リミット3
国家を巻き込んだ大騒動にならないことを祈りながら・・・。
警察は完全に巻き込んじゃってるでしょうけどね(^_^;)
*デスクの電話のベルが音を鳴らす。
滅多にならない電話の受話器を左手で取って耳に当てながら右手では書類にペンをはしらせる。
「来い」
「はっ?」
不愛想な威圧的な声。
「いいからすぐに俺の部屋に来い」
忙しいのは司だけじゃないんだからね!!
耳元から外した受話器に文句を言いってガチャンと受話器を置いた。
とにッ!
これでたいした用事じゃなかったら口をきかないからね。
私を呼び出すときは、『予定がキャンセルになったから暇が出来た』
これが第1位の理由。
呼びだしがなきゃ、私の仕事場に顔を出しちゃうから、これも、事務所のみんなが浮足立って迷惑。
次いで多いのが、道明寺司の妻という立場でのお付き合い。
「紹介する」
迷惑だと感じる感情を隠して司の横で笑顔を作ることにもずいぶんと慣れた。
だからって、今は大事な弁護を抱えてるんだってば!
「上に行ってくる」
了解してますと言いたげに頷く事務担当の丸山さん。
代表からの呼びだしですねと輝く瞳が私を見つめて微笑む。
事務所を出て閉じたドアに背中をもたれてため息がついた。
同僚に見送られるたびにどうして恥ずかしい気分にさせられなくっちゃいけないのよッ!
「失礼します」
小さく言ってドアをノックする前に乱暴に開く扉。
慌ただしく飛び出すダークスーツが半ダース。
顔なじみの千葉さんと相葉さんも私に目もくれずに飛びだしていった。
一体なに?
奥の扉の前にデスクにいつも座って私を出迎える西田さんの姿も今日はなし。
司の予定が変わった場合の時は何時も司に会う前に西田さんが「2時間です」とか
「夕方と6時まで予定がありません」と、事前に予定を私に教えてくれる。
何時もと違う雰囲気に嫌な予感がした。
何かあった?
「奥でお待ちになってます」
西田さん以外の秘書が私に声をかけてくるのも異例。
妙な緊張感が身体を支配する。
私の前で扉を開ける秘書。
司の側には数名のスーツ姿の男性と西田さん。
私の姿を見つけると司まで真直ぐに道を開けた。
「どうしたの?」
「駿がさらわれた」
さらわれたって・・・
駿は左門さんちに遊びに行っていたんじゃないの?
「ウソでしょう・・・」
今までに感じたこともない緊迫感のある執務室。
執務室の電話や司の携帯まで線でつないだ四角い箱が置かれる。
こんな大がかりなウソをつけるはずがないって分ってるのにそう聞かずにはいられなかった。
司の胸元のシャツをギュッとに握る指先が色を失う。
「さっき警視総監から直接連絡が来た。総監もすぐにでもここに来るはずだ」
司の声が聞き取れずに頭の中を真っ白に変える。
身体が震えて自分で支えるのも限界の気がした。
「大丈夫だ。俺が助けるから」
「助けるってどうやってよ!」
零れる涙を拭うこともできずに司を見あげる。
司の手の平を頭を包み込んで胸の中にと抱き寄せた。
「駿は大丈夫だ。俺たちの子だろ」
私を抱きしめる司の指先が熱を無くして冷たい。
気丈にふるまっていても司も不安なんだって分かる。
「いいか、このことは他には漏らすな」
「西田、俺に恨みを持っているやつを調べろ」
私を抱きしめたまま指示を出す司の声が頭の上で響く。
ここで、じっとしてってもどうしようもないよね。
自分で出来ることやらなきゃ。
「ねぇ?駿はどこで誘拐されたの?」
視線の先で司が眉が顰めるのが見えた。
「おまえ、自分が動こうって思ってねえェよな?」
司の返事を聞くまでもなく拒否100%の表情が、私を冷ややかに見おろしていた。
拍手コメント返礼
ソフィ様
心臓ドキドキは今からですよ~
まだまだ序の口♪
あずきまめ 様
いてもたってもいられませんよね。
帰ってこないと心配する前に誘拐事件勃発ですからね。
心構えで来てないだろうしなぁ。
司君がとめられたら平和に解決できそうなんですけどね。
アーティーチョーク様
最優先で緊急配備でしょうね。
国家権力に道明寺の財閥力も加わって、犯人は逃げ切らないだろうなぁ~
c4様
狼狽えるつくしちゃんを冷静に支える司君。
今回は司君にカッコよく~♪
というお話になって欲しいものです。