恋の駆け引きは密室で プロローグ

見慣れない題名?

単発それとも・・・?

興味を持っていただけたら嬉しいです。

ハイ、新作開始です。

連載を減らさなきゃと言いながら何かが足りない。

つかつくの王道のお話。

結婚前のお話がないとなんとなく物足りなさを感じる自分に気がつきました。

リターンズその後の設定でのお話の開始です。

4周年記念作品ということでいただいてるリクエストにお応えしたお話も交えて書いていきたいと思っています。

お付き合いをよろしくお願いします♪

*

「久し振りだね。つくし、元気だったかい」

コツコツと床に響く杖の音。

杖に頼らなくてもいいと思えるしっかりとした足取り。

私をにっこりと見上げる皺の刻まれた顔が柔和な笑みを作る。

「タマ先輩もお元気そうで」

初めて会った時からの呼び名が今も続く道明寺家の生き字引。

どんな時でも私と道明寺の味方で本当のおばあちゃんみたいに思ってる。

もっとも、そのことを面と向かって言ったらタマ先輩には、上げた杖を振り下ろされそうな気がするけど。

「もっと私に会いに来てくれると思ったら、滅多に来ないんだから」

大学に、花嫁修業。

道明寺の屋敷に来ても一分一秒の分刻みのスケジュールで自分で自分の時間が持てなくなっている。

「まあ、坊ちゃんが坊ちゃんだからね」

タマ先輩が私をからかうような表情で私に笑いかける。

「つくしがこの屋敷に来たと思ったらすぐに自分のテリトリーに引っ張り込んで離さないからね」

道明寺の屋敷がうちみたいな狭いアパートなら挨拶だけでも出来る。

引っ張り込まれる個室もないわけで、プライベートな時間を持てるわけもない。

「坊ちゃんは元気かい?」

「しばらく会ってませんから、元気なんでしょう」

このところ仕事が忙しくて大学にも顔を出さない道明寺。

今回タマ先輩の呼び出しに応じることができたのも道明寺と会う時間に拘束されずにいるからに他ならない。

自分勝手に 空いた時間で私を強引に呼び出す強引さ。

それはあいつの性格そのもので私の都合なんてお構いなし。

俺の空いた時間はお前にやる」

感謝しろの傲慢さ。

感謝してもらいたいのは私の方だ。

私を見つけると少年のように微笑むからそれに絆される。

私だけに向ける道明寺の見せる優しさに弱い。

何時連れ去られるかわからない突然の呼び出しにも最近は慣れされちゃってる気がする。

ここまでほっとかれるとなんとなく心に空洞が出来たような物足りなさを感じ始めてる。

道明寺ありきで考えてる自分の回路を変えなきゃだめだ!

「このところ御邸にも帰ってこないからね。ということでこれを頼むよ」

後ろに控えていた使用人さんがタマ先輩に促されていくつかの荷物を私の前に置いた。

「着換えとスーツを坊ちゃんに持って行ってほしいんだ」

「持って行くって、どこにですか?」

「坊ちゃんはここ数日会社で寝泊りしてるんだよ」

「いつ帰ってきたんですか?」

ヨーロッパに南米、東南アジアを飛び回るスケジュールでしばらくな日本に帰れない。

そう言っていたのにあいつはッ!

日本に帰ってきたのなら、帰ってきたの連絡の一本くらい入れろつーの。

「つくしに会うと、仕事に戻れくなりそうなのが嫌だったんだろう」

私の気持ちを感じ取ったタマ先輩の言葉。

怒るんじゃないと諭す様な口調。

本当に道明寺はそう思ってくれてるのだろか?

タマ先輩の言葉に胸の奥がキュンと震える自分もいる。

単純すぎ。

でも!

道明寺に会ってもすぐに甘い顔はしないんだから。

タマ先輩から預かった荷物を持って、道明寺フォールディングズ本社のエントランスに踏み込む。

夕方近くの時刻でも人の込み合った受付。

ビルの一角に集中する視線を何気なく追って首を向けた。

「どうみょう・・・じ・・・っ」

遠くからでもすぐにわかるクルクルの黒い髪。

それを囲むように警備するダークスーツ御一行。

目を引くのはその仰々しさじゃなくただ一人で放つ存在感のオーラのせいだ。

エレベーターに乗り込んでその場を離れてもその残像から視線を外せないのは一人二人じゃない。

追いかけることもできずに久し振りに見た道明寺の姿をぼっと眺めてしまっていた。

「お約束は?」

「道明寺・・・代表に会いに来たと秘書の西田さんに伝えてもらえますか」

この子だれ?

的な表情が見えたのは一瞬。

すぐに浮かぶ営業スマイルが「お待ちください」とにこやかに対応。

「すいません、お名前を教えていただきえますか」

「牧野です」

電話でのやり取りを数度交わした後、受付嬢は直通のエレベーターからどうぞと外部者用の入室許可のカードを渡してくれた。

このやりとりだけでも喉がカラカラに乾いてくる。

「ねぇ、見た?」

「見た♪」

ルンとした声に混じる大人の艶をまとった瞳が、見えてないはずの姿を追うように道明寺の乗ったエレベーターを見つめてる。

「最近代表って棘が取れていいのよね」

あれで?

横柄で、我儘で、自己中心にすぐに命令口調になるんだから。

全身に棘を感じてる。

あれじゃハリセンボンの方が棘が少ないって思うぞ。

「あの若さで世界中の経営者と対当にやりあってるからすごいよね」

「能力だけじゃなく容姿も最高にいいしね」

「あなたって年下には興味がないんじゃなかったっけ?」

競争相手は少ない方がいいそんな攻防が見え隠れする駆け引き。

「代表なら10歳、年が離れてても問題ない」

「代表の方が見向きもしないと思うけど」

道明寺に興味があるのは十分に認識できる。

服装も身だしなみも高そうなブランド品で身を固めた大人の女性の会話。

高校や大学の遠巻きに道明寺を見つめる女の子と同様だ。

その中では丸きり私の存在は無視されるんだよね。

私の恰好は数ランク下のラフな学生の恰好がなんとなく私を一歩後ろに下がらせる。

争う必要はない。

道明寺が私以外の人に興味を示すはずはない、大丈夫。

「うるせっブス」

近寄ってくる美人系の女性にもほぼこの罵声で撃退してる。

道明寺が選んだのは私。

気にするな。

道明寺に媚を売る女性は一人や二人じゃないんだから。

ムカついて不安になるのは、道明寺が連絡をくれないからだ。

やっぱり今日は甘い顔は出来そうもない。

「代表って、年下の大学生の婚約者いるんでしょ」

突然耳に飛び込んできた私の存在。

それが私だってばれてるわけじゃないのにドクンと心臓が大きく跳ねる。

「私が負けると思う?」

すごい自信。

確かに人目を引く美人。

西門さんと美作さんなら間違いなく誘いをかけると思う。

ひゃーッ

それより婚約者の噂がたつの早すぎじゃないのか。

まだ正式に発表してるわけじゃないのに。

大学を私が卒業するまでは静かに過ごす。

その約束だったはずだ。

ここはさっさと道明寺に会って、着替えを渡して帰ろう。

道明寺の婚約者が私だって言っても信用されない気がする。

噂話をしてる女性社員を通り越してエレベーターのボタンを押す。

早く来い!

自分の姿を今すぐにもエレベーターの中に押し込めたいと気が急く。

隣りのエレベーターの前に立ったさっきのおねェ様がた。

「そっちは最上階までの直通ですけど?」

私が乗るのは間違いだと言いたそうな表情がじっと見つめる。

私を足先から頭の先まで観察した結果の失笑気味の笑顔を向けられた。

「知ってます」

ムッとした感情を貼り付けた声。

気にする必要なんてあるものか。

開いたエレベーターに勢いよく乗り込んで閉まるのボタンを力いっぱいに押した。

私はこの後どんな噂のネタになるのだろう。

考えてもどうしようもないことを考えてしまうのは、道明寺と婚約してしまったからだ。

ややこしくて、扱いにくいのは道明寺の性格だけじゃないんだよなぁ。

なんで、あんなやつ好きになったんだろう。

考えてもどうしようもない事をこれ以上考えるな。

道明寺の側にいる事は私の最大のしあわせなんだから、どんな苦難にも立ち向かう覚悟はできている。

「やるぞ!」

拳を上げた腕と上に向けた視線。

防犯カメラの存在に気がついて慌てて腕を下げて口を押えた。

拍手コメント返礼

ai様

賛同ありがとうございます。

どんなことがあっても最期はハッピー♪

今回はどんな事件に巻き込まれるのか~

記憶喪失や入れ替わりはないんですけどね。(笑)

Gods & Death 様

気がつくとつかつくメインから離れていることに気がつきました。

書いてる私もテンションあがります。

やってましたね某テレビ番組。

映画の宣伝ででまくりでしたものね。

私は見てないんですけど情報だけはいっぱいいただいてます。

みえこ様

結婚前のお話が王道の花男だと私も思います。

これがないと面白くない!

今回再認識しちゃいました。

続きはもうちょっと集中してこのお話をメインに書いていくつもりです。

ことり 様

お忙しい中のコメントありがとうございます。

私もワクワクしてますよ~

みなさんの反応が楽しみです。

あずきまめ様

結婚前のこの二人がどんなお話を巻き起こすかお楽しみに♪

今回は二人の設定をどこまでにするかなぁ~

生ころがしも懐かしいしステがたい。

やなぎ様

結婚前の2人が懐かしい~

『いくつもの~』の連載が終ったのが9月なんですよね。

空いたのは1か月程度なんですけど寂しさを感じちゃってました。

1か月で禁断症状が出るみたいです。(笑)

かえまま 様

やっぱり、つかつくはこの時代が面白いですよね。

面白がると司に蹴りを入れられそうですけどね。(笑)

そうちゃん・・・あたまの奥では引っかかってるんですけどね。

なかなか筆が動かない<(_ _)>

りん様

結婚前のお話はハラハラすることとキュンとすること多いですよね。

二人は結婚すると分かっていてもどうなるの~

的なハラハラ感が今回のお話では表現できるといいかなと思っています。

ブログのテンプレート変えてみました。

もみじ 様

今回の若い二人はどんな展開を見せてくれるのか。

設定はリターンズのその後半年くらいの設定です。