パズルゲーム 43
着飾ったつくしちゃんをエスコートするのは誰?
ここで類が先回りしてつくしちゃんを連れ去ったら!!
面白いんだけどなぁ~
終りかけていた話が終らなくなるぅ(^_^;)
*
「やぁ」
右手を軽く上げて爽やかな笑顔を向けた花沢類。
なんで?
何時ものような、にこやかな笑顔を自然と返せるはずがない。
思わず辺りに視線を走らせ長身のくるくる頭を探す。
ホッとするより心臓はドキドキ。
何処からかドドッと現れる気がして気が気じゃない。
お店の外に横付けされた白いリムジン。
そのリムジンより白いスーツが映えて目を引くサラサラの黒い髪。
少し茶色かかった瞳の神秘さは東洋人の美を輝かせてる。
「心配しなくても大丈夫だから」
ビロードの肌触りの良さの様な心地よい優しい響きを持つ声。
ここでまた写真を撮られたら大騒ぎでしょうッ!!!
今度は道明寺じゃなくてパパラッチの姿を探した。
何処が大丈夫なのッ!
ここで躊躇するより車の中に身を隠した方が身のためのだと思うのは、道明寺へのいい訳としては上手い気がする。
運転手がひらくドアに特急で乗り込んだ。
はき慣れてないパンプスが乗り込む手前の車体にコツンと当たって邪魔!
ドレスの裾は踏みそうになるしで、優雅さとは無縁の乗車姿。
ここを撮られた方が恥ずかしいことになりそうだ。
車のドアが閉まって、スムーズに音もなく走り出す車の外観の方が私より数十倍は優雅な気がする。
着飾ってもそれなりの自分に、なんだか、落ち込んできた。
その私の横には道明寺じゃなく花沢類だぞ!
どういうことよ。
落ちつけるわけがない。
私を支えるのは道明寺の役目でしょ!
何時も私を守ってくれるんじゃなかったの!
理由を教えて!!
感情をこめて目の前に座る花沢類を見つめた。
「会場の入り口で平和に司に牧野を渡せば、どう?」
「どうって?」
「浮気相手にエスコートされた彼女を余裕で出迎える演技ができる司じゃないでしょ」
確かに・・・
不機嫌で、怒のオーラを最大限に発光してそう。
花沢類が私をエスコートしてきても不機嫌さは顔に張り付けてる気がするんですけど・・・。
それは他人にどう評価されるの?
「司が牧野を愛してるのは見てれば分るから」
分るってなに?
『私と花沢類を見つけたらなんで一緒に来る!
俺を待ってるのが妻の役目だろう!』
眉の吊り上った渋い表情がセリフとともに浮かんで、私のいい訳なんて聞く気もなくて責めてくる気がする。
「牧野と一緒に居る司を一番知ってるのは俺だから」
・何処でも目で追ってる。
・見たこともないような笑顔を浮かべてる。
・牧野の側に男が寄れば嫉妬の視線で殺されかねない。
箇条書きで言われてるみたい。
花沢類にしては雄弁。
「それが僕ら親友でもね」
口説き文句のように付け足した花沢類のセリフに致命傷。
恥ずかしさで息を止めらそうになるって、あり?
高級ホテルの会場。
艶やかさは眩くて、一歩足を踏み入れただけで圧倒される。
大学時代から道明寺に連れまわされて経験は積んできたつもりで別格だ!
映画館で見たハリウッドスターがシャンパングラスを片手に持ってタキシードを着て超有名歌手と談笑。
キャーとかワァーとか、感嘆符付きの声を上げてるのに声にならない。
そのスターに負けないような艶やかな光りをスターの先に感じる。
あっ・・・
映画スターのオーラに負けない輝き。
道明寺っ!
この集団の中ですぐに見つけられるのは流石の存在感。
それだけでも驚きなのに、西門さんと美作さん二人が道明寺を挟んで並び立つ。
歩けなくなってる私の前に3人がゆっくりと近づいて足を止めた。
「手間かけさせたな」
静かな穏やかな口調で道明寺が口角をわずかに上げて作る笑み。
皮肉じゃなく満足な感情。
指示した通りに動いた部下にとる最小限のねぎらいに思える。
部下じゃなく花沢類だぞ!
「司の使いぱしりに慣れてるからね」
横柄な道明寺に全く気にしてない花沢類。
相変わらずだと苦笑してる西門さん。
それが司だからと私を慰める様な視線を送ってくる美作さん。
みんな甘いッ!
ふんわりとした穏やかな空気がオレンジに輝いて温かさに身体中が包まれた。