしい。
傲慢、わがまま、横暴。
俺の悪口を言い放つお前が恋しいって、俺はマゾか。
牧野、お前にだけ俺は寛大なんだからな。
俺をじっと見つめる牧野の瞳。
俺を信じる見上げる視線。
キラキラと輝いて俺だけを見てる瞳に胸が熱い。
「なにもされてねぇよな?」
キョトンとなった顔はまじまじと俺を見つめる。
俺が何を確かめたいのか気が付かない呑気な表情を浮かべた。
「いや・・・いい・・・」
あいつとお前は結婚してるって信じ込まされているんだろうがぁ。
だからって今それを確かめてもどうしようもない。
「とにかく、ここから出よう」
グッと牧野を引き寄せるように腕を掴んだ。
本来ならもう少し先まで書きたかったんですけどね。(^_^;)
続きはまたということでお許しを~。
司を送り届けた後のF3のヘリの中での会話というのも聞いてみたい気もします。
楽しみいただけたら応援のプチをよろしくお願いします。!(^^)!