リミット 10

リミット、あと数話で終る予定です。

たぶん・・・(^_^;)

久し振りに短めの連載で終りそうです。

駿君の誘拐事件は数時間ですんじゃったからな。

『リミット』

題名には緊迫感があったんですけどね。

*

「パトカーいないんだ?」

期待外れのつまんなそうな駿の顔。

マンション周辺1キロ以内は走行禁止の交通規制。

車どころか人っ子一人、猫一匹姿を見せない。

厳戒態勢の中覆面パトカーの黒い車の上に赤いライトが消音のままにクルクルとライトが光る。

覆面パトカーは駿にしたらパトカーじゃないのか・・・

「パトカー、乗りたかったのに・・・・」

「でもパトカーより消防車の方が面白いかな?」

私の手を握ったままの小さな手のひらがキュッと握り返してにこっと笑った。

そんなこと言うと、すぐ司が呼び寄せちゃう可能性あるからニコヤカに言わないでほしい?

呼ぶよせるだけならいいが購入だけはしないでよね。

探した司の姿。

外で待機して待っていてくれた花沢類、西門さん、美作さんと雑談中。

駿の声が届いてないことにホッとする。

久し振りに4人が並ぶと爽快!華やか!空気が違う。

近寄りがたい四人の醸し出す雰囲気は相変らず豪華絢爛。

誘拐事件の交通規制も映画の撮影でもあるんじゃないかとカメラを探しそうになる雰囲気がある。

「パパ達も来てたの?」

「みんな駿のことを心配してくれたんだよ」

なんで?

みたいなキョトンとした表情。

クルッと大きく開いた瞳は子供の無邪気さをそのまま浮かべてる。

かわいいっ!

しかし、駿のこの余裕・・・。

知らない大人の中にいた怖さとか、不安とかなかったの?

ママは、心配で、泣きそうで・・・

駿が心細そうに不安がってる姿を想像して身を切る辛さだったんだよ。

もう、絶対、一人になんてしないから。

「駿、怖くなかったか?」

地面に膝をつく高さに背を屈めて美作さんが駿の頭を撫でる。

「司の子供だもんな、鋼の心臓。

初めて見たおっさんに馬乗りになる奴はそうはいないぞ」

「それも、一応誘拐犯だしな」

「総二郎、それ俺をバカにしてねよな?」

アホか、大物かみたいな二者択一に聞こえる的な不満を渋い表情で司が浮かべる。

「司の息子として、子供より大人の中で過ごすことが駿は多いから、慣れてるって事じゃないの?」

久し振りに会った自分の子供をあやす様に花沢類が駿を抱き上げる。

花沢類が駿を優しく見つめる。

子供が大好きだと見つめる瞳は花沢類もきっといいパパになるって思わずには言われない。

西門さんは相変らず、結婚で一人の女性に縛られたくなって感じだけど、私たちの3人の子供達のことはすごく気に掛けてくれてる。

真っ先にいつも誕生日のプレゼントを3人に持ってきてくれるのは西門さんだもの。

美作さんは予想外に葵さん一筋。

昔の女性に囲まれた生活が嘘みたいな愛妻家に変貌。

「駿のことは他人事じゃないからな」

そうつぶやいた美作さんの脳裏には佑君の事がよぎっていたんだと思う。

F4の力を駆使して解決するほど大きくならなくて本当に良かった。

もしそうなったら・・・

駿より3人の誘拐犯は命がなかったんじゃないかって思う。

おたくもアニソンもほとんど理解してない司が犯人の一人に飛びかかったときは冷や汗ものだった。

「おたくって御宅?屋敷がどうした?

アニソンって人の名前か?

犯人は純粋な日本人ばかりじゃねぇのか?」

ぼそっと耳打ちされて、何と答えていいのか分かんなかったんだから。

すぐに司の理解を得るのは難しいって思った。

「アニメが3度のごはんより大事な人たちのこと!」

早口でそれだけ答えた。

「お前には無理だな」

そう言っていたのに駿の「おたくって面白いよ」って言葉に過剰に反応するんだから。

何が気にくわなかったんだろうと不思議だったんだから。

まあ・・・司以外に興味を示す駿が許せなかったんだって子供じみた感情だとは思うけどね。

誘拐事件より傷害事件のほうが大きくなりそうな状況。

道明寺総帥過剰防衛の文字が一瞬頭をよぎった。

犯人を一発なぐっただけで司を止められたのは奇跡。

「俺、道明寺司に殴られたよ」

感激で泣きそうな表情の中年男性。

「僕も殴られたい!殴ってください!」

私が司を止めるまでもなく、殴ってと迫る男性に司が気後れした。

まあ・・・

一応・・・

近寄るなって蹴りが飛んだけど。

おたくの思考回路は凡人とは違うらしい・・・

道明寺司はアニメとは全く関係ないはずなんだけど、大丈夫か?

「私も英徳出身なんです!武勇伝は憧れでした」

紅一点の女性は興奮で高揚気味の赤い頬で手を握られて上下に大きく振られた。

「私は殴られるより道明寺様のキスがいいです」

キャーと言って私から離れた手のひらは彼女の頬を包む。

「やってらんねぇ」

投げ捨てるように言った司は足早に部屋を出ていく。

「待って下さい、司様」

追いかけようとした彼女は刑事に止められた。

この人達・・・

誘拐犯だよね?

緊張感も緊迫感も逮捕されることへの意気消沈さもない。

連行される3人の犯人は駿に笑顔で手を振って覆面パトカーの中に消えた。

走りだす来る覆面パトカーの前に立ちはだかる一つの影。

「お前ら!何やってんだよ!」

「お前らがいなくなったら明日の大会、開催できるわけねぇだろう!」

車のボンネットに大の字で張り付く男性。

「あの人って・・・」

「今回の誘拐事件で釈放を要求されたのがあいつです・・・」

吹き出す汗を拭う様に左門警視総監が消え入る声でつぶやく。

「あんな奴らのために俺は振り回されたのか?」

ブルブルと作った拳を振るわせる司。

「まあ、だからこのくらいのぬるさですんだってことじゃないの?」

「凶悪犯の釈放だったら俺の出番だったろうし」

西門さんと美作さんが司に落ち着けと両脇でつぶやく。

「駿は楽しそうだったからいいんじゃない?」

「うん、面白かったよ」

もっ!

ママはまったく笑えないんだからね!

ギュッと駿を抱きしめて頬を押し付ける。

ふっくらとした頬の弾力と温もり。

笑っている駿に重なる様に私も笑みを零した。

拍手コメント返礼

Gods & Death 様

こちらも昨日は曇り空でした。

福岡国際マラソンをテレビで見ながらGods & Death さんからのコメント通り雨だと分かったのが繋がっていて

嬉しかったですよ。

駿君の大物ぶり、オトナになっても健在かな?

楽しみな気もします。

誘拐って現実にも割の合わない犯罪ですよね。

りん様

誘拐劇がお気楽になるのも花男だから~♪

これがテロ集団が絡んだりしたらアクション率と緊迫感upするでしょうね。

機関銃を持った犯人がウロウロ。

この時は誘拐のターゲットは司君だな。

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