DNAに惑わされ 2

はじまりました駿君第二弾!!

父親をしている司に、今回は母親してるつくしが見れるのか?

続きからどうぞ♪

*

あっ・・・

気が付くとエレベーターは母さんの事務所の階を通り越して1階まで下りてしまっていた。

開いたエレベーターの扉の向こうから目に飛び込む僕のCMの垂れ幕。

かぶっていた帽子をグッと目もとまで引き下げて顔を隠す。

誰かに見られてる感覚は身体の筋肉をキュッと引き締めて僕を警戒させた。

って・・・

意識過剰。

目の前を颯爽と行きかうスーツに身を包んだ大人たち。

足を止めて僕に視線を送るものは誰もいない。

見るからに若造の僕は場違いな存在。

日本語だけじゃなく飛びかう外国語が道明寺ホールディングスの国際化を明確にしてる。

何でここにいるんだ?

そんな視線で見られてる気もしてきた。

「何か用事かな?」

肩にポンポンと叩かれて振り向くと警備服のおじさん。

人の視線から逃れようとする僕は不番に思われてもしかたない。

「この子はいいから」

警備員のおじさんを遮ったのは顔なじみのSPの千葉さん。

何でここにいるの?

なんてことは聞く必要もないかぁ・・・。

父さん!千葉さんを先回りさせたな。

「お母様の事務所は10階ですよ」

「そんなことは知ってるよ」

千葉さんの笑顔がなんとなく子ども扱いされたようで、不機嫌な返事を返す。

父さんとか、西田さんにおばあ様に見られたら小言が飛んでくるのは間違いない態度。

上に立つものは自分の感情をストレートに出すな!

分ってるけどまだまだ、僕には無理。

父さんも母さんに対してはストレートすぎるから僕より悪いじゃないか。

なんてことを一度は言って、楯突きたいものだとは思う。

エレベーターの扉を抑えてる千葉さんの前を通って、もう一度エレベーターに乗り直した。

耳元のイヤホンの位置を直しながら辺りに警戒の視線を送る千葉さん。

その・・・

護衛してる感じを前面に打ち出さないでほしい。

今度こそしっかり周りの人が僕に興味ある視線を送ってるじゃないかぁぁぁ。

エレベーターが閉まる瞬間、幾人かが僕とCMのポスターを見比べてるのが見えた。

コンコンとノックする音に「どうぞ」と返事が帰ってくる。

その男の人の声はたぶん、母さんの同僚の甲斐さん。

人当たりのいい柔らかい印象を受ける。

「おっ!久し振り!」

気軽に掛けられた声。

にこやかな表情は気さくなオジサン。

「なんだか、久し振りって気がしないのよね」

甲斐さんの横には奥さんの玲子さん。

母さんが玲子さんって呼ぶから僕たち子どもにも玲子さんで呼名は定着。

「ほら、いつもエントランスで見てるからだとは思うんだけどね」

「かっこいいとか、かわいいとか、いつも立ち止まって見てる人多いのよね」

「ポスターを写真で取ってる人もいるし」

チラリと甲斐さんに視線を投げる玲子さん。

写真撮ってる人って甲斐さん?

一瞬後ろに身を引く僕は、甲斐さんがそっち系じゃないことを祈る。

「俺じゃないでしょう、娘がファンなの知ってるじゃないか!」

ケラケラと笑う玲子さんは僕と並んで娘に自慢するからと携帯で写真を自分撮り。

嫌だと断れない気さくさが僕らの間にはある。

「騒がしいと思ったら・・・」

僕を見つけて満面の笑みを浮かべる母さん。

「駿で、遊ばないでもらえますか」

玲子さんにそう言いながらも、母さんから笑みがなくなる様子はない。

「遅い!」

「司から連絡をもらって待ってたんだから」

クシャッと僕の前髪を母さんの指先が掻き上げる。

「背伸びたね?」

無理して必死につま先を伸ばして僕を見上げる母さん。

ご飯食べてる?

勉強してる?

おばあちゃんに迷惑かけてないよね?

聞かれることは何時もと全然変わり映えのない事柄。

ウンといつもと同じ言葉を繰り返すだけ。

「悪さしてないでしょうね?」

いきなりべつなことを差し込まれて顔を顰める母さん。

悪さってなんだよ!

「息子のキスシーン見るとは思わなかった」

それってCMの演技でしょ!

実際寸止めだし。

「ショックよね。私もショックだったもの」

顎に親指と人差し指で抱え込んで物思いにふける表情を玲子さんが浮かべた。

「目をつぶると駿君ますます代表にそっくりだからな」

甲斐さん・・・

それで玲子さんがショックを受けるとは思えない。

「ママはそんなこと思ってないから」

母さんの慌て方は完全に焦ってる。

息子で父さんを思い浮かべてかぶせんなよな。

「鮎川さん、大丈夫かなと思って」

確かに、それは僕も気まずいというか、鮎川の反応が一番怖かった。

なんにも言わないとというか・・・

触れないって言うか・・・

学校でCMの話題を交わすことなんてなくて・・・

僕も照れくさいから自分で振ることもない。

何時もと変わりない鮎川に僕は内心、ホッとした。

「別に、なんも言わないし、変わんないし・・・」

「ずけずけ、言う子じゃ無いでしょう!」

僕の言葉の途中でムッとした声を母さんが上げる。

「とに、女心が分んないところは司、そっくり

母さんが鮎川を気にしてくれてるのは嬉しいが、なんでもすぐ父さんに結び付けて不機嫌になるなよなッ。

必要以上に疲れる・・・。

拍手コメント返礼

アーティーチョーク 様

みんながみんな駿の正体に気が付いた面白くないですから~

警備員さんいはしっかり警備の仕事をしてもらいましょう。

そうです、甲斐さんとこの娘さんは双子と同い年なんですよね。

名前を付けたかどうか定かでない私は娘と誤魔化しちゃってます。(^_^;)

ここから徐々に周りの反応も小出しで登場させますね。

あずきまめ 様

何も言われないのも気になりますよね。

駿君だけじゃなく私たちも♪

女心を分り過ぎるのも確かに困る(*^_^*)

アーティーチョーク様

わざわざありがとうございます。

甲斐さんとこの愛娘は『芽衣ちゃん』でしたね。

普段は物語に重要じゃない登場人物は極力名前は付けない様にしてるんです。

あの時は名前を付けないとおかしい感じだったので付けたくないと思いつつ、つけたんでした。

それで付けた様な~という記憶しか残ったませんでした。(^_^;)

子供のことを話すとき「うちの子、うちの娘」とかの言い回しもするから今回は出さなかったんですよね。

これから芽衣ちゃん登場することあるのかしら・・・