失踪!

子どもの大会の応援とすぐその後はお盆ということでなかなか時間に余裕がありません。

ということで久々の短編を予約投稿して乗り切ろうという魂胆です。(^_^;)

お付き合いを♪

今日から福岡に行って来ます~

*

「なんで、でねェンだ」

ここ数日、牧野と連絡が途絶えた。

牧野の家の社宅にも人影がない。

夜も家の中の明かりがついた形跡もなし。

忽然と家族が消えたそんな印象。

どこに行った?

夜逃げ?

今、あいつんちに借金は無いはずだぞ。

それにそれなら俺に言えばどうとでもなる。

「大学に入学して、少しゆとりのある生活ができるようになった」

確かそう言ってたよな?

まさか俺のせいで!

またお袋か!

それもない!

最近お袋はやけに牧野を褒める。

もともと牧野は頭がいい。

頭の回転も速い。

俺にはかなわないけどな。

相手の意思を読み取って動くタイプ。

これなら鍛えれば俺の妻、道明寺総帥の妻としてやっていけるとお袋も牧野を見直し始めてる。

後は、俺への恨みで牧野に魔の手がッ!

英徳高校での俺の傍若無人さは、

今までも牧野を危険にさらした前科がある。

これが一番あり得るか!

どいつだ!

数が多くて思い出せねぇーーーッ。

その前に半殺しにした奴らの名前も顔も、もともと、覚えてはいない。

どうする!

「坊ちゃん、何かあったんですか?」

「あっ!」

抱えこんだ顔を上げてその声の方向を向く。

「そう、ウロウロされるとそばにいる私も落ち着けません」

なにごとにも動じない無表情で、そうつぶやかれても説得力ないぞ。

おおそうだ、こいつがいた!

俺のやったことの処理は全部西田がしていたのだから、こいつのコンピューター並みの記憶の中に残ってるはずだ。

「西田、俺が英徳をやめさせた相手を全部調べろ」

「今からですか?」

「悪いか」

「今さら贖罪・・・」

「・・・って、わけじゃなさそうですね・・・」

睨み上げた俺の顔付きで西田がそう付け足した。

「牧野がいないんだよ」

「・・・」

無言の西田が銀縁眼鏡の位置を直す仕草を見せる。

きらりと目の奥が光ったように見えたのは気のせいか?

「家族ごと失踪して、3日前から連絡が取れない・・・」

「俺に原因があるとしか考えられない」

「さっさと調べろ!」

お前なら、「もう調べてます」と、すぐに情報を開示が出来んじゃねェのかよ。

「坊ちゃん・・・」

おっ、その表情は分ってるって俺に期待を持たせる表情。

「つくし様なら、ご家族と秘境の温泉ツアーにお出かけです」

「携帯もつながらない人里離れた静かな場所だそうですから、連絡が取れ無いのも致し方ないと・・・」

西田の冷静な声が俺の期待とともに俺のプライドをも粉々に打ち砕く。

「なんで、お前が知っていて、俺が知らねんだよ」

喉の奥から絞り出す苦々しい声。

「坊ちゃんに知られると邪魔されると思ったんじゃないですか」

「最近つくし様を坊ちゃんは束縛気味でしたからね」

牧野に西田が同情してるとでも言いたげな態度。

「つくし様と過ごせない間、たっぷりと仕事に専念出来るはずです」

西田がコツコツとデスクの前に数歩歩いて詰みあがった書類の山を人差し指でコツコツと叩く。

「俺はまだ、道明寺フールディングス代表と大学生との二足のわらしだぞ」

3対2の割合の二つの生活。

徐々に仕事が面白くなってるのは認める。

「代表・・・」

いきなり坊ちゃんの呼び名が変わった。

「・・・二足のわらじです」

「座敷童の方がいい仕事してます」

はっ?

るっせ~ッ!

早く牧野の居場所を教えろッ!