DNAに惑わされ 5
さあ~ここは駿君カッコよく。
「こいつは俺んだ!!」
ボキッ!バキッ!
あっ・・・
これは司パパだった・・・(^_^;)
*
「悪い、他の子を誘ってくれる?」
カウンターの椅子に腰かけながら、カウンターの上のチケットを乱暴にそいつの胸ポケットにねじ込んだ。
「なにするんだ!」
そいつのポケットからのわずかに飛び出すクシャっとなったチケット。
フンと息巻いた顔が、僕を見て一瞬戸惑った。
「あっ!お前!CMの・・・」
ここで僕が何かやらかしたらCMつーか道明寺フォールデングスに傷がつくのだろうか?
僕と鮎川の顔を見比べて「どういう関係だ」と興味津々な声。
「彼氏の前で彼女を誘わないでもらいたい」
「プッーーッ」
頭から流れ滴り落ちる水滴。
転がった氷が数個床に転げ落ちる。
そいつの後ろにはグラスの口を下に向けたまま立つ父さん。
振り返ったそいつはびくついたように椅子から崩れ落ちた。
「このくらいやらなくてどうする」
道明寺ホールディングス代表として、その乱暴さはどうなのだろう・・・。
影響をこの人は考えないのだろうか。
見下す視線は冷ややかで、冷気が床から体中に染み込んで来る。
痩せこけた野犬がボスに睨まれてきゅぅんと一声泣いて尻尾を丸めた状況。
四つん這い気味に足と手を高速に回転させる勢いで店を飛び出した。
「わざと事を大きくする必要はないと思うけど」
グッッと握りしめた拳。
ほっといてもらいたい。
この時ほどそう思ったことは無い。
僕が鮎川の側に戻って数分も経ってないのに出てくるな!
ここは黙って見てるのが親の務めじゃないのか!
母さんが来るのをおとなしく待ってろよ。
「おっ、珍しくムッとしてるな」
ニンマリとした顔がからかう様に僕の鼻先に近づく。
「やっぱり似てるよね」
「もしかして、これ撮影?」
キョロキョロと店内のカメラを探す様に数名の客が眺めてる。
「お騒がせした。お詫びに好きなものを注文していただいて結構」
「撮影の協力ありがとう」
一瞬で周りを惹きつける微笑。
柔らかい表情は、母さんと結婚する前は到底無理だった営業スマイル。
『経営者としては統率する力とともに人を惹き付ける魅力が必要なものです。』
父さんの第一秘書の西田さんは父さんを見つめながら時々自慢げにそうつぶやく。
静まる店内はすぐに明るさとその上に華やかさまで取り戻してしまった。
「いつ、放映されるのか?」
ちらほらと聞こえる話し声。
放映されることは無い。
勝手に解釈されて、勘違いされて、道明寺司のイメージはUpしてる。
「行くぞ」
入り口のドアの前に走る千葉さんがドアを開ける。
すれ違いざまにポンと肩に置かれた大きな掌。
『邪魔して悪かった』
そう、父さんの声が聞こえた気がした。
ドアが閉まったその先で母さんと落ち合う父さんの姿が見えた。
「情けない」
カウンターにうつぶせて顔を隠したいどん底の気分。
「面白いよね」
「えっ?」
「駿君のお父さん」
小さく耳元で囁く内緒の声。
「誘われたのが母さんなら有無を言わさず殴られてると思う」
「水を頭からかけるのも乱暴だと思うけど」
小さく微笑んだ鮎川はじっと僕を見つめる。
「CMのことがばれてドキッとしてたでしょ」
「ヤッパリ、評判を気にしたんだ?」
「別に」
「ウソ」
「ウソじゃないって」
そして、クツクツと鮎川は笑う。
「自分の事より、私のパパやスポンサーへの影響気にしたんだよね」
「駿君はそんなとこ冷静に分析しちゃうところあるから」
それでも我慢の限界はあるってこと鮎川にどう告げればいいのだろう。
「一番、守りたいのは鮎川だから」
黙ったまま過ぎる時間。
数秒のはずなのにやけに長く感じる沈黙。
何か答えろよ。
店の奥に姿を隠した鮎川はすぐにモップを持って現れる。
僕に背中を向けながら濡れてる床を拭き始めた。
「サラリと言えちゃうあたり、君たち親子だよね」
「似てる・・・っ」
いっぱいいっぱいに力を込めて仇を討つ様な力強さで床を磨きあげる鮎川。
こぼしたの無色無臭のただ水だよな?
鮎川が真っ赤になってるの僕は気が付かないフリをするべきなのだろうか?
口もとに拳を当てて、隠しながら今度は僕がクツクツと笑い声を押し殺した。
拍手コメント返礼
オオイタッコ 様
そうそう息子の方が大人。
思ったままに感情のまま行動しちゃいけませんよね。
影響力は相当ありそうですもの。
もみじ様
落ちついた司は面白くなさそうで・・・(^_^;)
茶目っ気のある大人で、何をやっても許される力を持っていて、それでいてつくしちゃんにだけは弱い。
そんな司がいつまでも見たい~。
「いい加減にしろ!!」by司
Gods&Death 様
駿君まで強くなったらつくしがたいへんそうな気がします。
自分の息子だったら・・・
育てやすくていい息子でしょうね。
かよぴよ様
あはは、確かにパパに惚れちゃってもおかしくないかも~。
アーティーチョーク様
司君ナイスサポートなのかしら?
駿君もしっかり対処できたと思うのに、いいところを持って行かれた感じが残る。
駿君拍子抜けだろうなぁと思いながら書いちゃいました。
司ならこのくらいのサポートやりそうですからね。
騒ぎになったら親子関係がばれるのも時間の問題かも・・・(^_^;)