生れる前から不眠症 23
今年最初のあきらと葵と佑君のお話。
『生れたぞ!』
司とは違う静かな喜びをあきら君爆殺させてる事でしょう。
一方では高校生の佑君にドキドキしてますが、こちらではまだ生まれたてのほやほやです。
*ふにゃっと柔らかくて安定感がなくてこわごわと両手で抱えた嬰児。
生れたてのホヤッとした温もりが胸の中に溶け込んでなんとも思えない感動が俺の全身を包み込んだ。
小さいのにしっかり人間の形をしてつぶったままの瞳。
目が開いたら俺と葵のどっち似てるんだろう。
「目鼻立ちはおにい様に似てる」
嬉しそうに覗き込む双子の妹たち。
まだわからないだろうと言いながら似てると言われて悪い気がするわけない。
出産後7日で退院。
家族3人でようやく我が家に帰宅。
「なんだか、ホッとした」
ソファーに佑を抱いたまま座り込む葵。
「美作の本宅に連れて行かれるんじゃないかと焦った」
ため息が深く長く葵の口元から零れた。
葵の実家には親父さんと兄貴の男手しかないからもともと里帰りする予定もなかった。
葵と子供の面倒を見るのは自分たちだと生き生きとするお袋と妹たち。
慣れない育児は一人じゃ大変だと言われて押しこまれそうな葵。
助けてよ必死で訴える葵の瞳。
俺も今さら実家で暮らすつもりは毛頭ない。
「とにかく、二人で頑張るから」
「そう言って、あきら君は仕事が忙しいじゃない」
「これでもママは3人子育てしたベテランよ」
妹たちの世話は使用人と俺がやった記憶がある。
自分の手を汚すことはほとんどないお嬢様育ちの母親。
子育てはあやして遊ぶことが主だったんじゃなかったか?
それならこっちでベビーシッターを雇った方がはるかに気が楽。
「とにかく自分たちでやるから」
俺としちゃ珍しく強引に3人の申し出を断った。
哀しそうな表情をさせたのは悪いと思ってるが、葵が落ちついて育児に専念できなくなるほうが俺には苦痛。
「フェーン」
泣きだした声は大きくて力強い。
「こいつ、癇癪起こしたように泣くよな」
葵の隣りに座って腕の中を覗き込む。
「いま、誰に似たんだって思ってなかった?」
悪戯っぽく微笑みを浮かべた葵は慣れた手つきで授乳するために胸元のボタンを外す。
ボタンを一段外した指はそのまま止まって俺を非難する目つきを葵に向けられた。
「見られてると恥ずかしいだけど」
「あっ、ごめん」
別に謝る必要もないのに反射的に謝ってしまった。
胸だけじゃなくもっとハズイ事してんだけど。
葵に向けたままの背中越しで泣きやんだ声。
もぐっ動く雰囲気が空気の緩やかな流れで俺に想像させる。
「おいしい?」
優しく温かく甘ったるく聞こえる葵の声。
チラリと視線を横に走らせた先で見えた葵はこれ以上にはなれないって思える幸福そうな表情を浮かべてる。
「ちょっ、恥ずかしでしょ」
目ざとく俺の視線に気がついた葵。
佑の陰で胸は見えてない。
「俺も幸せの御裾分け欲しいかなって思ってるんだけど」
葵の肩を抱き寄せるつもりで右肩から左肩に回す腕。
「うまく飲めるもんだよな」
「最初は上手に飲めなかったけどね」
満足したのか動かしていた佑の唇が葵の乳輪から離れるのが見えた。
「ゲップさせてくれる」
そそくさと胸元を隠して俺の腕に佑を押し付けられた。
「ああ」
慣れた手つき佑の背中を撫でる。
生れたての佑をこわごわと抱いていたのが嘘みたいな手際の良さ。
「私より、慣れてない?」
葵がクスクスと俺の横で楽しそうな声を漏らした。
拍手コメント返礼
ゆきこ 様
高校生から赤ちゃんに後退。
なかなか切り替えが大変です。(笑)
あきら君荒れた手つきでイクメンやってるんでしょうね。それも楽しそうに♪
私も司にはSなのに美作親子には甘いかもしれません。
なぜだろう・・・(^_^;)
あずきまめ 様
私でも出産後は旦那の実家じゃ落ち着かないと思いますから葵ちゃんはなおさら~。
でも世話を焼いてくれるのは使用人さんたちになるのかな?
佑君をあやしにきてくれる美作のママと妹たちには疲れそうですけどね。
授乳の後のゲップ慣れるまで意外と難しいですよね。
うちの旦那は背中でミルクを吐かれてそれ以来二度とゲップをさせてくれなかったなぁ。(^_^;)
理子 様
赤ちゃん同士の3人の絡み楽しそうですよね。
私も見たい!! ← 書くのが先~
舞、翼はまだ生まれてないんだった・・・
かよぴよ様
あきら君ならさりげな気遣いで子育てフォローしてくれそうですよね。
司君の場合手助けが手助けになってない気がします。
「嬉しいけどそれは、違うよ~」
なんて愚痴ってるつくしが浮かんじゃいます。
そんなつかつくの子育てが私も好きかな。