恋の駆け引きは密室で 27

船体に降りてきた黒ずくめは誰!

つくしちゃんと類は無事かしら?

無事じゃなきゃ大変なことになっちゃうよ~。

 *

凪の水面にぽっんと浮かぶ白い船体。

遠くから太陽に光りに反射してキラリと銀色に輝いた。

クルーザーの船体に書かれた船名が裸眼で確認できる距離に近づく。

FILO・・・

「意味深な名前だな。イタリア語で糸って意味だろう」

「この糸を手繰り寄せろなんていう挑戦じゃねぇの?」

俺の側には総二郎とあきらの2人。

名前の意味なんてどうでもいいだろう。

近付くクルーザにあいつらが無事でいればそれだけでいい。

「それ以上身体を乗り出せられると危ないです」

ヘリの操縦かんを握るパイロットがちらりと俺に視線を向けて遠慮がちに呟く。

気分はこのまま泳いでクルーザーに乗り込みたい気分だ。

牧野!すぐ行からな!

はやる気持ちを抑えるように唇をグッと噛んだ。

ヘリのプロペラの音にも気づかない様子で波もに揺らぐ船体。

コツンと船体に足を付けた音だけがやけに響く。

甲板の上には確認出来なかった人影。

ぐるりと船の上を一周して船内へのドアの横で一息つく。

ゆっくりとドアに手を伸ばして回すノブ。

敵の的になるのを避けるようにドアを押した腕を引っ込めた。

なんのリアクションも返ってこない。

人の気配もないように静まる船室。

「牧野!」

開いたドアが内壁に当たってその音だけがコツンと響く。

俺達を敵と間違えて息殺して隠れてんじゃねよ。

直ぐに俺だと分るだろう。

「牧野!」

自分の声だけが鼓膜に返る。

「司、誰もいないみたいだ」

俺の後から船内に総二郎とあきらが入ってきた。

ワンルームの船内にはホテルの一室のように完備されている。

船内の一番奥に置かれたキングサイズのベッドが一つ。

いままでそこに誰かが寝ていた皺が刻まれてるベッド。

確かにさっきまで人のいた気配は残る。

「くそっ」

「一足遅かったみたいだな」

船内を歩き回っていたあきらの足音が止まる。

「司、これ・・・」

床を確かめるようにあきらの身体が下に沈んだ。

カーペットの色を赤く染める正体を確かめるようにあきらがカーペットを指先でなぞる。

「・・・血みたいだ」

あきらの言葉に周りの空気が冷たく変わる。

「大変です!」

船内に飛び込んできたSPの表情が緊張に頬を引きつらせる。

まさか・・・

牧野が・・・

嘘だろう・・・

血まみれで倒れてる牧野の生気のない顔色。

足を動かそうとしてるのに言うことを聞かない身体。

まるで俺の行動を身体に伝える脳がそれを遮断してるみたいだ。

「司、大丈夫だ。これらいの量の血なら命に問題はないと思う」

あきら。

それ、慰めになんてならねぇよ。

血痕がここに残ってるってことが問題で、不安と怒りがまじりあってどうしようもなく心が乱させる。

心のどっかで、牧野が傷つけられるって事は思ってなかったんだ。

信じてた。

目的が俺ならきっと牧野に危害が及ぶことはないって。

「何があった」

「すぐにここから退去してください」

苛立つ様な声をさせたのはSP。

「爆弾が仕掛けられてます。もう時間がない」

「海だ。海の飛び込め」

総二郎の声にせかされるように船室を出て、甲板から海に飛び込む。

クルーザーから少しでも離れるように泳ぐ俺達。

大きな爆音が聞こえたのはそれからすぐのこと。

黒い煙を上げて炎に包まれてクルーザーは跡形もなく海の底に姿を隠した。

海の上を漂う俺たちの頭上ではヘリが旋回を続けていた。

 

拍手コメント返礼

ゆきこ様

残された血痕は誰のもの♪

つくしちゃんか?類か?

司のものじゃない事だけが確か♪

司君には悩んで欲しいのでDNA鑑定が出来ない様に船を爆破させていただきました。

F3相談室は別館に開設しますね。

いつできるだろう・・・(^_^;)

絵梨 様

いや~ここはもうしばらく誰の血かということは伏せさせていただきます♪

意地悪じゃないですよ。

話が見えない展開って書く方もドキドキなんですよね。

いろいろ考えちゃって少しでも面白い出来になる様に模索中です。

あずきまめ 様

黒ずくめは司と思わせて♪

あれ~つくしちゃんいない・・・

?の思わぬ展開でした♪

しかも血痕付きですもんね。

どうなるのよねぇ。

私も書いてどうつなげるかと・・・(^_^;)

司君が悩む姿好きなんですよね。

ずんこ様

この血がもしつくしだったら?類だったら?

どっち!!

なっちゃいますよね。

熱い二人が見たいのか熱い二人を見て切なさを見せる類。

どちらも確かに早く見たいですね。

でもこれがまだまだなんだよなぁ。

Gods & Death

これからの展開書いた私が一番ドキドキしてます。

やっちゃったぞ!ってね。

自分でハードルを上げる癖直さなきゃと思ってるんですけどね。(^_^;)

司君誕生日でしたね。

お祝いメッセージ多くいただきましたよ。

これは誕生日のリクかな?

急遽記事をUPしました♪

予定では全く今年は考えていなかったんですけどね。

りん様

血痕で司君もジッとしてられない状況になって~総ちゃんもあきらも司を止められなくなる。

どうするんだろう・・・。

って他人事じゃないんですけどね。。(^_^;)

考えるの私よ~~~~~。

さぁ謎解きに向けて出港します。

執事になったつもりで謎解き♪

やなぎ 様

続きをUpしないと私も眠れません。

私も考えがあれこれと頭の中を占領中です。

みえこ様

あの血痕は誰のもの?

司の頭の中では血まみれで自分の名前を呼んでるつくしちゃんを想像しちゃうでしょうね。

類はどうなってんだろう?

アーティーチョーク様

司君の復讐はどんどん残酷になってきそうな展開で~。

まだまだどうなるか予断を許さない展開が待ってますのでお楽しみに。