スピンオフ いくつもの嘘を重ねても

記憶が戻ったことつくしちゃんいつ知らせるの~と気になるところではありますが、

お話を引き戻してちょっつとしたスピンオフ物語 錦織省吾をお届けしたいと思ってます。

いつもとは違う書き方ですが、お付き合いを宜しくお願いします。

PWの御連絡。

本朝7時までの申請の分は返信してます。

年令の推察できる一文がなかった方いらっしゃいました。

ご案内の記事をお確かめの上での申請をお願いします。

*

「お前、何考えるんだ!」

部屋を照らすシャンデリアの明かりが突き破るような勢いで開けられた部屋の衝撃でゆらりと揺れる。

テーブルの上に乱暴に投げられた新聞。

チラリとその一面に向けた視線はなんのためらいも見せない。

歯痒い面持で新聞を投げつけた高原はテーブルの上にドンと手をついた。

「省吾、目の前で事故に偶然遭遇して、この子を俺のところに連れてきたんじゃなかったのか?」

「身元が確認できるものも持っていない。警察には連絡してるって言ったのは嘘だったのか!」

新聞一面の見開きで、道明寺ホールデングス代表婚約者行方不明の文字が踊る。

載せられた写真を見れば今、ベットの上で眠ったままの女性が誰なのかは一目瞭然。

「トラブルを避けるために彼女は僕の妻だとしてるはずだ」

「目を覚ませば彼女はお前の元を離れるぞ」

打撲と擦り傷程度、数針の縫合ですんだ怪我は、あの事故では奇跡的。

事故から3日経っても目覚めないのが不思議だった。

眠ってるだけの表情は数か月前に無くなった錦織の妻と瓜二つ。

前髪を整えるように錦織の指先が額に触れる。

愛しそうに他人の婚約者を見つめている錦織を高原は哀れだと思う。

それは現実逃避の何者ではないはずだ。

道明寺司に彼女は虐げられている。救えるのは僕だけだ」

偶然仕事の延長で出席した経済界のTOPが集まパーティー会場。

妻を無くして憂鬱な日々を送る錦織を心配した秘書に無理やり連れてこられた会場で彼女を見つけた。

淋しそうに一人取り残されて時間を持て余す様に立ちすくんでいる。

どうしてこんなところにいるのだろう。

そんな姿を天窓から差し込む満月の光が映し出していた。

彼女に前に現れて乱暴に腕を掴んで彼女を連れ去る長身の若い男。

一方的に荒い言葉をはいて彼女を連れ去った。

それが道明寺司とその婚約者牧野つくしだと知るまでにそう時間はかからなかった。

「彼女は、真央さんじゃないんだぞ」

やりきれない表情は諭す声色で高原は錦織省吾の肩を掴んだ。

死期の近い錦織の妻を自宅で見送った高原。

錦織がどれだけ妻を大事にしていたか、その最愛の妻の死の落胆ぶりは、錦織が妻の後を追うのではないかと高原が本気で心配したほどだった。

錦織がこの病院に連れてきた彼女を見たとき息が止まるかと思うくらいに高原は驚いた。

錦織が希望するように特別室で入室者を限定す警戒ぶりで治療を始めたのは、久し振りに英気を取り戻した親友がうれしく思えたからだった。

今はそれも浅はかだったと後悔し始めてる。

相手は道明寺だぞ。

錦織でも隠し通せるはずがない。

彼女が意識を取り戻せば全ては終わる。

その時、錦織、おまえはまた落胆することになるんじゃないのか。

真央さんの代わりは誰も出来ないはずだ。

落胆する錦織を俺はもう見たくない。

トントンとノックが響く。

処置をする看護婦と入れ替わる様に高原はいたたまれないように病室をでた。

「う~ん~ッ」

寝返りをうった身体が横を向く。

ゆっくりと開いた瞼。

少しぼやけて開く視界が二つの影を認識した。

どうして私はここにいるんだろう・・・。

動かすたびに鋭く痛みが身体を走る。

「あの・・・私、どうして怪我してるんですか?」

「自動車で事故にあったって聞いてますけど?」

自動車事故・・・

乗っていた記憶も事故の記憶もつくしには思い出せない。

目覚めたら動かない怪我した身体の自分がベットの上に寝ている。

「ここはどこ?」

「病院ですよ」

笑顔でそう告げる白衣の女性。

「ご主人、優しいですよね。本当にうらやましくなるくらい優しくて、すごく心配してらっしゃいましたよ」

真っ白な天井と消毒液のかすかに匂うシーツ。

手につながったままの透明な管。

少し動いただけなのに骨が折れてるような痛みがズキンと全身に走った。

主人・・って?

私は結婚してた?

何かを思い出そうとするたびにズキンとこめかみに痛みが走る。

なにも思い出せない。

ウソ・・っ。

私は誰?

カチャと音をたてて部屋に入っていた長身の男性。

一歩足を踏み入れてその動きが止まった。

「気が付いたんだね?」

柔らかな笑みを浮かべてベッドのそばに駆け寄った男性が膝をついてつくしの手を握りしめた。

「心配したよ」

心配って・・・この人誰?

警戒するように握られた手を錦性の手の平からつくしは慌てて抜き取った。

「あの・・・誰?」

「一応君の夫だけど」

女性と視線を合わせながら錦織は緊張した面持ちを作る。

ここでつくしが違うと言ったら・・・。

自分は君を守るために連れてきたと彼女は納得してくれるだろうか。

看護師の手前、今の錦織には丁寧に説明することは無理で夫と簡易に説明するしかなかった。

「ごめんなさい、覚えてないの」

省吾の耳元に口を寄せて小さく看護師が「記憶があいまいになってるようです」とつぶやく。

何も覚えてないのか?

驚きに喜びが入れ混じる感情。

「知ってる。それでも君は僕の妻だ」

その感情を押し殺して静かに錦織は呟いた。

「彼女、戻ったんだってな」

「はじめから無理だったんだよ」

屋敷に無断で入り込んできた道明寺の行動力。

記憶を取り戻したわけじゃないのに、一瞬でつくしは司を信頼してる姿を見せた。

錦織には他人行儀で、遠慮がちで、作った笑顔しか見せなくて溶け込めなかった関係。

二人が再開した瞬間にこの結末は予想できた気がした。

つくしを病院から錦織の家に連れて行って過ごした時間はあまりにも短かったが、つくしの中に妻の面影を追えば追うほど違うと認識させられた。

道明寺司を見て、一瞬で溶けこむような笑顔。

真央が自分に見せていた笑顔を彼女は道明寺司に向ける。

彼女が記憶を無くしたのは自分を立ち直らせるための妻の差し金だったのかもしれない。

「亜美ちゃん、ずいぶん大きくなったろう」

高原は何にもなかったようにカランとグラスの中なの氷を揺らす。

「だんだんと、真央に似てきた」

どうしてあれほど彼女に執着していたのか、今となれば笑える話だ。

大切なものをすべてなくしたわけじゃない。

もし・・・

彼女が記憶を無くしたままで、自分の側に置いても心の穴を埋めることは出来なかったと今ならわかる。

上げたグラスが高原の差し出したグラスと合わさってカチンと涼しげな音を奏でた。

次回は番外編でつくしの記憶が戻ったことを知った司の反応をお届けいたします♪

拍手コメント返礼

Gods&Death 様

つかつくがなんで言い合いしていたのがそっちが気になってしまったりしてます?

確かに短編出来そうなんですけどね。

ケンカの内容はどうでもいい事でしょうけど。(^_^;)