DNAに惑わされ 3
いよいよお話は確信へ!
一体なんの確信だろう・・・(^_^;)
*
コーヒーが苦いと感じなくなったのは何時の頃からだろう。
手持無沙汰に指先がシュガーの入っていた紙をくしゃくしゃに丸めてる。
鮎川のバイト先の喫茶店。
鮎川もバイトなんてしなくてもいいはずのお嬢様。
それでも隔日で喫茶店のカウンターの中でコーヒーを煎れる。
僕もいつの間にか常連の仲間入り。
鮎川ばかりを見てると知られたくなくて、カウンターのテーブルに並ぶグラスに写る鮎川を眺めてコーヒーを飲む。
最近放課後の女性の集客率がUPしたとマスターから僕にコーヒーチケットの綴りをお礼だと握らされた。
気が付いてるのか、気が付いてないのか、鮎川はグラスを綺麗に磨いて棚に並べてる。
「毎日来てもらえるといいんだけど、そんな訳にはいかないよなぁ」
30ちょっと過ぎの気さくななマスターは人懐こい笑顔を浮かべて、ちらりと鮎川に視線を移す。
僕の目的が鮎川だって事は重々承知してる顔つき。
マスターと視線が一瞬会った鮎川がグラスが割れるような勢いで拭き始めた。
「菜花、照れてるぞ」
「照れてません」
間をおかず瞬時に聞こえた鮎川の声。
少し赤みを帯びた様な声はすぐに僕の心臓を掴む。
素知らぬ素振りの鮎川が僕を意識してくれてる事に気が付いた。
鮎川の少しほんのり上気した頬。
触れあった唇が振るえていた感触。
離れた後で俯いて下に落としたままの視線。
僕の腕をギュッと握りしめたままの鮎川をもう一度僕に向かせてキスをしたいってまた思った。
それは鮎川の親父さんの出現で未遂に終わった。
初めてのキスはあっけなくって、それでも感動的で、思い出す様に指先が自分の下唇の形を左から右になぞる。
あのキスから過ぎた時間は季節を夏から秋に変えてしまった。
進展してない僕らの関係。
CM撮影に縛られた時間は、鮎川本人より鮎川の親父さんと過ごす時間の方が確実に多くなっていて・・・
学校で会う程度の時間では進展もあったもんじゃない。
わざと撮影を遅らせて鮎川に会う時間を邪魔されていると錯覚しそうになった。
出来上がったCMは僕の邪推のつけ入る隙もなくて、賞賛される出来栄えのものだった。
監督の私情は入れられてないって感じられる監督の愛情が伝わるカメラ割り。
CMが日本中で流れだした瞬間から僕は一躍有名人になった。
未だに僕が道明寺財閥の御曹司だということが、ばれてないことが不思議な気がする。
一歩外を歩けば、指を指され、視線が僕を追う。
視線が会うと目の輝いた女性の訴える様な表情が僕を見つめる。
おかげでいつも喫茶店に来るのは遠回りをする羽目になる。
「あの・・・」
声をかけられるのは何時ものことで、声の方向に振り向いた瞬間に「キャー」と黄色い声が上がる。
目の前には僕の高校の制服の女子学生3人。
それも上級生だとわかる。
「1年生の道明寺君だよね?」
眼鏡をかけて、頭ぼさぼさで、洗いざらしのジーンズと着古したTシャツ。
舞が、ださく見えたほうが女の子が近づかないかもって進めてくれた恰好。
無駄だったみたいだ。
「良く、この店に来てるって聞いたから。暇?」
期待感が神々しいくらいの顔が3つ目の前に並ぶ。
「暇じゃないんで」
「少しだけでも、お願い」
ピシャッと、一人の女の子が両手を合わせる。
それに倣う様に左右の女の子と達も両手を合わせて僕を拝む。
「駿君、これ、お願い」
僕の前に水の入ったグラスが二つ並ぶトーレーを持った鮎川とカウンターを挟んで向かい合う。
久し振りに鮎川と真正面で向かい合う。
ニッコリと笑ってるはずの鮎川から感じるのはムッとした不機嫌さ。
「あそこのテーブルにお願い」
視線で示されたテーブルには見慣れた顔が二つ並んでた。
拍手コメント返礼
アーティーチョーク 様
駿の正体がばれてないのは道明寺と美作の圧力ですよね。
翔五郎さんは駿のことどう思ってるのでしょうね。
いいやつでも娘の彼氏としては別物ってこともありますからね。
ことり様
いずれは道明寺邸に招待される鮎川親子。
そこでしゅんくんの正体が監督にわかるって言うのもありだな。
・・・とコメントを読んで思いましたよ♪