我儘な僕に我儘な君 20
この祭りで何か進展があるのでしょうか?
普通に祭りを楽しむことができればでしょうけどね。(@_@;)
*「どれがいいかな?」
「この紺色の浴衣も似合うと思うけど」
舞の部屋は色とりどりの浴衣が散乱中。
どれでもいいだろう!!
女の子にこの言葉が禁句なのは知ってるので渋々眺めてる。
「ママなんて一枚しか持ってなったから悩む事なんて、なかったけどね」
その分今は舞で楽しんでるって俺でもわかる。
何着ても一緒だろう!
それより母さんはつわり大丈夫なのかよ!
具合の悪さは全くなくて舞よりテンション高目だ。
見た目は変わんない腹部を眺めて、あそこに弟か妹がいると思うとなんとなく照れくさい。
あとどのくらいしたら妊娠してるって分ってくるのだろうか・・・。
妊娠発覚の翌日には屋敷中だけじゃなく、会社でも父さんは隠すことなくばらしてたって、母さんは文句言っていたけど・・・。
二人して喜んでいたのは誰が見てもわかる状況で、いまだに新婚かと突っ込みたくなった。
親が仲がいいのは喜ばしいって思えるのは10歳までだぞ。
「翼、覗いてないで一緒に選んでやったら」
目が背中に付いてるかと疑いたくなる母さんの声。
見つからない様にこそっと壁際に張り付いていた俺に、視線を向けることなく母さんが叫ぶ。
「翼に選ばれたらかわいくない」
こっちに顔を向けた舞がべろを出して顔を顰める。
その顔、佑に見せて見ろ!
佑は、優しく笑って「かわいい」くらいのことは言える奴だ。
それは、俺がつまんないかぁ・・・。
母さんに着つけてもらって女の子らしい表情を浮かべる舞。
何時もよりかわいく見えるぞ。
槇の方が可愛いと思うけど。
アイツ、浴衣なんて持ってるのかな?
浴衣じゃなくても舞よりかわいいはずだ。
待ち合わせは祭りの会場前。
河川敷では1万発の花火が上がるって目を輝かせていた槇。
「きっと一番のこの夏の思い出になるね」
無邪気な笑顔が頬を染めて、照れくさそうね俯いて俺から視線を外した。
悔しいくらいに可愛くて、どうしようもなく胸が心拍を上げたのは数時間前。
佑がうちに来たら3人で家を出て、その後俺はアイツの家まで槇を迎え位行く予定。
佑と舞を二人で外出させたら不機嫌になるはずの父さんへのカモフラージュ。
その必要はなかったみたいで父さんの帰りは遅いらしい。
「小うるさいのは追っ払ったから」
ハエでも追い払ったみたいに母さんに言われてしまってるぞ父さん・・・。
「今回はSPもつけないから」
母さんはわかってるからと言いたげににっこりと笑って僕らを見送った。
屋敷の門から出ていく車は最寄りの駅で僕らを降ろして小さくなる。
「それじゃ、後でな」
走りたくなる気持ちを押さえながら、背中を向けて槇の家を目指した。
「翼、飛んでいったな」
翼の姿が見えなくなるまで佑と二人並んで佇む。
何時もなら頭一つ分、私より高い佑。
下駄を履いてるからそれより身長の差を感じて普段と違う雰囲気。
みょうに大人っぽくて、すらりとしたした身体に、仕立てのいい浴衣がますます見栄えを良くしてる。
行きかう女の子たちがチラチラと視線を向ける気持ちもわかる。
なんで、目立つかな?
本当に!もっ!
それは愚問。
うちのパパや佑のパパ。
艶やか遺伝子はしっかり受け継いでしまってる。
私にもパパの遺伝子が半分は入ってるはずなんだけど、なぜかママの血が濃い。
不細工じゃないって思うけど周りの基準が高すぎなのよ!
「舞って、電車乗ったことあるの?」
「えっ?」
「電車に乗ったことある?」
口もとをわずかに崩して佑が笑う。
「まぁ・・・何度か・・・」
それは母さんの教育方針の一環。
一人で乗ったことは無い。
それでも後ろにママとSP付きなら経験あり。
切符も、改札口も一人で乗った。
乗った電車にママと駿おにいちゃんと翼と私の4人だけってことを今なら異常だと分かる。
「俺さ、初めてだから」
「えっ?」
「電車に乗るの」
「よろしく頼む」
腰を折って丁寧に頭を下げた佑のつむじが見えた。
佑の頭のてっぺんを見たのは子どもの時以来かな。
左回りのつむじの向きは子どもの頃とおんなじで、オトナっぽく見えた佑が何時もの佑に戻った気がした。
「しかたないから。教えてつかわそう」
少しおどけて気取った態度で低めに声を出す。
頭を上げた佑が大きく息を吹き出して笑った。
降りる駅を確かめながら金額を確かめる。
あっ・・・お金・・・
財布を持ってくるの忘れてる。
私の手元を除きこんだ佑はしっかり財布の中から硬貨をとり出して二人分の料金をカランと販売機に投入した。
出てきた切符を持った反対の腕が私を掴む。
電車に乗ったことがないといった言葉が嘘だと思える手際よさで、改札を抜けてフォームに向う。
「乗り方、知ってるんでしょう?」
「知らないよ。でも、周りを見てればなんとなくわかるでしょう」
「浴衣を着てる人に付いて行けば祭りの会場にはいきつけるわけだしね」
佑に任せてれば大丈夫だって思える信頼感。
それとは別のさっきまで私に芽生えていた優越感が無駄に感じて淋しくなる。
自分が子供っぽく見える瞬間が、心を頑なに、我儘にさせるって気がする。
「なんだか、面白くない!!」
呟いた目の前にホームに入ってきた電車が止まってドアが開く。
無言で佑の腕を引っ張って私から乗り込んだギュウギュウづめの電車。
少しも動けそうもなくて、押されたままに佑の襟元に顔を押し付けられてしまってる。
佑の腕が伸びるのが視線の端で見えて息がしやすくなった。
佑の腕の二頭筋が私を守るために耐えてるのが分かる。
「大丈夫か?」
「佑の方が大変そうだけど?」
「舞を、他の奴に触らせたくないから」
ドクン・・・
聞こえた声に誘われるように上げた視線。
ドクン・・・
佑の顎のラインし見えなくて。
ドクン・・・
佑の表情が読めない。
ドクン・・・
この状況じゃなくても、確かめるのが怖くて佑の顔を見れない気がしてきた。
ドキンッ!
静まれ!心臓!
拍手コメント返礼
やなぎ様
よし、来た!のコメントにニンマリしちゃいました。 !(^^)!
夏は短いぞ~
ことり様
満員電車のシュッ、少女マンガの王道ですよね。
電車と言えばホームでの別れかなぁ~。
花男では空港ですけどね。
早く進展してほしい気持と、なかなか進まない状況も考えちゃってます。
Gods&Death 様
この二人はじれったい感じで進めていきたいんですよね。
佑君としては自分の気持ちしっかり言っているのにそこに踏み込めない舞ちゃんという感じで♪
この後はどんなデートになる事やら~。
また舞ちゃんが暴れたりして・・・(^_^;)
あずきまめ 様
邪魔者いないですよね~
今は・・・
翼君が邪魔者になっちゃってりしてね。
アーティーチョーク 様
二組のデートどうなるんでしょうね。
心を忘れていた青春時代に戻す作業から取り組んでいます。
花火大会のスポンサーがf4企業!!
そこまでは思いつきませんでした
。
それ尾はそれでおもしろそうだゎ~。
「舞どこにいる!」
「帰って来い!」
花火を打ち上げる前にアナウンスかけられちゃったりしてね。(*^_^*)