いくつもの嘘を重ねても 30

お盆休みで旦那の仕事も子供の部活も休みに突入。

ビクビクしながら二次書いてます。

暇な時間って、家族がいるとなかなか作れないんですよね。

平日より忙しく動いて主婦してると実感してます。(^_^;)

お休み中にいただいたたくさんのコメント。

ありがとうございます。

3部作じゃ物足りないって、期待感をヒシヒシと感じさせてもらいました。

おまけが書けるひとりの時間が欠乏中です。

時間がないので今回はコメントのお返事より小説の更新を優先させていただきました。

*

牧野を半分強制的に車の後部席に押し込んだ。

膨れっ面はそのままに後部席左右に離れたまま距離をとる俺達。

「新しい、ネックレスもらってもなんにもならないって思う・・・」

窓に視線を向けたまま独り言のように牧野がつぶやいた。

「同じもの作らせるから問題ないだろう」

「そんなものじゃないの!」

色、デザイン、形、重さ、全て一緒、すり替えても気が付かないって絶対思う。

こだわること自体は俺には不可解。

取り戻しったと、何気なく渡すって、手もあるな・・・。

「無くしたらぶっ殺す・・・」

小さくつぶやいた声はかすかにその意味を俺に理解させた。

「思い出したのか?」

思わず牧野の肩を掴んで俺の方に振り向かせた。

「道明寺ならそう言いそうじゃない。図星だった?」

目を細めて俺からかうように下から牧野が覗き込む。

牧野の俺の記憶は、ほとんど俺の気質に的確にたどり着く。

我儘!横暴!傲慢!

むくれるたびに投げつけられた言葉。

それでも好きって言ってたのはお前だからな。

すべるように道明寺邸宅の門を車がくぐる。

「朝も思ったけど、個人がここに住むって贅沢だよね」

キョロキョロと初めて来たような牧野の態度。

車の窓を開けてすぐにでもそこから身体を乗り出しそうな勢い。

子どもっぽい反応。

記憶のあるお前は今ではほぼここの住人。

使用人との信頼関係は俺が嫉妬したくなるほど良好で、未来の若奥様の地位を完全に固めてる。

俺の側に牧野がいると使用人の安堵感がしっかり態度に出る。

牧野がいないとがっかりした表情を見せられるんだぞ。

ほら今日も!

俺の側におまえが立ってるのを見つけただけで声がワンテンポ早く明るくこだまする。

「お帰りなさいませ」

自分に向けられた朗らかすぎる声に牧野が身体を硬直させた。

助けを求めるように俺の腕に牧野の指先がしがみつく。

「ただいま・・・で・・・いいの?」

「殆ど、一緒に住んでるようなものだからな」

表現は大幅に誇張。

滅多に泊まってねェーけど。

泊まっても部屋は別々。

特におふくろがいるときは要注意。

「古い人間だと思わないでね。けじめをつけられない人間は信用出来ないものよ」

牧野に言ってると言うよりは俺に言い聞かせてるお袋。

タマの方がその点は融通が利く。

ほんとう?

確かめる様な目つきで俺を見つめる。

縋るような色が浮かぶ牧野の瞳。

意外に色っぽくて、ムカつくくらい可愛いくて仕方ない。

「俺達、婚約して何年になるか知ってるか?」

憶えてるわけねェか。

「私が高校を卒業する時だったよね」

今のお前は指を折って数えなきゃなきゃ、二人の重ねた歳月がわかんねぇんだな。

大学を卒業したら即結婚式だと俺は指折り数えて待ってるんだぞ。

使用人の見送りを受けながら屋敷の奥に進み俺の部屋の扉を開ける。

誰もいないはずの部屋に人の気配がかすかに漂う。

「いつまで待たせるの」

威圧的で不機嫌なおふくろの声。

一言発するだけでその場の空気の色が変わる。

「だれ?」

耳打ちする牧野。

本当に記憶が無くなってるんだな。

お袋の前ではピンと背筋を張りつめる牧野の緊張感が今はない。

「無事で、良かった」

少し震えたおふくろの声。

今回俺以上に牧野の生存を信じて動いてくれたお袋。

「すぐに、連絡をくれるのが本当でしょ」

牧野に見せた柔らかなまなざしは、すぐに冷たくなって鋭く俺を突き刺す。

気が利かない!

バカ息子!

お袋の視線はそう言って俺を責める。

悪かった。

今回は素直に謝るよ。

声にはせず心の奥で・・・。