パズルゲーム 29
ただいまの執務室に冷房は必要ありません。
天然の氷が増殖中。
溶けるのは何時?
なんて、冗談を言ってる場合じゃないですよね。(^_^;)
「お茶をお持ちしました」
頼んでもねぇのにトレーを運んできたのは西田。
ティータイムの時間ですとでも言いたげな優雅な態度。
ピシッと腰を伸ばして30度で腰を折ってテーブルの上にカップを3つ置く。
慣れた手つきでティーカップに注がれる茶色い液体から湯気が上る。
お前は執事かッ!
スコーンの皿まで立体的にならんでる。
何時からここはイギリスになった?
「一息入れられた方がいいと思いますよ」
紅茶の香りを漂わせるカップを西田が俺の前に置いた。
「折角だから頂こう」
牧野もどう?って、類の視線がつくしを誘う。
つくしの腰に類が腕を回す態度よりムカつく。
俺から逃げようと後退していた脚が前に動いてソファーにちょこんと座りやがった。
おい!
当たり前のように俺の目の前で二人で並んで坐るなッ。
目の前のカップを持ってソファーに向う俺。
床を踏み抜きそうな勢いのままにつくしの横に座った。
「せまいっ」
「あっ」
「いや・・・いい」
ジロリと睨んだ視線の先でつくしの身体が小さくなった。
「狭ければこっちに移ればいい」
つくしの腕をとって引っ張り上げてテーブルを挟んだ位置に場所を変える。
ティーカップに口をつける手前で類が小さくフッと笑った。
「ところで、なんでわかったの?」
「なにが?」
やってらえれねぇ気分のままの無造作な返事。
「だから!私が花沢類の恋人の役をやらなきゃいけないって知ってるのよ」
「お前に、SP付けただけで俺が安心できると思ってるのか?」
牧野の上着のポケットから取り出す小型マイク。
豆電池ほどの大きさのものだが高性能。
半径数メートルの範囲の音を拾って的確に俺の元に届けた。
「なにこれ?」
つくしの声がデスクに置かれたアンプから聞こえた。
「えっ?」
「これって・・・」
こだまするように聞こえるつくしの声。
「聞いていたって事?」
「俺の、止めるのを聞かずに行動するんだからこれくらい当たり前だ」
お前に俺を責める権利があるものか。
「盗聴しょ!人権侵害!」
「俺のものをどうしようと問題ねェだろうが!
それに、おまえは危険だと言ってるのを振り切って自分の我を通したんだぞ」
むくれた顔はますますむくれて高揚してるのが分かる。
どれだけつくしが不機嫌になっても譲れないものがある。
今回に関しては俺はぜったい悪くない。
悪いのは俺を死ぬほど心配させるお前だ。
「何時から私は道明寺のものになったよッ」
「俺様が惚れた時からに決まってるだろうがぁ」
そんなこともわかんねぇのか。
ソファーから立ち上がって睨みあうつくしと俺。
つーっと茶色い液体がティーポットからティーカップに糸を引くように注がれるのが目の端に見えた。
「少し落ち着かれたほうがよろしいかと」
飲み干したカップになみなみと注がれる紅茶。
その仕草と西田の顔をつくしと二人で見比べてしまってる。
「花沢様には、いつも助けられているばかりですから、ここは恩を売ることも必要です」
ぼそっと西田がティーカップを俺の前に進めながら耳元で呟いた。
だからって、つくしを貸せるかッ!
秘書ならこの状況を打破しろ!
・・・とは、言えないことは重々承知の余裕の態度を西田は見せる。
くえねぇ顔は相変らず感情を見せないままにじっと俺を見据えていた。
拍手コメント返礼
あずきまめ 様
クーラーがなくても涼める部屋は貴重ですよね。
猛暑に欲しい人材?(笑)
つくしと類君がセットでいないとダメでしょうけどね。
西田さん何をする気?と考えてお話を読んでもらえると楽しめると思いますよ~
みえこ様
この程度で不信感を持っちゃったら司とは付き合えないと思うのです。<(_ _)>
困ったもんだとあきらめの境地をつくしちゃんには持ってもらいたい!
この後の展開は・・・
え?そうだったの!
と思える展開を考えてるんですよね。
ここでばらしていいのか!
ちょっとドキドキ。
やなぎ様
司なら誰の目もつくしがどう思おうともやりそうですよね。
大人しく西田さん言うとおりにしたらそれこそ奇跡だと思います。(^_^;)
音ちゃん 様
おはようございます。
携帯への返信は、全然かまいませんよ♪
何かありましたら直でどうぞ~。
司の側にいたら天然氷が出来上がる?
高価なかき氷が出来上がりそうですよね。
そこにいちごシロップをかけてぜひ食べたい♪
つくしちゃんはそんな冗談言えないでしょうけどね。
娘さんの同級生の司君、道明寺ってよばれてるですか?
凄い影響力。
つくしという名前は少なそうですが、牧野さんがつくしって呼ばれてたりして・・・(^_^;)
アーティーチョーク様
ここはあきらめていないというよりは・・・
この先を書くとネタバレになるのでもう少しお待ちくださね。♪
司のつくし溺愛はこの先もきっと続くことでしょう。
それを楽しんでるんですけどね。
司の溺愛がなければ面白くないと思っちゃってますからね。
まちゃこ 様
普通そこまで監視されたら嫌になりますよね。
司ならやりそうだとつくしも想定内なのかしら?
嫉妬と束縛は紙一重ですもの、どこまでなら我慢できるのかそちらもいつか試してみたいかな。