DNAに惑わされ 20

このお話の終着点はどこだろう・・・

最近そう思えてきてます。

早く駿君の大学時代までいきたいなぁ。(^_^;)

*

「ハイお弁当」

翌朝エプロン姿の母さんに見送られて家を出た。

はち切れそうな笑顔の機嫌の良さ。

確認しなくても父さんと仲直りできたことは分かる。

今日僕が帰ってきたら静かな落ち着きのある部屋に戻ってるに違いない。

「行ってきます」

日頃見慣れてない母さんのエプロン姿が新鮮過ぎて、照れくさくてそそくさと玄関を後にした。

もしありきたりの家庭の中で僕が育っていたら、毎日こんな風に母さんがお弁当を持たせてくれて、見送られる日々が過ごせたのかな?

ありきたりの普段の日常の出来事が今の僕にとっては一番大切で、両親にも本気で乱されたくないって思う。

ケンカナシなら母さんたちが来てくれるのも歓迎できそうな気がした。

当たり前のように幾人もの使用人やSPに囲まれて送り迎えは運転手付きに黒塗りの車。

気を抜くことが出来なくて、それが当たり前のように慣れてしまっていた自分。

マンションを出れば清々しい風を肌に感じながら自分の足で歩く。

自由をかみしめられる瞬間を僕は今、気に入ってる。

授業が終わって昼休み。

教室では蒼と向かい合って弁当を広げる。

「弁当って珍しいな」

一人暮らしを始めてからは初めての弁当持参。

蒼の興味は誰がその弁当を作ったかに焦点を当ててるのが分かる。

「鮎川とか?」

ニンマリするな。

「残念ながら、母親」

残念って言ってるの母さんに聞かれたらまずいだろうけどね。

「なにが残念なの?」

明るく僕らの間の席に腰を降ろす鮎川。

「駿が、鮎川の作ったお弁当食べたいってッ」

誰もそんなこと言ってないだろうッーーーー。

あわてて蒼の口を後ろから両手で塞ぐ。

「勝手なこと言うなよな」

「俺は駿の本音言ってやっただけだけど」

蒼の口元から手の平を外した途端に勝手にしゃべりだす。

「遊んでないで食べようよ」

クスクスと笑みをこぼす鮎川を気にしたまま弁当の蓋を開けた。

弁当の中身を見て上に持ち上げた蓋を持つ手が振る。

これって・・・

僕のじゃなく父さんのじゃないのか?

ノリで作った輪郭に特徴のある髪型。

ついでにハートマーク付き。

キャラは父さんでも僕でも似たようなキャラになるとは思う。

でも息子にハートはつけないだろう!

「駿、それって、もしかしてお前のファンの子が渡した弁当じゃねぇの?」

横から覗き込んでいる蒼にはバッチリ見られたらしい。

蒼の視線を遮断するようにガバッと弁当のふたを閉めた。

「母親って言ってるだろう」

「でも、駿のお袋さん弁護士で忙しいだろうし、一種に住んでるわけじゃないから、弁当をわざわざ届けるのも変だよな?」

「昨日マンションンに両親が来て泊まったんだよ」

僕の説明にも疑いの眼差し蒼。

「鮎川の前じゃ本当のこと言えないよな」

小さくボソッと耳打ちする蒼は鮎川を気にする視線をチラリと向ける。

僕は最初から母さんが作ったって言ってるぞ!

カン違いすんな!

「かわいく作ってるよね。それにおいしそうだし・・・」

僕の弁当まで伸びた腕は止める間もなく弁当の蓋を取り除く。

「食べないの?」

何時もより冷たい光を感じる瞳を鮎川は細く鋭く細める。

機嫌わるッ。

食べないのも変だし、食べたら食べたでなんか言われそう。

母さんの手作り弁当に喜んでた僕が遠い昔の気がしてきた。

パチン!!

えっ?

パチン?

机の上で折れそうな勢いで置かれた鮎川の箸。

「駿君、私のお弁当食べたいって言ってたよね?」

それを言ったの蒼・・・

その言葉を飲み込んでコクリとうなずく。

「それじゃ交換してもいい?」

「いいけど・・・」

目の前の弁当箱を素早く返る鮎川の腕の動き。

乱暴気味の動きは鮎川の不機嫌さを鮮明に表してる。

鮎川の小さい二段弁当。

ご飯の量は少なめで野菜の彩りも艶やかで、タコのウインナーに卵焼き。

女の子のかわいさを感じるお弁当。

ウインナーをかみしめながら胸の中にクスッとした感情が沸き起こった。

鮎川が不機嫌な原因は蒼の言葉を鵜呑みにしたから。

鮎川が嫉妬する必要もない相手に勝手に嫉妬してるだけなんだよな。

誤解を解けばなんてことはない。

気まずい表情を浮かべてごめんと謝る鮎川を僕は想像して優位に立つ。

黙々と僕の弁当を食べる鮎川。

一言も言葉を発さないままに箸をすすめる。

口の中に詰め込み過ぎたみたいでむせった鮎川がお茶を口の中に流し込んだ。

「なによ」

不機嫌に尖らせる口もと。

目もとがちょっぴり照れくさそうに微笑んで赤味を帯びる。

「それ、本当に母さんのだから、ほかの子からもらったりするわけないよ」

「鮎川に嫌な思いさせるつもりは今もこの先もないから」

「別に嫌な思いしてないし・・・」

「ウソつくなよ」

「ついてないから」

僕の口を塞ぐように弁当箱の中から指で取ったプチトマトを鮎川に押しこまれた。

「俺、あっちで食べるわ」

蒼がひらいた弁当箱を両手に抱えて別なクラスメートの輪の中に加わる。

逃げんな!

今日の原因を作ったの蒼だからな!

あっ・・・母さんかも。

父さんの弁当はいったいどんなんだろう・・・。

司君の弁当は・・・?

「今日の昼は弁当ですか?」

午前中の仕事が一区切りついた正午。

「久し振りにつくしの手作りだ」

つくしの弁当を食べるためにわざわざ昼食会を来週に延期させた。

感謝しろよな。

弁当を広げるだけのはずなのにこの高揚感。

駿が生まれる前は弁当を作って屋上で広げてピクニック気分で楽しんで・・・。

あいつの箸が俺の口にから揚げを運んで、俺の箸があいつの口にウインナーを押しこんで、

まわりを気にしながら照れくさそうにそれをゴクンと飲み込んで、飲み込めなくて咳き込んだこともあったっけ。

今日、久しぶりに一緒に食べようと思ったらあいつの方が外出中って・・・

ありえねェだろう。

タイミング悪過ぎだ。

「よかったですね」

西田のその良かったは弁当じゃなく仲直りが出来ての意味だと悟る俺。

ニンマリしそうな口元をコホンと咳払いで戻して弁当の蓋を開けた。

・・・

・・・・・?

これって・・・?

西田の視線を隠す様に身体で弁当を隠す。

誰もとりませんからと呆れた表情で西田に見られた。

「一人で、じっくり味合って食べるからお前は出ていけ」

「それじゃ、お茶でもお持ちします」

「要らないからさっさと出て行けッ」

西田が退室するのを見届けてゆっくりと身体を起こす。

ノリで作った特徴のある髪型と輪郭。

ここまではよし。

つーかーキャラが新幹線の上に跨ってる意味がわかんねェッ。

頑張れーの文字の横には国旗付き。

俺はガキか・・・

拍手コメント返礼

マリ 様

お弁当間違えてなければ司の仕事のスピード上がったでしょうね。

「今日は定時で帰る!」

言い出しそうですもの♪

よってぃ 様

大人なつかつくも楽しんでもらえて良かったです♪

キャラ弁をみた西田さんの反応も見たいですね。

きっと知らないだろうなキャラ弁

知っていても面白いかも~

司は取り間違えたお弁当のこと知っちゃうのでしょうか?

この続きも書いちゃいましょ♪

アーティーチョーク 様

平和な日常に戻るはずがここでやらかしちゃうのがつくしなんですよね。

鮎川さんの誤解を解くことが駿君に出来るのでしょうか?(^_^;)

かよぴよ 様

同じお弁当箱でおかずも一緒♪

間違えずに渡そうとするとやっちゃうことありますよね。

間違わずに渡せたら・・・

司は有頂天。駿クンはハートじゃなくても恥ずかしかったでしょうけどね。

あっちん 様

輝くオーラーもってそうですよね。

司に負けない駿君のオーラもあるだろうなぁ。

ゆきこ 様

笑ってもらえてうれしいです。

高校生相手にキャラ弁はないですよね。

駿君はどっちを見ても恥ずかしい思いをしたことでしょうけどね。

つくしは本気で駿君が喜ぶと思ってるのだろうか・・・。

舞ちゃんなら喜びそうですけどね。

男の子はどうだろうなぁ~。

この前夜の続き・・・(^_^;)

うまくごまかせたつもりだったのに~。