いくつもの嘘を重ねても 26

つくしが司に見られたくないものって・・・

なんだろう?

類との思い出のハンカチは返しちゃったしなぁ。

ハンカチがあっても類のだとは司も気が付かないかな。

原作では司がアメリカに行っちゃった後つくしのう家には類が入り浸っていたんですよね。

その間のもの何かあったりしてね。

*

差し出された手の平の温もりは、必要以上に温かくて、ドキリとした。

少し汗ばんでするりと抜けおちそうな牧野の手のひらを防ぐように一度親指を立ててもう一度握り返す。

牧野は照れくさそうに微笑みを返してくれたように思えた。

なんか、記憶がない方が素直というか・・・。

俺を頼ってると言うか・・・

いじらしくて、かわいすぎ。

それなのに!

俺様がわざわざお前の記憶に結び付きそうなものを、探してやってるのに怒鳴りやがった。

普通ならカンガルーの様に飛び跳ねながらのパンチが飛んできそうな形相。

なにが入ってるかわかんなくて引き出した引き出し。

シンプルな白に混じって、遠慮がちに隠れるのレースのついた生地。

あっ!

これ!

見覚えある・・・。

どちらかというとシンプルなものよりかわいいものの方にいくつか見覚えがある。

「なに、触ってんのよ!!」

引き出しから取り出したブラを殴る勢いで牧野が奪って胸元に隠した。

俺を怒鳴りつける人間は相変らずお前だけだ。

可愛くねェッ。

でも、やっぱそれがお前らしいって思える。

「いつも俺が脱がしてやってるだろうが」

牧野も俺に会う時は気を使ってるって事だろ。

すぐに脱がせるものまで気に掛けるって、それだけ俺のこと気にしてるわけだ。

「勝手に触れるな!」

ふくれっ面がまた俺を睨む。

お前に俺が触れるの許可なんかいるかよ。

アホなこというなと思う感情が口もとから笑みとなって漏れる。

俺の不敵な笑みが気に食わないって牧野の顔がむくれる。

お前・・・・

記憶戻ってねェよな?

年季の入った学習机。

右の引き出しをなにげに開ける。

「ダメ」

牧野が俺の腕にしがみ付いてそれを止める。

「なんだよ、確かめないとなにもわからないだろうが」

「人のもの!・・・じゃなくて私のものだから、私が見る」

下から牧野ががっちりと俺の手の動きを防御。

哀願気味に見つめる大きな黒い瞳

お前の、その表情に弱いんだよ。

捨てられた猫みたいなやつ。

抱き上げて連れて帰りたくなる。

やっぱ、これが終ったら俺んちに連れて帰る。

お前・・・

本当に記憶戻ってねぇのか?

「俺に見られたら困るものでも隠してるのか?」

「ヘッ?」

ポケッとなった顔が強張って頬がヒクついてる。

「いや・・・ほら、下着みたいに見られたら恥ずかしくなるものあるかもしれないし」

庶民は机の中に下着を入れるのか?

そんなわけねえだろう。

「何バカなこと言ってる、ここに下着を入れる必要があるか。

下着はさっきのタンスに入ってたんだぞ」

俺の示した指先に視線を移した牧野がギョッとした表情に変わった。

タンスから斜め下に落とした視線。

床の上に落ちるレース付きの淡いピンク色のブラ。

「キャーッ、見るな」

牧野が床にへばりついてそのブラを隠した。

その隙にッ。

引き出しの中を探る。

几帳面に整理された引き出しの中は探るまでもなくどこに何があるか一目瞭然。

ガラクタばっかだな。

何かのお菓子のカンカンの小さな箱。

その上に黒ペンで書かれた単純な線の似顔絵。

初めて牧野が俺にくれたクッキーの似顔絵がそこにある。

クルクルのくせっ毛頭が俺で、ストレートの前髪と長い髪が牧野だよな。

不機嫌に眉を吊り上げた俺の横で、にっこりと半円を浮かべる似顔絵。

こんなしょうもねェものが俺をクスッと楽しくさせる。

「なに、ニヤついてるの?」

タンスに下着を戻した牧野が俺の肩越しに引き出しの中をの覗く。

「これ、たぶん、お前が書いた俺とお前の似顔絵」

牧野に小さな四角い缶を渡した。

似顔絵を牧野の指先がなぞる。

「特徴をうまくとらえてるね」

似顔絵を俺を並べて見比べて牧野がクスクスと笑う。

開けた缶の中にはいくつもの色とりどりの紙。

一つ取り出した紙切れは映画のチケットの半券。

こんなもんゴミだろう。

「なんで、こんなもんとってんだ?」

首を傾げた牧野が半券を眺める。

「日にちが書いてあるみたい。

道明寺と2週間ぶりのデート。途中で寝てる道明寺・・・・だって」

読みやすい文字が小さく綴る数行の文章。

「疲れてるなら、無理しなくて良かったのに」

気がつけば始まってすぐ寝込んで気がついたら上映は終わってて、映画の内容もわからなかった。

牧野が俺を気遣って言ってくれたことだけは覚えてる。

「俺とお前が付き合っていたって証だな」

「そうだね」

何時までも半券を眺める牧野の横顔。

照れくさそうに染まる頬。

箱の中に視線を移して、違う紙切れを手に取って牧野がまた眺める。

いつの間にか俺は牧野の肩に腕をまわして抱き寄せていた。

拍手コメント返礼

あずきまめ 様

こんなかわいさはどこに忘れてくるんでしょうね。

この前の娘の部活での話です。。

試合の前が修学旅行だったんですが、その時のお土産のお揃いのキーフォルダーを先輩の彼氏に子どもの同級生が渡したそうです。

その大会で彼氏は標準記録突破で全国大会の切符を手に入れました。

走る前にキーホルダーを握りしめていたって告白をそばで聞いていた娘が私に教えてくれました。

うちの娘には彼氏のかのじも見られない・・・。

コスモス 様

半券の次はなにが出てくる?

司君がドキッとするものとか、イラッとするものとか・・・

これ以上は喜ぶものは出さないと決めてる私です。(笑)

祇園祭、何時かは行ってみたいですね。

京都には修学旅行以来縁がない私です。

代わりにつかつくにF3で楽しんでもらいましょうかね。