リミット 9
*窓から差し込む太陽の光がいくつもの銃口に反射して鈍く光る。
一つ・・・
二つ・・・
三つ・・・
四つ・・・
五つ・・・
指さししながらゆっくりと数えた。
お姉ちゃん、クッションで頭を押さえても意味はないって思う。
「来るなッ!」
お髭のおじさんが僕を捕まえて胸の中に抱き込まれる。
ぷん~と香って来たのはたばこの匂いじゃなくて甘い飴の香り。
さっきまで、顔を見合わせてどっちが早く小さく出来るかってぺろぺろキャンディーを舐めていたんだもんね。
僕の首に付きつけられたナイフ。
ちょっぴりヒンヤリとした冷たさに肌がピクンとなった。
「ヒャッ!」
いきなりの冷たい感触はいくら僕でも驚くよ。
拳銃を構えていた警察官がわずかにへやの外に後退するのが見えた。
「どけッ!」
大きく聞こえ怒鳴り声。
何時ものパパよりもっと怖い。
雷の一撃の様な声でも僕はパパの声がうれしかった。
一瞬で開ける視界。
「駿!!」
司を押しのけようとする私はすぐにその大きな背中に阻まれる。
私も守る様に頑丈にそびえたつ要塞。
目の前にいたはずの制服はすでに後ろに後退。
拳銃を構えながら第一弾が部屋の中を制圧して駿を保護。
警察の展開ではこうなるはずだった。
それも話し合いは司と対立したまま。
「凶器を待ってると身の安全が確保できません」
「子供に馬乗りにされて遊ばれているやつだぞ!その心配があるとは思えない」
「一発ぶん殴れば済む事だ」
手順はドアを開いた時から狂ってしまってる。
安全第一にプロに任せましょうって私の意見を聞かないから!
司が聞くわけないんだけど・・・。
目でナイフを突きつけられた駿に気を失いそうになった。
「駿に、傷一つでも付けたらただじゃすまないからな」
「ひゃーッ」
悲鳴を上げたのは玄関の側にいた犯人。
すでにしりもちをついて、その格好のまま後ずさり始めてる。
「駿!駄目!大人しくして!」
束縛されてる駿のただ一つ自由に動いてる右腕を動かすのが見えた。
小さな指先がナイフの先端に触れる。
ナイフが指に付く刺さった。
心臓が一瞬止った。
「これ、おもちゃだよ」
えっ?
血が、し滴り落ちて苦痛にゆがんで泣き叫ぶ駿を想像して手の平で目を塞いだ。
聞こえた駿の明るい声で目を開く。
ナイフの柄に押しこまれた尖端。
駿は指を動かしながら尖端を柄の中になんども押しこむ動作を繰り返して見せる。
「驚かすんじゃねェよ」
ドスドスと響く足音は土足のままに部屋の中に進んで駿から男を引き離して部屋の床に投げおろした。
「ママ~」
駆け寄ってきた駿を思い切り抱きしめる。
バタバタとそれが合図のように部屋に入り乱れた警官。
3人の犯人は両脇を抱えられている。
「ママ、この人達悪い人じゃないよ。僕と遊んでくれただけだから」
駿の言葉に捕まった犯人が泣きそうな表情を作る。
私の膝にしがみ付きながら駿の視線は司に向って哀願。
大きく息をついた表情はそのまま不愛想に不機嫌。
自分の怒りを鎮めようとしてるのが分る。
ぴくぴくと頬が痙攣してると癖は隠せない。
「下手に騒ぎを大きくする必要はないか」
「模倣犯が出てきても困るしな」
駿の頭をクシャリと撫でた手のひらがグラグラと駿の頭を揺り動かす。
「しばらくは、外出禁止、家と学校の往復だけだ」
「え~っ」
司の言葉に駿の不満そうな声は一瞬。
「いいよ、その代りまたお姉ちゃんとおじさんたちと遊びたい」
「面白い事いっぱい知ってるの。おたくって面白いんだね」
満面の顔がほころぶ。
「おたく・・・」
ピクリと司のこめかみが動くのが見えた。
おたくって言葉、司知ってるんだ。
男の子が自動車とか電車とか飛行機に興味を持つことは良くある事だと思う。
さすがにフィギアや色とりどりに艶やかなポスターは道明寺の屋敷とのギャップはあると思う。
部屋の中を見渡しながら子供が好きそうな色彩であることはなんとなく理解できる。
駿は、単に珍しいから面白がってるだけだって思うけどね。
「俺の息子にへンな興味持たせやがって!」
わぁぁぁッ。ヤバイ!
髭面の犯人に飛びかかろうとする司をあわてて止めた。
拍手コメント返礼
あずきまめ様
命がかかる緊張感。
そんなお話いつかは書いてみたいと・・・(^_^;)
今回は犯人の無事を願うお話になりそうです。
Gods & Death 様
ですね、久し振りかも♪
時々二つの目線のお話も面白いかと思ってますが、余裕がないと書けないんですよね。
それがネック~
旦那の愚痴、私もいっぱいありますよ~
週末婚なのになぜだろう・・・(^_^;)
理子様
父親を超えたらどれだけ大物になるんでしょうね?
駿君なた人を落とすのは司より上もしれない・・・
りん 様
この後ですか?
ほぼネタバレになるんでっすけど・・・(^_^;)
大まかの予想はF3が出てきて楽しむ?遊ぶ?
司君キレるパターン?
もうひとひねり!