恋の駆け引きは密室で 24

この状況で一番焦ってるのは俺様司クン。

そのドタバタは置いておいて、今回は久しぶりに類君サイドでお話を進めす。

「西はあっちだよね」

地平線に沈む太陽を眺めながら牧野が俺を振り返って笑った。

牧野の見つめるその先には日本があってそして司を見つめてるって思う。

俺がいても司の代わりはできないって分ってるから。

ただ少しでも牧野の気持ちを紛らわせてやることは俺でもできるよね。

無理に笑わなくってもいいよ。

そんな言葉を胸の奥に閉じ込めて微笑を返した。

「今ごろ、司も必死で俺達を探してるんじゃない?」

「うん」

俯いた牧野の唇がかすかに震えてキュッと引き締まった。

俺が念を押さなくても直ぐにでも司が助けに来てくれると信じて疑わない感情。

少し妬けるよ。

「花沢類がいてくれるから安心してる」

ふわっと和らいだ瞳が俺を下から見つめる。

無邪気な裏のない真直ぐな輝き。

俺の心の奥をクスッとさせてそしてチクッとした痛みが伴う事実。

痛みより牧野の俺によせる信頼のうれしさが勝ってる。

牧野のことなら無条件で見返りを求めずに俺は守れるよ。

いや・・・違うか。

牧野の屈託のない笑顔が見たいだけだから。

牧野の泣いた顔も悩んだ顔もすべて側で見てきた。

牧野が司が好きで好きで忘れらないと思う恋心も。

たぶん司が見た何倍も何十倍も。

牧野は俺より司に必要不可欠な相手。

司の変わりようは俺達の想像を超えていた。

あいつの孤独さを受け止めて人を愛する気持ちを教えたのは牧野だから。

人を傷つける事を何とも思ってなくて、時には俺達さえ持て余した。

牧野がいれば何もいらない。

司はそれほど牧野が大事だって思う。

この狭いクルーザーに牧野と二人で幾日も閉じ込められたって知った司に俺は無事で居られるだろうか?

「私、なにか可笑しいこと言ったかな?」

「牧野を笑った訳じゃないから」

怪訝な表情を浮かべる牧野に心が和む。

牧野が誘拐されたことより俺といることの方が司にとっては重要事項だって俺が思ってることを牧野に教えたら

真赤になって反論しそうだよ。

「ほら、また笑ってる」

少し不機嫌になった声にククッと俺は笑をかみ殺した。

海の上のクルーザーに置き去りにされてる割には至って呑気に平和に時が流れる。

それだけでも俺が牧野と一緒に居る意味がある気がした。

きゅる~

牧野の腹部から聞こえてきた音。

「あっ」の形に開いたままの口。

確かに俺もお腹は空いてるよ。

連れ去られてから何も口にしてなかったことにお互いが気がついた。

「何も食べてないこと忘れてたね」

空腹を感じられるようになってるのはいい兆候だ。

緊張が解けたようにどちらからともなく笑みがこぼれる。

「食材はたくさんあったから、何か作るね」

甲板からクルーザーの船内に戻る。

部屋の奥には備え付けのキッチンに冷蔵庫。

一週間は心配せずに過ごせそうな量。

「鶏肉とか切り落としとかないのかな?」

冷蔵庫に顔を突っ込んだまま牧野がつぶやく独り言。

「高級な食材ってあんまり使ったことないんだよね・・・」

食材を冷蔵庫から取り出した牧野。

右手にはロブスター、左手にはトリュフ。

俺は料理は食べる専門。

聞かれても困る。

「牧野が作った物ならまずくてもなんでも食べるよ」

「作る前からまずいって断言しないで欲しんだけど。食材は無駄にはしないから」

力の入った表情を作った牧野は台所に立った。

包丁を持つ牧野の後ろから覗き込む俺。

「手伝ってくれるの?」

牧野に渡された包丁と玉ねぎを交互に眺めた。

どうするんだ?

俺の横で牧野が模範を見せる。

「花沢類の料理初体験だ~」

嬉しそうにクスクスとした声を漏らして俺の手元を心配そうに覗き込む牧野。

「初めてにしては上出来」

コツ、コツとゆっくりとした音を鳴らす俺の横でテンポのいい音がリズムを刻む。

包丁を動かす途中で時々かすかに触れ合う腕。

側で聞こえる牧野の明るい声。

司・・・悪い。

牧野との二人の時間を楽しんでしまってる。

拍手コメント返礼

ゆかりん

司には悪いですが司より先に新婚さん気分を類君に体験させてしまってますね。

つくしにはそんな気は毛頭ないのがミソですけどね。

Gods & Death 様

毎日寒い日が続きますね。

ここは好みの問題でしょうね。(^_^;)

絶対的つかつく主義ですが、つくしのことを思いつ付けてる類が好きなんですよね。

あっちん 様

確かに今回はるいつくみたいに書いてしまったなぁ。

この先には進めないでしょうけど。(^_^;)

やなぎ 様

司が怒鳴り込めない海の上で良かった。

ヘリ飛ばしてダイブしてきたりして・・・

みえこ 様

類の愛情深すぎですよね。

司がいて類まで。

本当につくしはいいなぁ~。

羨ましすぎる状況を一度でいいから味合いたい。

ゆきこ様

録画で送られてきた内容がこれだったら・・・

じめっとした地下室に背中合わせで縛られた状況の類とつくし。

緊迫感のある状況を司が想像してたとしたらねぇ。

司に与えるインパクトは想像を絶する嫉妬心に変わりそう。

あはは、じつはチラリと考えちゃってたんです。

続きのお話でDVDが送られて来る設定。

どうしよう。(^_^;)

佑君見ちゃったんですよね。

目撃させないと面白く発展しないだろうしって事ですけどね。

佑君も司以上に真剣だったりして。

メルちゃんのママ 様

この状況は絶対内緒ですよね。

「牧野の手料理うまかったよ」

司の前で類に言わせたい♪

りん 様

司の前に類君にご褒美が~の感じですけどね。

切なさが似合うのは類君♪

密室がどう進むのか!

つくしに恋の駆け引きは通じないと思いますけどね。類君も駆け引きはしないだろうしなぁ。

あずきまめ 様

ここは非常事態だって事を忘れて心の安定図ることが大事なんだよ~

だから司君二人を許そうね♪

なんて気持ちが司に通じるといいんですけど。(^_^;)