秘密な内緒の話 4(DNAに惑わされ 番外編)
司君のタイムサービス初体験はいかがだったでしょう?
俺様が他人の施しを受けるなんてありえねぇーーーーと次回に闘志を燃やしてたりして。
「次はいつやるんだ?」
真顔で店員に聞いてる司をつくしが激写。
タイムセールで尻もちつきそうな司も一枚添付して、
呟いてくれないかなぁ~。
総ちゃんとあきらくんのネタにされるぞ~。
*
「あら、今日は奥さん袋づめの数少ないんじゃないの?」
「サラリーマン風の兄ちゃんが、ぎこちないつめ方してたから譲ったの」
「そんなに優しくするなんていい男だったとか?」
「確かに、顔は良かったわね。
でも、昼間からタイムセールに参加してるなんてうだつの上がらない能なしじゃないの?」
「顔より稼ぎでしょ」
「うちは顔も悪けりゃ稼ぎもそこそこだけどね」
賑やかな笑い声はフロアー中に響く。
食品売り場を出て通りかかった家電売り場。
手に提げていた食品のいっぱい入った袋。
ジャガイモの袋だけ持ってそのほかは司が強引に袋を私に押し付けた。
井戸端会議の話題の主はなんとなくわかる・・・。
ヒクヒクと引き攣る頬。
背中に炎を背負ってるのが見える気がした。
「悪気はないから、落ちついて」
「俺は落ち着いてるよ」
声が怖い。
「あ~、このテレビに出てる人に似てる」
テレビに流れるのは道明寺ホールディングスの新しい事業参入のニュース。
静かな微笑を浮かべフラッシュを浴びる。
似てるんじゃなくて本人。
まさか道明寺ホールディングス代表がタイムセールに参戦してるなんて思いもしないかぁ。
うだつが上がらないサラリーマンだって思われちゃってるわけだし。
テレビに流れる自分の姿の前に仁王立ちで立つ司。
その前には数名の女性。
「えっ?うそっ・・・」
テレビの画面と実物を見比べておしゃべりが止まる。
「きゃーーーッ!本物!」
黄色く上がる声に年齢は関係ないらしい。
「視察中で、いい体験をさせてもらいました」
うわ~、司の営業スマイル初めて見た。
「これはどうぞ」
ジャガイモの袋を一人の女性に渡す司。
「当店でのまたのご利用をお待ちしてます」
ある意味司がタイムセールに参加するよりレアな場面。
柔らかな物腰じゃなく、態度がでかいのは隠せないけどね。
この店ってヤッパリ道明寺系列のお店な訳ね。
そのまま店を出る司を慌てて追いかける。
「店の評判を落とす様な真似できるわけねえだろう」
ブツブツと口の中で聞き取れない声が不満を漏らす。
年令を重ねても丸くなってるのは表面だけ。
らしくない司が可愛いって思えるのは二人で重ねてきた年月の重み。
「あーーーっ、この俺様がッ!」
最期に飛び出した本音に笑いが零れた。
あっ!ねっ!
ジャガイモ全部渡して料理はどうするの!
駿のマンションの近くで再度ジャガイモを買い込んで目的地を目指す。
一言もしゃべらず不機嫌な司。
だったら、最初から何事もなかったように立去ればいいんでしょ。
慣れないことをしたとばっちりは今どこで爆発するのか。
そのスイッチを押すまえにどうにか爆弾を解体したい気分。
赤と白どちらの線を先に切るか悩んでるうちに駿の新居に付いた。
指紋認証と暗証番号で開くカギ。
暗証番号は1228。
私の誕生日で設定したのは司。
暗証番号を知らされた時の駿の何とも言えない表情が恥ずかしかったんだからね。
「変えてもいいから」
あわてて小声で駿に耳打ちをした。
なのに、まだ変えられてないことを喜んじゃってる。
私の子離れもまだまだなのかな。
早速上着を脱いでシャツの袖をまくる。
えーと・・・エプロン・・・
キョロキョロと探しても自分で持ってこなきゃこの部屋にあるわけない。
しょうがないと材料を洗って包丁を持つ。
「何見てるの?」
「お前がキッチンに立つのを見るの久しぶりだな」
「あんまり見ないでよ」
ジャガイモを向く手が照れくさくなる。
「お前を追いかけてボロアパートに俺が住んだこと覚えてるか」
「ジャガ肉作らされたんだよね」
肉じゃがなんて知ってるとは思わなかった意外性。
いきなり抱きしめられてキュンとなった胸のざわめき。
ピュアな思い出は懐かしさと素直になることに慣れてなかった自分を思い出す。
古臭い流しの前じゃなくピカピカの上品な造りのキッチンは幸せをかみしめるには十分すぎる輝きを放つ。
あの頃の私に、司・・・道明寺と幸せになれるよと教えてあげたい。
「ヒャーッ」
いきなり後ろから抱きすくめれて小さく短めに上がる悲鳴。
「いまさら驚くやつがあるか」
耳元をかすめる声。
「あのね、包丁持ってるの」
包丁を待つ私の手に司が手を添える。
「手伝ってやるよ」
コツコツとまな板にあたる刃の音。
ゆっくりとぎこちなく音を重ねる。
手元を見てなきゃいけないのに10代の頃の自分を思いだして過去に時間を戻してしまったみたいだ。
司から伝わる熱に心臓が悲鳴を上げそうで・・・
心臓の音だけがドクドクと響いて、耐えられそうもなくて・・・
肉じゃが・・・
肉じゃが作ってるのにこんなに細く切ってどうするの!
「手伝いになってないから」
右手の手の平から、腰に回された左手から伝わる熱。
くすぐったさを取り払う様に身体を振る。
「一緒にやらなくてもいいから。司はこれね」
ビーラーを司に握らせた。
これ以上密着されたら何されるかわかったものじゃない。
「これ、なんだ?」
サルが道具を与えられてクルクルと回して興味を示す様な手つき。
「こうやるの」
ジャガイモの皮むきを実戦で見せる。
「簡単だな」
左手に持ったジャガイモの表面に司がビーラーを当てる。
「ずぼっ!」
ずぼ?
聞こえる音は普通はシャーシャーなはず。
皮に分厚くジャガイモが張り付いた5ミリは有りそうな皮がビーラーからぶら下がっていた。
ち**様~
コメントからいただいたおばちゃん目線、食卓での話題じゃないですが拝借して書いてみました。
この後の家族の会話はもっと盛り上がっていたりして。
「今日ね、お母さんはこのテレビの人にあったんだからね」
「いろいろ買物の仕方を教えてやったら、お母さん、感謝されちゃって、握手しちゃった」
「お礼がジャガイモ一袋って、金持ちがケチって本当だわ」
現実より過大に脚色されて話が広がって~♪
ヤッパリさかなにされてるだろうなぁ・・・
拍手コメント返礼
あさみ 様
わが家では娘が分厚く剥いてましたね。
ここまで分厚く剥く方が難しいと思うくらいでした。
司君も半分くらいの大きさまでなってたりしそう。
節約を気にする必要はないでしょうけど無事に料理が出来上がるのかそっちが心配だったりして(^_^;)
アーティーチョーク 様
何時もなら大騒ぎになるところ♪
つくしといると目立つオーラも控えめになってるとか?
今回は何時もの様な大騒ぎにも事件にもならずに穏やかにお話を進めたいです。
はるとん 様
TOPとしての自覚に親としての成長。
頭も下げることも憶えた司君。
頭は下げてないかったか・・・・(^_^;)
内心はべつとしてその場を丸く収める言葉が言えるようになったのはつくしちゃんの影響大ですよ~。
かわいいと思えるのはつくしだけじゃないですよね。
西田さんなんて泣いてそう♪
あずきまめ 様
私も柴田さんで想像して書いてました♪
山田太郎物語でもそんな役をやっていた記憶が~。
意外にビーラーって慣れてないと分厚く剥いちゃう見たいです。
うちの娘も皮だけじゃなかったですからね。
今の子は不器用だというのもあるのかしら?
そう言えばカンヅメの開け方が分らない子供も多いですよ。
今は缶きりを使う機会も減りましたからね。
便利なのも良し悪しですよね。
何度教えても不器用で、皮を薄く剥けない司君を想像しちゃいます♪