DNAに惑わされ 7
駿君一人暮らし?
1DKのアパートで~♪
道明寺の御曹司が住むような場所じゃないところの安いアパート暮らしも面白そうなんですけどね。
*
「ここって・・・」
玄関に1歩足を踏み入れた時から絶句。
「必要なものは運んであるから、足らないものがあったら、これで買え。」
パチンとテーブルの上に置かれたカード。
使う金額に制限額はない代物。
牧野家に、これ以上迷惑をかけられないと聞かされた1時間後の出来事。
「淋しくなったらいつでも戻って来いよ」
ずり落ちる鼻水を吸い上げながらおじいちゃんが見送ってくれた。
数段の階段を駆けのぼって通った入り口の先に広がる大理石のフロアー。
24時間警備員が常駐する受付。
最上階までノンストップのエレベーターは、最上階のフロアー住人しか使用できない専用エレベーター。
ここに一人で住むのか?
リビングの広さだけで牧野家の敷地面積より広い。
10人は余裕で座れそうな革張りのソファ。
100インチのテレビ。
ここで会議を開くつもりじゃないよな?
「ちょっと、ここって!」
思い切り不機嫌な声を上げたのは僕じゃなく母さんだった。
「これ以上の警備は出来ないからな」
満足な笑みを浮かべる父さん。
「警備のことじゃなくって、一人で住むには広すぎでしょう」
「掃除も大変そうだし、光熱費もバカにならないんだから」
リビング一室でも生活には十分以上の広さは確かにある。
あの道明寺邸に住んでる父さんにしたら不満過ぎる広さかもしれない。
「本気で言ってんじゃねェだろうな?」
父さの口角がピクリと上がった。
「私もここに来た方がいいかな?」
考え込む素振りで母さんが呟いた。
わぁぁぁっ!それは待って!
父さんが次に発する言葉は想像がつく。
「本気か!」
「俺を置いて駿のところに住むつもりか?」
まだ僕と住むとは母さんは言ってない。
そのままいったら、家族でここに住むって父さんは言い出すに決まってる。
「家族で住むには少し狭いがしょうがないか・・・」
ソファーに腰を下ろして父さんは脚を組む。
「誰もここに住むって言ってないでしょう!」
「それじゃ駿を屋敷につれもどした方が簡単じゃない」
「お前が、ココに住むって言うからだろうがぁ!」
「誰も駿と住むって言ってないでしょう」
「時々見にくる必要はあるかなって思っただけのこと!!」
「誤解する様な言い回しをするお前が悪い」
「いい間違いのひどい司に言われたくないわ」
「誰が何時間違った!」
言い合うごとに睨みあいの距離は二人の鼻先まで迫る。
「落ち着いてよ」
鼻息の荒い二人の間に身体をねじ込んだ。
「高校生の一人暮らしには贅沢だって僕も思うよ」
「ここに住むのが最低条件だ」
静かに低く響く声。
何者にも抗えない強さを持つ。
道明寺総帥の父さんが見せる威厳。
人の上に立つ強さと尊大さをそのまま全身で発してる。
さっきまで母さんと低次元の言い合いを見せていた父さんが恋しい。
「カギはここに置く」
カード型のキー。
指紋に声紋まで登録してるドア。
確かにセキリィティーは随一だって思える。
それでも高校生の僕にここまでする必要はないと思う。
言葉にせずにぐっと飲み込んだ。
反論しても無理だって分かってるから。
「お前は誰の息子だと思ってる。道明寺司の息子だぞ」
言われるんだよなぁ。
「あんまり、ハメを外して悪さするなよ」
帰り際に数歩僕の前に戻って来た父さん。
小さく声を発して、意味深な表情で笑みを浮かべた。
悪さって・・・
「俺も、いろいろ想像してたからな」
耳元で内緒でつぶやく父さんの声。
チラリと母さんを盗み見て茶目っ気を見せる。
一瞬浮かんだ鮎川の顔。
「駿、何かあったら連絡するのよ」
戻って来た母さんは父さんの腕をとる。
聞こえた母さんの声に気まずさを覚えて頭から鮎川の顔をブルって追い出した。
「へんなこと、駿に言わないでよね」
「なんも言ってねェよ」
二人の歩く後ろ姿は相変らず仲良くて楽しそうに寄り添う。
振りかえって軽く手を振ってエレベータに乗り込んでいった。
この部屋に僕以外の誰かが最初に来るとしたら、それは鮎川なのだろか?
切望ッ!
父さんも母さんで想像したのだろか?
母さんは道明寺で使用人として住んでいたことが一時期あったって聞いたことがある。
鮎川が・・・
もし・・・
それはない!
断じて無理!
うわっーーー
身体の奥がむずむずして落ちつけない。
余計な一言をのこしていった父さんを恨みたくなった。
何時もの駿君と違う・・・(^_^;)
ドラマの中のワンシーン。
「ねえちゃんサンキュー」
ベッドの上で悶えていた司を思いだすなぁ~。
拍手コメント返礼
綺羅 様
自制心フル活動する前に同じような状況が作れるかどうかですよね。
鮎川パパも黙っちゃいないでしょうしね。
ことり 様
双子ちゃんより進展は遅いのかな?
ドキドキな展開頑張ります。(笑)
あずきまめ 様
男の子の想像するものを想像する私。
思春期の男の子ってどんなものなんでしょう?
分らないわ(笑)
アーティーチョーク様
想像もできないような豪華な億ション。
友達をだれでもは連れてこれないでしょうね。
様子を見に来た牧野家が住みついちゃったりして(^_^;)
普通に穏やかな一人の生活は出来そうもないような気もしますね。