逆襲のファンタジー 14

折角のお休みも今一つに天気。

晴れたら晴れたで紫外線の気になる季節。

私の居住区は5月が一番紫外線が強くなるんですよね。そろそろ完全装備のお出掛けになります。

「翼、ママの名前なんだ?」

「牧野つくし」

無邪気な声は興味なさそうに答える。

「パパは?」

膝をついて翼と司が向き合った。

司が飛ぶように真っ先にこの場所に来たのは迷子の翼の心配より牧野つくしの呼びだしなのね。

予想はしてたけど、呆れる思いもある。

センターに保護されてはいても子供の顔を見るまで安心できないのが親だと思う。

理由は何あれ、真っ先には駆けつけてくれたのだから良しとしなきゃいけないか?

道明寺司

「翼は?」

「道明寺 翼」

「だったら、ママは道明寺つくしじゃないと可笑しいぞ」

「それじゃ、道明寺 牧野 つくし?」

牧野は余計だ!

司の表情は翼に必死に訴える。

子供達が良く耳にするのは司が私を呼ぶ「つくし」

しばらくはママよりつくしって真似することもあったんだから。

そしてF3が揃うとつくしより「牧野」の単語が飛び交ってる。

翼が牧野とつくしをつなげたことがすごいって感動出来る。

道明寺つくしよというよりすごいよ。

やっと自分の名前が言えるようになった3歳児に何を要求してるのか。

幼稚園に行くようになったら道明寺 つくしを理解できるようになるってものだ。

「とにかく牧野はいらない」

どうやっても翼に理解させるのは無理だと悟った顔が苦し紛れに呟いて立ち上がった。

翼に理解を得られない不機嫌なままの司が入り口に留まる私たちに向けられて眉間に眉を寄せる。

「司・・・」

さっきより不機嫌度が増してきてる。

舞を真中に花沢類とつないだままの手。

放そうとしても私の手は舞の手のひらを握ってるだけだから意味をかえさない。

手の平に滲む汗。

ヤバイ!

その心境が私の交感神経を刺激してるのは確実。

花沢類が舞の手を離してくれないかなと横にちらりと向ける視線。

私の視線に気がついた花沢類が柔らかな微笑を返してきた。

司の不機嫌の理由気がついてるでしょう!

悪戯の探究心をここで出さないでくれる?

「おしょろいだよ」

ツカツカと司の前に進み出た舞。

舞から離れてくれた助かった。

舞が司の前に自分の顔よりおっきなポップポーンの入れものを自慢して見せる。

満面の笑みを見せられた司の頬がゆるくなった。

私と花沢類のポップコーンを頂戴とせがんで受け取る舞。

そのままもう一度駆け足で司の側に盛った舞が司と駿にポップコーンのフォルダーを首にかけた。

オリンピックのメダル授与の様な喜ばしい表情を浮かべる駿。

司の怪訝な表情は舞の自慢げな表情を黙って見つめてる。

「おしょろいでしょ。そんなに怖い顔しちゃだめだから」

なんもいえねぇ

司・・・

そんな顔になってる。

「司、子供に気を使われてる」

ポツンと私の横で類がつぶやいた。

ひやーーーっ。

一気に鋭くなる目つき。

叫び声を上げそうに壁に一気にへばりついたのは私じゃなく千葉さん。

えっ?

千葉さん?

なんでここにいるの?

見慣れない普段着に、千葉さんの横には灰原さんがいる。

私の護衛じゃなきゃ見れない組み合わせよね?

千葉さんはお休みだったはずで・・・。

もしかしてデート?

なんだかそっちも気になった。

「千葉、しばらく子供達を見てろ」

「俺、休みなん・・・」

司の鋭い矢を放つ睨みで千葉さんの声が消え入る。

千葉さんごめんなさいーーーーーッ

コツコツと冷たく響く靴音。

刑の執行をカウントダウンする音のように大きく響く。

私の心臓もドクドクと悲鳴を上げそうだ。

こんなところで大声でで責めたら道明寺ホールデングス代表の威厳が下落しちゃうよ。

ついでに株価も暴落したら大変だとか・・・

あの険しい表情は会社のことなんて今は考えてないかぁ・・・

「まず、俺を探すのが先なんじゃねぇのか」

疑問符じゃなく確定の強制力の声。

「だって、司は舞と一緒だと思ったから、舞のGPSでそこに向ったら花沢類と舞だったんだもの」

「普通、すぐに俺に連絡を入れて確認するだろうが?」

「司を真似しただけだけど」

「俺の真似だと?」

「俺はお前以外に親子ごっこするつもりはねェよ」

何処まで花沢類と一緒にいたのを根に持ってるのか。

いつも突然GPSで私を監視してんの誰よ!

私は真似したって言ってるのはこれ!

GPSで私を直ぐ探し出してるのはどこのどいつだ。

司ならすぐに私も探し出せるはずだよね。

何時もの様に探せばいいじゃない。

翼が迷子になって呼び出しが無ければ私を探してもいいはずでしょう。

今回は私が責められる理由なんてないはず。

私をのけ者に、置いてきぼりにしなきゃこんな手の込んだことに鳴らなかったはずだ。

元をただせば今回の騒動は全部司が悪い!!!

大声で言いたい反論。

大きく息を吸い込んで吐き出す体勢を作る。

「ママ」

ガシッと私の膝にまとわりついたのは駿。

「あのね、今日はパパが僕だけのパパでいてくれるって言ったんだ」

だからママも・・・

駿の甘える瞳が言葉じゃなくて心で渡しにせがむのが見えた。

「こいつ、兄貴だから舞たちに遠慮してるようだ」

クシャリと横から伸びてきた司の腕が駿の頭の上に手のひらを置いてクシャと髪の毛を揺らす。

「舞たちには悪いけど、今日は僕一人のパパになって遊んでくれるって言ったんだ」

「いいでしょう」

純粋な瞳が心配そうに覗き込む。

「幸い今日は俺達じゃなくても子供達の面倒を見る奴には事欠かねェみたいだしな」

司の視線が迷子センターから飛びだして外へ向う。

「隠れてないで姿見せろ」

窓側でビクンと芽が地上から飛びだすようにスクッと伸び上がった身体。

相葉さん?

入り口の前には西門さんと美作さん。

最後に相葉さんの横から気まずそうな表情の優紀に手を振る桜子とカメラを片手に現れた滋が見えた。

全員揃ってる・・・。

拍手コメント返礼

かよぴよ 様

親の扱い分ってるよなぁと思う子供の行動に言葉ありますよね。

子供が一番観察してるのは実は親だと思います。

ケンカなんてできないの~。

親子五人で遊ぼうとしたらぞろぞろ大人たちもついてきそうだぁ~。