逆襲のファンタジー 15(完)
もう終わりか?
期待外れ?
暴れねェの?
拍子抜けした顔が並ぶ。
お前らとはガキの頃からの付き合い。
醜態を見せてお前らを楽しませる理由はねぇよ。
こいつ等の頭の上からバケツ百杯分の土砂降りの雨を落としたい気分だ。
見あげた空は吸い込まれそうな雲一つない青空が広がってる。
「子供の面倒くらいしっかり見とけよ」
あきらにしたら珍しいミス。
目を離すとすぐにいなくなるやんちゃな翼。
いつもつくしが追い掛けては「もうおとなしくして」と愚痴を零す問題児。
風呂に入れた後なんて大変なんだぞ。
テーブルの下やグランドピアノの下に隠れて探し出されるの楽しんで、素っ裸で逃げ回る翼をバスタオルを持って追いかけてる。
最初は一人だけのはずが追いかける人数が増えるパターンは経験済み。
子供はなんでも遊びに変える天才だ。
ついていけねェッ。
今回は直ぐに見つかっただけまだましだ。
親の名前くらい正確に覚えとけ。
言い聞かせるのは絶対必須。
「司に言われちゃ、おしまいだな」
総二郎が同意を求めてあきらの肩にポンと手の平を置いた。
「今回は確かに目を離した俺のミスだ。すぐに見つかって良かったと思ってる」
「牧野悪かった」
あきらが頭を下げた相手はつくし。
牧野って呼ぶな!
舞まで牧野つくしって言い出したらどう責任をとる。
「美作さんのせいじゃないから。大体私を置いていく誰かさんが悪いのよ」
「一人で3人の子供の面倒を見るのがどれだけ大変か、わかってないんだから」
不服な表情はそのまま俺をみつめる。
俺一人じゃねェし。
こいつ等もいるわけだし。
子供一人に大の大人が数人付ける計算。
余裕だろうがぁ。
それに今日は駿の望みをかなえてやるのが俺とつくしの取るべき行動だと理解する。
普段は甘えを見せない責任感の強い駿。
今日はいっぱい我儘を言わせてみたい。
今日の主役は駿、お前。
お前の望みは何でもかなえてやるよ。
笑った俺に駿がにっこりと微笑んだ。
「類パパの買ってくれたこれおいしよ」
何時の間にか類に抱っこされた舞も小さい指がポップコーンごと類に食べられた。
ビクンと俺の筋肉の動きに気がついたように駿がギュッと俺の手の平を握り返す。
駿を挟んで歩く俺とつくし。
その後ろから類に抱っこされてる舞。
類ッ!
俺の目の届かないところでやれ!
翼の面倒は千葉と灰原。
てくてくと歩けばてくてくと続く足音。
俺達が立ち止まれば数歩後ろで聞こえていた足音も止まる。
「いい加減にしろよ」
身体を回転させたままの勢いで唸った。
「舞このピンクのポップコーンが一番スキ」
ピンクのポップコーンをつまんだ舞がもう一度類の口の中にポップコーンを入れる。
駄目だ。
落着けねェーーーーッ。
「俺はしょうゆバターだな」
「西門さんってここでも和風なのね」
つくしの感心どころつてそこか?
総二郎の好みはどうでもいい。
「僕ハニー」
誰も聞いちゃいないのに翼が手を上げる。
その指には一粒のポップ―コーンがガシッと握られてる。
「あっ!」
粉々になった白い粒が道端に散らばる。
「手がベタベタになリますよ」
ウェットティシュで灰原が翼の手と口周りを拭きあげる。
感動して惚れ直したと間抜けに顔に書いてしまってる千葉。
そのだらしない表情に灰原が千葉を惚れ直すかどうかは微妙。
「僕はこれが好き」
バケットから駿が見せたのはキャラメル味のポップコーン。
「コップコーンおいしいね」
コップ・・・っ?
翼の幼児語にケラケラとつくしが笑い声を上げる。
「おしゃべりが上手になってきたと思ったら言い間違い多いんだよね」
そしてまたケラケラと笑う。
駿のパケットからポップコーンを取りだした舞は俺の前を素通りした。
「舞、パパのはいらないのかな?」
「パパのあまり好きじゃない」
俺が嫌いだと言われたわけじゃないのにスゲーショック。
気分が悪い。
ソルト味は不人気でさっきから全然減らねェ。
「おい、ほかに舞がスキそうな味のやつはねぇのか?」
「ここで売ってるのはあとカレー味じゃないかな。舞はストロベリーが一番気に入ってるみたいだしね・・・」
俺に説明しながらチラリと向けるつくしの視線。
「舞はチョコレート好きだよな?」
ハッとなった表情に一瞬で変わる。
「ちょっと、司!これ以上買わなくていいからね。それにチョコレートはないから・・・」
「まさか!舞が絶対喜ぶポップコーン見つけてやる!とかの競争心を燃やしてないよね!」
不安な表情は通り越して俺をどやす様にシャツの襟につくしの指先が食いつく。
指先の色を無くして必死にしがみついてきた。
「もう、忘れないでよね。今日一日は私たちは駿の望みを叶えてやるんでしょう?」
やさしく諭す様な表情を載せた声。
つくしまで俺に甘えてくるような感触。
おう、そうだったな。
今日俺達は駿だけのパパとママになる約束。
「お前ら、もう俺達の後ついてくるな!」
真っ先に俺達から離れたのは千葉。
段差のないところでもこけそうな足取り。
慌て過ぎだろう。
仕事中ならクビだ。
肩車をした駿の腕が俺の肩に降りてその手を伸ばしたつくしの腕が握る。
駿とつくしの視線が重なって、そのまじ合った先で嬉しそうな無邪気な微笑むを駿が浮かべた。
拍手コメント返礼
ゆきこ様
ありがとうございます。
終わりました。
短かったけど長かったなぁ。(笑)
昨日のトークの話題ではまだまだお話は続きそうですけどね。
忘れないうちに( ..)φメモメモ。
逆襲したのはだれだ~
意外な所では千葉君とか?
希望で司も捨てがたいんですけど~
ゆきこさんのご希望は何方かなぁ?(笑)
Gods & Death 様
ありがとうございます。
短期集中連載の試みはいかがだったでしょうか?
書き手としては集中できて楽でしたね。
わが家の連休はあってないようなものです。
子供の部活の休みは6日だけなので出かける予定もなしです。
小学校の頃は毎年キャンプしてたんですよね。
もう何年テント使ってないかなぁ。
これから使うことあるのだろうか・・・。
かよぴよ 様
某所で盛り上がったポップコーンネタ。
書くことが出来てホッとしてます。
私はハニー味がお気に入りです。
なかなかハニー味にはお目にかかれないんですよね。
終わったはずなのにつかつくも気になるし類もあきらも総二郎も!
そして千葉君のデートは!!!
リクいただいてます。
別館かなぁ・・・(^_^;)