一秒ごとのLove for You 18
ここからバカンス?
トラブルもなくバカンスが楽しめるとは思わないですよね?
え?
思ってました?
その前に行けるのかなぁ~
トントンとドアをノックする音が聞こえたのは私が事務所で書類を一人で整理していた時。
いきなり休みをとれと言われてもこまるつーの。
有無を言わせない態度で道明寺が私の上司の岬所長迫ったのは明白。
岬所長なら道明寺の威嚇を軽く跳ね返すことのできる人のはずなのに、朝一番でにっこりと楽しんでいらっしゃいと
言われてしまった。
だからって、自分の仕事を投げだして休めるほど私はまだこの弁護士事務所の戦力になってないんだから。
新米が「それじゃ楽しんできます」なんて明るく休めると思うのか!
道明寺に言っても理解してくれそうもないのがわかるから始末が悪い。
「司君に頼まれると弱いのよ」
道明寺と岬所長の間にどんなやり取りがったのか考えたくもない。
道明寺が頼みごとしたってことも眉唾物だもの。
全身がぽぅっと照れくさてムズ痒くなるような微笑みを岬所長に向けられて、すいませんとだけしか言えなくなった。
リミットは48時間。
その間に何とか割り当てられた仕事を終らせて、甲斐さんに引き継いでもらって後ろ髪をひかれる思いで休暇を取る。
本当に強引で、いきなりすぎて、ついていけない。
・・・と思いつつ・・・
道明寺についていちゃってるよね。
道明寺と一日中一緒にいられる時間が嬉しくないわけない。
旅行の準備をしてるうちに楽しくなって水着を詰め込みながら浮かれちゃってた。
それに気がついた道明寺は喜んでるだろってドヤ顔で見られてしまってた。
申し訳なさと嬉しさの間。
気持が浮いたり沈んだりのジェットコースター。
クルクル回りだすまえに正常に戻ろうと気持ちを落ち着けるように息を吐いた。
吐き出す途中で来訪を告げるノックの音。
開いたドアの先から現れた男性。
吐き出してない息を飲み込んだ。
苦しいっ・・・
「公平・・・」
「よっ!」
爽やかな人懐こい笑みを浮かべてスタスタと歩いて部屋のを見渡す。
「一人?」
「まぁ・・・」
司法修習で一緒にこの事務所で実習した公平も甲斐さんや玲子さんとは顔なじみだ。
その時以来の公平の訪問。
「どうしたの?」
「ちょっと近くに来たから」
近くに来たからって・・・
理由もなしに遊びに来るほど公平も暇じゃないと思うんだけど。
この前、久し振りに会った時も忙しくて家にも帰れなくて仕事場に寝泊まりって言っていたくらいだよ。
「そんなに驚くことかな?」
そんなに驚いた表情を私は作ってたのか?
ブルブルと首を横に振る私に公平はククッと笑い声を漏らす。
それもすごく楽しそうに。
「俺がつくしに会いに来ると迷惑?」
一瞬天井に視線を向けて悪戯な瞳で私を見おろした。
公平と会ってると道明寺がの機嫌が悪くなるのを見透かして私をからかってるのが分る。
「落ち込んでるとき、悩んでるとき、なぜかつくしに会いたくなるんだ」
冗談・・・っ。
そう言いきることのできない寂しさをにじませてわたしをみつめる瞳。
それは一瞬で「冗談」と公平は直ぐに言葉をつなげた。
「何かあった?」
「ん?守秘義務あるでしょ」
それはそうだけど気になる。
「まあ、元気をもらいに来ただけだから」
ポンと私の肩を叩く公平は何時もの公平に戻ってる。
ソファーに向かい合って座ってからの私達は私たちはとりとめのない話をして時間が過ぎた。
公平・・・
何か隠してない?
悩んでない?
いつも助けられてるのは私だから・・・
頼ってくれるのは嬉しんだよ。
甲斐さんと玲子さんが事務所に帰ってきて一気に事務所は賑やかになった。
先輩お二方も公平のことは気に入ってるもの。
実習もたのしかったよね。
最上階から飛び降りる勢いで事務所に顔を出す公平に嫉妬する道明寺。
俺への威圧が分散されたと喜んでいたのは甲斐さん。
道明寺のイメージが変わったって楽しそうに笑っていた玲子さん。
あの頃の悩みって、道明寺がこの事務所に顔を出し過ぎて仕事にならないって事だった気がする。
社内をウロウロされると社員が落ちつきませんと西田さんに付けられてクレーム。
平和だよね。
あの時の道明寺の話題に戻って盛り上がってきた。
今頃道明寺はくしゃみしてたりして・・・
「ハクシュン」
デスクの前で鼻をすする道明寺が見えた気がしてきた。
拍手コメント返礼
メガネちゃん様
楽しんでると言われちゃった~。
わかります?
とても1秒ごとにLove for You を言える状況じゃないですけどね。
しばらくは司君のジレンマで楽しんじゃいましょう♪