いくつもの嘘を重ねても 34(完)

お話を書き始めたのは4月。

朝の一コマから始まって事故が起きてつくしが記憶を失う設定。

頂いたリクエストはエレベーターの事故でつくしが記憶を失うというものでした。

事故でつくしが行方不明になって見つけたら司のことをすっかり忘れてる。

話が深まって面白そう。

それじゃエレベーターの中での事故は無理。

それでは場所を別なものに置き換えてと、お話がスタートしたわけです。

そこまではすぐに浮かんだんですが、どうやってつくしは居なくなったことにするか?

その理由はどうする?

思いついた矛盾点を無くしながら書き始めたら、その作業の辛いこと悩むこと。

やっとここまで来ました。

お付き合いありがとうございました。

次回は番外編で~♪

*

開いた箱の一番上、ビロードの生地の細長い箱。

入れ物で入ってるのはネックレスだと分かる。

開いた箱の中には小さな丸い白い珠が、天井から差し込むライトの光に輝いて見えた。

これだ!

確かにこのネックレス。

間違いないよね?

手の中に、もう無くさない様に大事に輝く珠を包み込む。

冷たいはずのだんだんとネックレスが熱を持って、胸の中まで熱くなって、これ以上に大切なものなんて、ないって気持が浮かぶ。

会えない道明寺の代わりみたいで、道明寺に包まれてる様に感じていた記憶がそこにあった。

「これ・・・」

握りしめた手の平をそっと道明寺の目の前に差し出す。

ゆっくりと開いた手の動きに合わせるように道明寺の口元が蕾を開くように微笑んだ。

「お前のだ」

鎖を道明寺の指先が掴んで目の前で土星の形の小さな珠がユラユラと揺れる。

私の後ろに回った道明寺の手が軽くうなじに触れる。

肌に優しく触れた指先は長い髪を書き上げてネックレを私の首に掛けて手留め金を止めてくれる。

数グラムのネックレスの重さがピッタリと肌になじむ。

指先で触れ土星の形のペンダント。

その感触にホッとした。

「ほかに、なにかあったら言ってくれ」

何の未練もないという様に背を向けた錦織さんは部屋を出てドアをパタンと閉めた。

「あいつも、気が利くな」

「うん・・・」

私を見るときに切なそうで、淋しげな色を見せた錦織さん。

もう振り返らないって意思の輝きを見せた今の姿はもう二度と私を必要としてないって思う。

「同情したような表情を見せてんじゃねェよ」

「別に同情なんてしてないわよ・・・けど・・・」

「けどって、ほら、同情してんじゃねェか」

「優しかったから、本当に大事に私を扱ってくれたから」

「俺以上におまえを大事にしてる男がいるわけないだろう」

ムッと膨れた道明寺は、可笑しくて、我儘な聞き分けのない子供のよう。

自然と頬がほころぶ。

『牧野、元気か。俺はまあまあ元気だ。』

頭に浮かんだ、お世辞にもきれいとは言いにくい文字。

時々涙が潤んで読みにくかった記憶。

『俺は突然だけどNYにいく。

 経営の勉強をするためだ。

 俺は天下の道明寺財閥の跡取り息子だからな。

 仕方がないことだ。

 牧野を最初は、なんだこのナマイキなちんちくりんと思ったが、  いつのまにか、おまえを好きになってた。

 最初にであったときからもう、おまえのことが 気になってたのかもしれない。

 赤札はってひどいことしたりしたのに、  エレベーターで風邪の俺に、やさしくしてくれて おまえは優しい やつなんだと思った。

 三条桜子の仲間にぼこられたときに、 あんなに殴られたのははじめてだったのに、 人は俺に殴られたとき、 こんなにも痛いのかと、牧野のおかげで勉強になった。

 類が帰ってきたときは、おまえが類が好きだから類とつきあうのかと思ったけど、俺はおまえを信じてた。

 俺の仲間もきっと、おまえが大好きだ。

 何にもできない、ビンボーで、庶民で、 どうしようもないおまえだけど。

 TOJで優勝させてやれなかったのは、俺の責任だ。

 でも、おまえは最高だ。

 さすがおれが認めた女だと思う。

 あと、残念だったのは、  おまえになまの土星をみせてやれなかったことだ。

 俺とおまえは、星占いでいくといっしょの土星人だから、たぶん、たのしいときも、苦しい時も運命共同体だ。

 だから、おまえに土星をプレゼントしようと思う。

 俺が初めて女にわたすプレゼントだから なくしたらぶっ殺す。

 でも、おまえといると、ほんとにいつも楽しかったような気がする。

 だから、おまえに会いたくなったら、帰ってくるかもしれないけど一度決めたことだから帰らない。

 おまえもがんばれ。

 俺もがんばる。

 じゃあまたな。 

    道明寺司より』

小学生の作文みたいで、決して文章も上手くない手紙。

何度も、何度も読み返して、まるまる暗記してしまっていた。

道明寺から最初で最後のラブレター。

私の勉強机の奥の奥に大事に隠してあるはずだ。

NYに行く道明寺と別れるために走った滑走路。

花沢類に背中を押してもらってようやく素直になれた。

「何やってんだバカ!勝手に入り込んできて」

飛行機からとびおりて私にかけ寄って来た道明寺。

「バカはどっちよ!  なんであたしに何の相談もないのよ!  いいかげんにしてよね!」

あの時の私は道明寺に反抗しながら半泣きだったよね。

「あたし。大事なこと、道明寺に何も伝えてなかったから」

「大事なこと?」

「ありがとう・・いつも。

 いつも、あたしを信じてくれて、

 思ってくれて。 ほんとに、ありがとう。」

「これも・・ありがとう」

差し出したペンダントを今日と同じように私に付けてくれた。

「俺はさらにすげー男になって、戻ってくるよ。

 おまえが頼んでも、いっしょにいてやれないくらいパワーアップしてると思う。

 でも、今もこれからも、これから先ずっと、おまえだけが俺の認めた女だと思うから。

 牧野とは一緒にいてやる。

 嬉しいだろ。」

道明寺の俺様な言い草が道明寺らしくて、そのことが別れる辛さを軽くしてくれた。

「ありえないっつーの!」そう言ってまた泣いた。

「うそつけ、おまえ、俺に惚れてんだろ。」

「惚れてるよ!

 バカで、わがままで、自己中の道明寺に惚れ・・」

夕暮れの滑走路でキスして抱きしめられて感じた道明寺の熱。

記憶はすべて鮮明に蘇っている。

「なに、じっと見てんだ」

「俺がいい男過ぎて目が離せなくなってんだろう」

「うん」

道明寺の表情が予想が外れて拍子抜けの間抜けな顔になってる。

違うとか、バカとソッポを向けるはずと、きっと思っていたはずだよね?

何時もの私ならきっと期待に応えていたと思うよ。

「さぁ、帰ろう」

「おい、これどうする」

ペンダントだけ受け取って、後の箱はそのままにしたまま部屋を出ていく私。

ペンダント以外何もいらないから。

そして大事な思い出の記憶も取り戻せた。

箱と私を交互に見つめながら、箱をどうするか迷ってる道明寺が笑える。

道明寺に記憶が戻ったこと・・・

何時告げよう。

「おい、待て」

あたふたしてる道明寺が可笑しくて、フフッと声がこぼれた。

                                    

久々に花男ドラマ最終話を見直しました。

セリフについては間違ってるかもしれませんが、その時はすいません(^_^;)

予想通り、ペンダントで記憶とり戻しました。

安易ですけどね。

錦織君にもう一働きと思ったのですが、そうするとどこまでもゴタゴタして、終わりが見えなくなりそうなので

止めました。

つくしちゃん、すぐに司に記憶のことを教えたのかしら?

拍手コメント返礼

ままなめこ

最期までお付き合い会有り難うございました。

次回作はFその後のカテゴリーとなりますがオモシロく仕上げたいと思ってます。

あずきまめ 様

司の別れの手紙、隠れた名品って感じがするんですよね。

いつかは使いたいと思っていて、今回使わせていただいた次第です。

花男見だすと時間が~~~~~。

Gods&Death 様

そうですよね。ドラマを見てない方には?

もっと細かく描写するべきだったかな?

お付き合いありがとうございました。

トマト様

嬉しいです。ありがとうございます。

最期は全部ハーピーになれるお話をこれからも書いて行こうと思ってます。

やなぎ様

☆マーク♪

番外編はお星様多いですからね。

ココア様

じっくり!!

ドキドキ・・・

>最後は司に記憶が戻った事を知らせずつくしのすっきりとした気持ちがメインで終わるのが何ともいいですね。

ありがとうございます。

何時もなら記憶が戻った事を知って暴走気味の司のパターンなんですけど、エンディングとしてはこちらの方が

余韻を残しそうで今回はあえてここで終わりにしました。

シッカリ番外編用意させていただいてますけどね。(笑)

一つ終わってゆっくりしたいんですけど・・・(^_^;)

まだあるんですよね連載が~。

パズルももうすぐ終わりです。

もみじ 様

そうそう、今回は司君すご~く頑張ってるんですよね。

きっといいことが待ってるぞ♪