一秒ごとのLove for You 16
なんだか、あっさりと行き過ぎて面白くない!
なんて私が思ってるとしたらそれは某所の影響です。
ここからどうする!
このまま公平君とさよならになるのは寂しいのですよね。(^_^;)
「結婚したら穏やかでいられると思ってたんだけどな」
後部席にもたれながらわずかに身体をひねって、嫌みたっぷりに言ってつくしの顔を覗き込む。
結婚式を挙げてすぐに別居した。
司法修習では俺との結婚がばれると研修に支障が出るとか騒がれたくないとか理由を付けて内緒の前半。
その横にいたのが松岡公平。
こいつに惚れてる男が側にいるのに気がついて落着けなかった。
惚れていなくても俺より近いところに男がいること自体が気にくわねェけど。
何時も世離れした鈍感さに気をもまされる身にもなれつーの。
「穏やかって、だれが?」
口を開いて呆れる表情が目の前で笑い声をあげた。
「穏やかな道明寺って見たことあるかな?」
「てめっ!」
華奢な首に軽く指をまわして力を入れるふりで揺さぶる。
「乱暴な方が道明寺らしい」
やめてとはしゃぐ声は急に大人びたトーンをつく。
そのまま肩にもたれかかる様にコツンとつくしの頭が俺に触れた。
その甘い感情を楽しむのに言葉なんて要らなくて・・・
もっと感じたくて腕を肩に回した。
「SPが付くのはしょうがないって思っていたけど、道明寺まで尾行するってやり過ぎだよ」
実は千葉に実況中継させていた。
これを知ったら甘えた口調はどう変わるのだろう。
俺を突き放してそっぽ向くのが妥当。
「なに、笑ってるのよ。反省してほしいのに」
「俺に反省させるつもりか?」
「無駄って分ってるわよ」
不満ぎみにツンと俺を見ていた顔は真正面に向きを変える。
気にするように視線だけが俺を見るように動く。
「こっちは怒ってるのに楽しそうな顔しないでくれる」
千葉にさせていたことばらさなくてもムクれるのは一緒らしい。
「俺にズケズケ文句を言うやつはお前だけだな」
「文句を言われて喜ぶって可笑しいでしょう」
「いや、楽しんでる」
尖がった唇の先に振れた唇が笑みをこぼして震えてる。
くすぐったいキスの感覚にも可笑しさがこみ上げる。
この穏やかな空気を一番感じ取ってるのは俺なのかもしれない。
「西田、この後全部仕事キャンセルだ」
助手席にいるはずの西田に声をかける。
「全部ですか?」
気の利かない声は無表情な声。
優秀な秘書は疑問符付けずに指示された通りに上司のために動くものだろう。
たとへそれがどんな難問でもだ。
ここまでの俺の頑張り。
明後日からは休みの予定だし、そこまで難しい指示じゃないはずだ。
「別に重要な会議も会談もしばらくは予定なかったよな?」
このくらいの認識は俺にもある。
「休みの後はどれだけ働かせられても文句を言うつもりはないから」
「わかりました」
西田の返事を聞いた時の違和感。
意外とすんなりの回答。
西田がうしろを振り返った時に爽やかな空気の流れまで感じてしまった。
気色わりッ。
もしかして・・・
俺早まったか?
先手を打ったつもりで休みのあとどれだけでも仕事するって言ってしまったようなものだよな。
西田の奴そこまで俺を酷使するつもりはなかったのかも・・・
そんな甘えは許さないって態度を、いつも見せられてるからつい言っちまった。
自ら宣言する必要なかったかもしれない。
「休みって、道明寺休みなの?」
ブツブツと口の中で独り言のようにつぶやく牧野の声。
良かったねとか、仕事忙しすぎだものとか他人事のような牧野の反応。
俺が独りで休んでなにするんだよ。
仕事してた方がましだ。
「ああ、ここしばらく働きづめだったしな、お前とゆっくり二人だけの時間を楽しむ予定。2週間は休める」
「・・・」
「・・・・・?」
見合ったまま無言で数秒流れる時間。
「予定って・・・私の休みはそんなにないよ」
瞬きが多くなった牧野が口を開く。
「一緒に休めるわけないでしょう。突然そんなこと聞かされても困るの!」
バタバタ溺れそうな水の中でもがく様な焦りを浮かべて俺につくしが食いつく。
どんなにもがいても釣り上げた魚を逃がすつもりはねェよ。
「俺に合せて休みを取るんだよ」
「まだ仕事も憶えてないのに無理に決まってるでしょう」
糸の引きあいはぴんと張ったまま互いの力を出す駆け引き。
緩めることを知らないから手の平に籠る熱。
「とれ」
「無理」
「無理じゃねぇ」
「忙しいのは道明寺だけじゃないんだからね」
「お前の上司、岬所長には話がついてるんだよ」
あんぐりと開いたままの牧野の唇がわなわなと震えだす。
「道明寺!勝手なことするな!」
今日一番の怒号がつくしの頭のてっぺんから飛びだした。
車の天井を突き上げそうな勢い。
天井に頭をぶつけた勢いで俺の膝の上に牧野の身体が落ちる。
車のブレーキでつくしの身体が体勢を崩す。
股間の上に落ちた顔。
「イタっ」
鼻を擦りながら上げた顔が自分のが落ち込んだ場所を確認して首を後ろにそる様にして視線を上に向けた。
「まだ早ぇぞ。そういうことは2人っきりになったあとでだろ?」
見下ろす俺の視線の先でつくしの顔が真っ赤に熟れて行くのが分かった。
拍手コメント返礼
メガネちゃん様
そうですよね。穏やかな司より俺様な司の方が・・・
まだまだいっぱい某所のトークは盛り上がりそうですよね。
あのトークをすべて公表したい気分ですよ