生れる前から不眠症 8
そろそろあきら君に場面を移して・・・
ところで、つくしにはばれたのかな?
続きからどうぞ。
「あきら、すまん」
初めて聞く司からの謝罪。
スマフォの向こうから聞こえた沈痛な声。
司・・・
お前がそんな落ち込んだ声を俺に聞かせるの何時だか覚えてるか?
牧野と別れた時は、わざと荒々しい態度見せてたよな。
淋しさを素直に見せるのが苦手な奴が、素直な態度取ると重いんだよ。
なんに対する謝罪なのか、聞かなくても判った。
時間の問題だとは思っていたが、早過ぎだろう。
1週間も経っちゃいない。
「珍しくあいつが、敏感でさ。妊娠すると過敏になるっていうけどそのせいかもな。お前も注意しろよ」
お前にだけは注意されたくねぇよ。
「意外につくしは冷静でな。そんな話の一つや二つ、西門さんや美作さんに出てきても驚かないわよって言ってたぞ」
それ、喜べねえだろう。
過去のことはしょうがないとか・・・。
葵さんのショックを最小限にしなきゃねとか・・・。
司がしゃべる牧野は弁護士の能力を発揮しようとしてる牧野が目に浮かぶ。
俺の子供じゃないかもという選択肢は入ってない事に苦笑。
ここ数日、帰宅時間が夜中の俺。
寝入ってる葵の横に滑り込んで、朝は葵が起きる前にマンションを出る生活。
今日も、静かな部屋のリビングのソファーに腰を下ろしネクタイを緩めた。
「起きてたのか?」
足音もなく近づいた影はそっと背中から腕を首に巻きつけて俺を抱きしめる。
「最近、お帰りも、行ってらっしゃいも言ってないから」
「ごめん」
葵のごめんの声が耳元に触れる。
謝らなきゃいけないのは俺の方で・・・
心配かけたくないって、いい訳で取り繕って、葵を避けてしまっていた。
気が付くよな?
何かおかしいって・・・。
胸の前で交差された指先をそっと手の平で包み込む。
「身体は大丈夫か?」
「病気じゃないから」
眠たくてしょうがないという葵を、無理するなとベットに朝食を運んでたのは数日前の俺。
今は起こさない様に出ていく俺を訝しく思うなって思う方が無理だよな。
「何かあった?仕事が忙しいわけじゃないよね?」
俺の頬に寄り添う様に葵の頬が触れる。
ベットの中じゃ抱きしめて包み込むのはいつも俺の方。
今は、母親の胸の中に抱かれてるような気分に葵にさせられてしまってる。
俺に子どもがいたらどうする?
何も言えるわけがない。
「俺の事より、子どものことだけ考えてればいいよ」
顔を斜めに向けて角度を上げて葵を見上げる。
襟足から髪の中にすべりこませた指先。
小さく笑った唇はそっと俺の手のひらにキスを落とす。
「本当に、何もないの?」
「ああ」
納得してない表情は、そのまま不安げで、頼りなく見えた。
「あきらが、話したくなるまで待つけど、なにがあっても私はあきらの味方だから」
グイと力の入った葵の両腕が俺をもう一度抱き着いた。
まさか・・・
もう牧野から情報が入ってねぇよな?
司のからの話だと葵にはまだ黙っていた方がいいって結論だったはずだ。
「今日、牧野に会った?」
とっさに確認したくなって出た言葉。
葵の意外そうな表情が俺をじっと見つめる。
会ってないのか・・・。
さっき放った言葉を飲み込みたくなった。
「つくしちゃんは、なにか知ってるの?」
私だけのけ者なの?
そんな感情が俺を睨む。
どうやら、俺も自分の妻につくウソは苦手らしい。
どうする?
まだ何もはっきりしてねェし。
葵に知られたくはないし。
誤魔化す様に身体の向きを変えて葵を抱きしめた。
指先で上に持ち上げた顎のライン。
わずかに開いた唇から小さく息が漏れる。
そのまま重ねた唇から、滑り込ませる舌先。
クチュと吸い上げた音が漏れる。
「そんなんじゃ、誤魔化されない・・・から・・・」
途切れがちに発する声。
そのまま俺のキスに応じるように葵の舌が俺に舌先に絡みついた。
拍手コメント返礼
おかゆ様
以前のあきら君ならうまくごまかせるような・・・
あきらも司と一緒で妻には弱いってことで~。