生れる前から不眠症 3

カテゴリ追加してしまいました。

短編で書くつもりだったんですけど、数話では終りそうもないストーリーが浮かんじゃってます。

お付き合いをいただけたらうれしいです。

「奥様がお見えです」

はじめの頃は一ノ瀬の『奥様』の言葉に照れくさそうな反応を見せていた葵。

普通の服じゃ隠せなくなったお腹をマタニティーで覆う。

俺の妻はご懐妊と宣伝されてるようなもの。

「予定日は?」

「性別は?」

最近聞かれることが多くなってる。

「仕事以外の質問に答える気はない」

緩んだ口もとでそっけない態度が出来るわけない。

司が手放しで喜んで浮かれてた事を笑えない俺がいる。

こんなにニヤケルものなのか。

緩んだ口もとを手のひらで覆って隠したことが幾度あることか。

生れてくるのはもっと先。

いやあと4か月。

もうすぐ俺は父親になる。

そう言えば、妊娠で結婚を迫ったって噂されたことを葵は覚えてるのだろか。

「なに笑ってるの?」

上機嫌なのは俺よりお前ほうだろう。

幸せだってあふれる笑顔を向けるのは俺だけにしろ。

誘う様に伸ばした腕はそのまま膝の上に葵を導く。

「また少し、大きくなったか?」

「朝とそんなに急に大きさが変わるわけないでしょう」

腹部に当てた手のひらを失礼だという様に軽くたたかれた。

少し膨れた頬はすぐに弾けて男の子だと俺に告げる。

「女の子どれだけ泣かすんだろう」

性別が男って分って、その感想はないだろう。

「俺は一途だぞ」

「どうだか」

首を逸らして仰け反って俺を見つめる瞳。

「こんなに夢中なのは後にも先にもお前だけって知ってるだろう」

初めて触れた肌。

中に入った瞬間の熱の熱さ。

甘い声も、匂いも、何もかもが柔らかくて愛しかった。

あの時から全てが特別だった。

「ちょっ・・・」

「ん?」

「少し手つきがいやらしくなってない?」

膝から浮きだった葵の腰つき。

妊娠して丸みと柔らかさが増した気もする。

「最近遠慮してるからな」

「こんなところで変なこと言わないでよね」

困った表情が唇を尖らせる。

軽く唇を合わせたあとでどちらからとも笑みがこぼれる。

コツンと寄せた互いのおでこ。

「エッチ」

小さな囁きは照れくさそうに俺の耳をくすぐる。

「初めて抱いた時のお前を思い出していた」

「えっ?」

ギョッとなった表情のまま浮き出しあって膝からずり落ちそうな葵。

「なに逃げようとしてる?」

「初めてって・・・」

表情がドタバタし過ぎだよ。

地上に落ちたらべチャとなりそうな熟れ過ぎた果樹。

今さらの初心な反応。

無性に面白がってる俺。

だから飽きない。

「私からのお祝いです」

ノックの後、リボンのついた箱を持って部屋に行ってきた一ノ瀬。

数歩進んで言葉が詰まった表情が俺達を見つめる。

一呼吸の後「お邪魔しました」の声とともに返った踵。

「おおお邪魔じゃないですからッ!」

裏返った葵の声が一ノ瀬を追いかける。

俺の嫁さんかわいすぎだろう。

自分でも浮かれてる声が喉の奥をくすぐって笑を漏らしていた。

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拍手コメント返礼

ココア 様

憶えていてもらってうれしいです。

ちょっとあきら君を悩ませる事件を考えちゃってます。

あきら君ならあり得そうなやつ。

司じゃ絶対ありえないことをご用意。

シリアスかららハッピーに物語が展開するのは決まってますがドキドキ感を一緒に味合っていただけたらと思ってます。

あずきまめ 様

子供が生まれるまでの楽しみって格別ですよね。

生活が落ちつているからなおさらでしょうね。

ここに石を投げいれようとしている私・・・(^_^;)