いくつもの嘘を重ねても 31
楓さんがしっかり絡んでくるお話は今まで書いたことなかったんですよね。
今回はどうなのかなぁ~。
挑戦だ!!
*「本当に憶えてないのね・・・」
慈愛に満ちた瞳が淋しげに微笑む。
お袋のこんな表情を見たのは初めてのような気がする。
俺にも自分の感情を見せたことがない鉄の女と今でも言われ続けるお袋。
道明寺の為が最優先で・・・
判断基準は何時もそれで・・・
親の愛情なんて感じたことがなくて・・・。
そのお袋も・・・
俺も・・・
変えたのが牧野、お前なんだよな。
お袋と初めて会ったという感じで不安気な表情を浮かべて牧野が俺を見る。
「俺の母親だよ」
今度の件では俺以上におまえのことを必死で探してくれたんだぞ。
記憶を取り戻してるお前なら、それを聞いたら、きっとクシャクシャに泣いて感動すると思う。
俺達を引き離すために冷酷に動いたお袋。
自分でも母親がここまでキライになれるって感じるくらいのおふくろの仕打ち。
「心配かけてすいません」
牧野が腰を折ってフカブカと頭を下げた。
「心配するのは当たり前でしょう」
感情を押し隠す様に冷静を装う口ぶりに変わる。
そんなお袋を見直したって言うか、うれしぃつーか・・・
心が和らぐ。
「包容力があって、優しそうなお母様だね」
にこにこと俺に笑顔を向ける牧野に目が点。
何時ものお前なら・・・
おふくろの前じゃ、緊張に緊張を重ねて、絶対失敗できないって気を張っていて、笑えないくらい必死で・・・
道明寺の為に頑張るってすげー健気で、邸の使用人たちの涙を浮かべながら応援してる。
牧野に与える印象違い過ぎじゃねェかぁぁぁぁ。
これって、牧野の記憶の回復にどう影響する?
駄目じゃないのか?
ここはおふくろに冷たく、怖く、意地悪く牧野に接してもらう方が現実味があるはずだ。
「なぁ、お袋、俺たちの交際を反対していた時の冷ややかな態度をとってくれ」
牧野からお袋を引き離す様に部屋の隅に連れて行って小声で呟いた。
「司、いったい私に何をさせたいの?」
冷ややかないつもの表情が俺を威圧する。
俺はびくともしねェけどな。
今は押し黙ったまま何も言えないガキじゃない。
「牧野の態度はお袋の前で見せる何時ものあいつじゃないだろう」
チラリと牧野を気にしながら、聞こえない様におふくろに告げる。
「記憶がなければ当然でしょう」
「私に心を許してるつくしさんも好ましく思えていいと思うけど」
肩まで左手を上げったお袋が牧野に小さく手を振る。
俺が良くねェッ!
そんな愛想のいいお袋は道明寺楓じゃねぇだろう!
颯爽と一分の隙もなく対座するお袋が道明寺楓だろうがぁぁぁ。
「これを機に、私とつくしさんの関係も何か変わる気がしない?」
それよりまず俺とのことを思い出す方が先決。
お袋と牧野の関係なんてたいしたことじゃねェぞ。
「俺と牧野が付き会うのを反対して邪魔していたのは、どこのどいつだ!!」
荒げる俺の声がヘ部屋の中に充満。
「さぁ、誰だったかしら」
しらっとしたお袋の声。
「そんな人いたの?」
駆け寄ってきた牧野が俺の襟にしがみ付く。
「私たちのこと、快く思っていない人がいたわけ?」
えっ・・・
あっ・・・
「大丈夫よ」
余裕の笑みを浮かべるお袋。
俺は「お袋だ」って言う答えを告げる機会を失っていた。
「あなた達のことは私たちはみんな祝福してるから、だから心配しないで・・・」
お袋が牧野の肩を優しく抱く。
それっ!俺の役目じゃねぇの?
「記憶を早く取り戻します」
お袋から離れた牧野が俺を見つめてそうつぶやく。
「まずは、ネックレス・・・」
決心したように牧野が右手で拳を作る。
「道明寺!邪魔しないでよ!」
キッと吊り上った両眉。
ぎらぎらと輝く意志の強い輝きが増す瞳。
だから!
お前一人を錦織に会わせられるわけがないと言ってるだろうがぁぁ!
言葉じゃなく向かい合った瞳から花火が飛び散る攻防。
負けるか!!
拍手コメント返礼
Gods&Death 様
気が付くのに一晩経っちゃいましたが、読んだ後に削除しておきました。
もっと早く気がつけば良かったんですけど・・・すいません。(^_^;)
私もこの夏、旦那と言い合いしましたよ。
男性と女性の感性の違いなんでしょうけどね。
旦那の妹家族が帰省するのに旦那は家に泊めたがって・・・
実家はうちの家から車で40分くらいの距離。
久々の帰省、私に気を使うより実家でのんびりしたいと思うよと私は思うわけで・・・
案の定すご~く気を使われて本当にごめんねとおもう私の気持ちとは裏腹に旦那は満足そうでしたが・・・。
この感覚の違いで何度ケンカしたことか(;_;)
あーーーーッ思い出したらムカついてきた!!
自分の満足度と相手の満足が同じだと思ってるあたり今からも続くんでしょうね。
ソフィ様
本当に暑いですよ~。
今年ほど涼しさを求めた夏はないような気がします。
加賀さんの楓さん。
映画で最期のシーンがいいんですよね。
ついあのシーンを思い浮かべちゃいます。
あのシーンがあるからこのお話の様なシーンも想像しちゃうんですよね。
ソラノカナタとアル王子はどうしてるでしょうね。
いつか王国に司とつくしが招待されるお話なんて書いてみたいと思っています。