いくつもの嘘を重ねても 28

何時つくしは記憶が戻るのか!!

もう少し?それともまだ?

どうしようかな~。

*

俺が、他の女に目もくれるわけないだろう。

記憶を無くしてなかったら絶対聞かないよな?

不安と嫉妬が入れ混じる、そんな表情を浮かべて大きな瞳が俺を見つめる。

夢中で必死に否定する俺。

なに焦ったんだか・・・。

記憶を無くした牧野の反応はやけに素直で、気の強いとこが何時もの30%。

俺を信じて頼り切ってるとこがやけにくすぐったくて、俺を喜ばす。

それでも・・・

NY行きのチケットをどんな思いで破いてバラバラにして、そしてどんな思いでつなぎ合わせたのか。

泣きながら破く顔に淋しげにつなぎ合わせる震える手元。

牧野の姿を想像して胸を締め付ける。

二度とこんな思いさせねェから。

諦められると思った思いは、結局お前に会った瞬間にぐらついて、日本に戻ってもう一度牧野の姿を見たら堤防が決壊するように激情が流れだし止めようがなくなった。

自分の感情を抑え込んで吐き出すすべをなくしかけていた日々。

牧野を取り戻せなきゃ俺の心は死んでいたって思う。

「お前以外は欲しくねェよ」

ふて腐れ気味に呟く声。

目の前でわずかに開いた唇が固まって見る間に頬を染める。

「あっ!今すぐお前をどうしたいとか思ってないから」

だから、その責める様な目で見るのは止めろ!

「道明寺と一緒にいるときの私は楽しかったんだって分かる」

牧野の指先はもう一度確かめるように缶の中のチケットに触れて、ふたをそっと閉めた。

もういいのか?

NYのチケットのことは?

聞きたい質問は吐き出せずに喉の奥にくすぶる。

「いくら仲が良くても、好きでも、ケンカしたことあるだろうしね」

一人だけ気が晴れた様な表情を浮かべて牧野が微笑む。

思い出してほしくない記憶のはずなのに、牧野が覚えてないことが不満だと思う俺。

俺達の歴史の中じゃ重要な分岐点だ。

俺の我儘な感情。

俺らしいといえばらしいか。

「なに笑ってるの?」

「笑ってねェよ」

俺の返事を待つ間も見せず牧野が机の引き出しの奥を覗き込むように首を傾げて腕を引き出しの奥へといれる。

髪を耳にかける仕草。

白いうなじが目に触れてドキッとなった。

目の毒。

今すぐお前をどうしたいなんて思ってねぇからな!

心の中で言い聞かせる俺。

禁欲長げぇ~ンだぞ。

長方形の箱を今度は牧野が引っ張り出した。

俺も見覚えのある箱。

NYに行く前に牧野に贈った土星のペンダント。

ペンダントを牧野の首に付けてやった時のことがフッと思い出された。

目のやり場に困って、視線を外して、指先だけでペンダントの金具を止めた。

今も牧野の白い肌に焦ってるなんてどうしようもねェ。

あの頃と一緒の反応を見せてどうする!

「なにも、入ってない?知ってる?」

目の前で見せられた箱の中は空っぽで・・・。

今の牧野の首もとにはなんもなくて・・・。

事故に遭う前のホテルでは確かに牧野は土星のネックレスを付けたままだったはずで・・・。

「お前が大事にしてたネックレス」

道明寺との大事なつながりだって、もっといいもの贈ると言ってるのにそれ以外は受け取ってくれねんだよ。

憶えてねェよな?

「もしかして、道明寺からのプレゼント・・・?」

「あぁ・・・」

「大変じゃない、どこか他のとこに置いてあるのかな」

他の引きだしや、机の上を牧野が必死に探し出した。

「どんなペンダントか憶えてるのか?」

ため息交じりにつぶやく俺に牧野が気まずく「覚えてない・・・」と小さな声で答える。

「ここにはないって思うぞ。事故の時お前は首に付けてたからな」

つーか、ほとんど肌身離さずつけてんだぞ、俺の贈ったペンダント。

「事故までしてたってことは、事故の後もしてたってことだよね?」

錦織か・・・。

ハタッと二人同時に気が付いて視線を重ねる。

「もう、いいほっとけ、また買ってやる」

二度と錦織と接点を持つつもりはない。

牧野を妻だと自分の側に連れ去った奴。

ブン殴る位で俺の気が収まるわけねェだろうッ!

今度会ったら自分を止める自信がない。

「ダメに決まってるでしょう!デートのチケットを大事にとっていた私だよ。諦めることなんてできないって思う」

「錦織に会いに行くつもりか?」

「忘れ物がないか確かめるだけ、何も持たずに出てきちゃったから取にもどったって理由なら自然でしょ?」

なにが自然だ!

お前を俺から隠した時点で不自然だろうがッ!

「駄目だ!」

「なんでよ!」

「俺がダメって言ってんだよ」

「道明寺の言うことなんて聞く必要ない!」

俺が血の吐く様な思いでお前を探し出して取り戻したの分ってねェ顔が俺に迫る。

俺を怒らせるのは記憶を失っても健在らしい。

「どうかした?」

恐々とドアが開いて牧野の両親と弟が顔をのぞかせた。

拍手コメント返礼

あずきまめ様

ネックレスをとりにそう簡単に司がつくしを行かせないとは思いますが・・・(>_<)

ヤッパリ行っちゃうでしょうね。

そうじゃないと面白くないしなぁ~(笑)

マリエ様

つくしちゃんの気質は記憶を無くしても司を振り回してます。(笑)

早く記憶を取り戻させないとやばくなるそうな気もします。

アーティーチョーク 様

つくしの記憶喪失は何時まで?

そろそろ思い出させなきゃとは思ってるんですけどね。(^_^;)

やっと土星のペンダントにたどり着いたというところでして・・・。

まだ先があるんですよね。

錦織君司が現れたらどうするんでしょうね。